第10話 嘘の微笑み、真実の死
時が流れ、マティアスとライゼルは青年へと成長していた。
二人は魔術学校を卒業し、それぞれの道を歩み始めていた。マティアスは魔術研究の職につき、ライゼルは魔術治安局に就職していた。
ライゼルの彼女は美しい顔立ちで、明るく優しい性格の女性だった。マティアスの心の中は少し痛んだが、この女性なら彼を幸せにしてくれると思った。
二人は2年の交際期間を経て結婚した。
結婚式は花嫁の笑顔、ライゼルの涙、親族やライゼルと花嫁の学生時代の友人たちが集まった。二人は学校の人気者であったため、大勢の人が祝福に来ていた。
会場に響く拍手と祝福の声、甘い花の香りがマティアスを包んだ。
結婚式に出席したマティアス、心の中では色々な感情が、あったがこの時は素直に祝福できた。
(きっと、君の隣に立つのは、この女性でよかったんだ。もしも俺だったら……その笑顔を曇らせるだけだろうから。)
マティアスにとってライゼルは恋愛感情以上のものをくれた、親友でもあり、想い人だったからだ。
ライゼル「マティアス、結婚式に来てくれてありがとう!! お前が結婚する時読んでくれ、俺がスピーチするからさ!!」
いつもの無邪気な笑顔でそう言った。
マティアス「あ〜機会があればな。」
マティアスは苦笑いしながら答える。
マティアス(このまま、彼が普通に幸せに暮らしていくことこそが、俺にとっての幸せだ)
マティアスは結婚式が終わり、夜風に吹かれながら帰路につく。
ふとポケットから、学生時代のマティアスとライゼルの写真を取り出す。
その写真を見て、少し心が痛んだが、同時に誇らしくもあった。
マティアス(幸せにな……)
この時から3年が経ち、マティアスは国でも有名な魔術研究者として名を馳せており、ライゼルは、持ち前の明るさと仕事熱心な姿勢から巡査長にまで出世していた。
二人は久々に会い飲食店で食事をしていた。
ライゼル「久しぶり!! マティアス!!
元気か?」
ライゼルは無邪気な笑顔を自分に向けた。
マティアス「あー。元気だよ。お前の方こそ巡査長にまで出世したんだろ、凄いじゃないか。」
マティアスは笑いながらライゼルを褒める。
ライゼル「ま〜な〜、お前ほどじゃないけどな、忙しいけど、市民から感謝される仕事は、悪くないよ。」
ライゼルは楽しそうに話す。
ライゼル「お前の方こそ、生活を豊かにするような魔術開発をしていて、名誉勲章もらってたじゃん、そっちのほうが余っ程すげーよ。」
ライゼルが笑いながら褒める
マティアス「ま〜な。そういえば最近家庭の方はどうなんだ?順調に行ってるのか?」
マティアスはライゼルが幸せかどうか確認した。
ライゼル「あっ…… あ〜幸せだよ。全然」
ライゼルは作り笑顔を作っているのが分かったが、その日はそのまま、談笑しながらお互い帰路につき終わった。
その数日後に、ライゼルは死んだ。
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