day9.ぷかぷか
花音ちゃんと初デートの前日。俺は俺は浮かれて服を選んでいた。
でも、デートに着ていける服なんて全然ない。そもそもセンスがないし、大学でも地味だってよく言われてた。たまに瑞希に選んでもらった服だけ評判がよかった。
「いっそ瑞希に選んでもらおうかな……」
明日は車で由紀家まで花音ちゃんを迎えに行く。少し早めに行って、瑞希に選んでもらうか、借りるかして……。
いや、デート相手が兄の服を着てるのって、微妙じゃないかな。
「困った……」
でも、楽しい。
花音ちゃんのことを思い浮かべながら明日の準備をするのは、本当に楽しい。
なにしろ初デートだ。
……行き先が鈴美の個展っていうのは、イマイチだけど。鈴美、いるんだろうな。嫌だなあ……。
せっかくだし、そのあと何か食べに行こうかな。花音ちゃんは何が好きだろう。どんなことで喜ぶだろう。
花音ちゃんのことを考えると、一瞬で気分が浮き上がる。ただもう、ぷかぷか浮かび上がってしまう。
個展の会場近くでカフェを探していたら、理人から電話がかかってきた。
「はいはい、どした?」
『今度、祖父が所有しているビルにカレー屋さんが入るから、一緒に行きませんか?』
「行く行く。あ、ちょっと相談に乗ってよ」
事情を説明すると、スマホ越しに楽しそうな声が返ってきた。
『“デート 服装 二十代後半”で検索すれば、画像がいろいろ出てきますよ』
「なるほど?」
『……藤乃さんが楽しそうだと、僕も嬉しいです。僕も明日、レイラさんとデートしてこようかな』
「服の参考にするから写真送ってよ」
『わかりました。じゃあ、レイラさん誘ってきます』
カレーを食べに行く日を決めて電話を切る。
理人に言われた通りに検索して、服を決めた。
……花音ちゃんは服にうるさくなさそうだけど、それでも、少しは格好つけていたかった。 六つも年下の大学生に頼ってるのはちょっと情けないけど。
そんなことも気にならないくらい、俺は浮かれ切っている。
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