第二十三話『薬は止まらず、ギルドの影はさらに深く──マルゼイユ一家、オイゼルドと貴族の社交場』
ルビアンを捕らえると、他の兵士たちは抵抗もせずあっさりと降伏した。 人望はなかったようだ。
「なんとかなりましたね」
「それでトール、何かしたか?」
「ええ、
「それで、奴ら地面に...... そんなこともできたのね」
「でも、かなりの負担です。 ある範囲内しかできませんし...... ね......」
「どうしたのですの、トール!」
ぼくは意識が遠のいていった。
目が覚めると城にいた。 どうやら城のベッドに寝ていたようだ。 そばに顔ぐらいあるパンをほおばるディルさまがいた。
「ふむ、やっと目覚めたな。 その力、かなり負荷がかかっておるな。 あまり使うな......」
「まあ、空間に干渉してますからね。 それでどうなりました」
「メルディが連絡して王都の騎士たちがこの城のものたちを捕縛した」
「サグの両親は」
「かなり衰弱しておったが、なんとか命は取り留めた。 魔力不足をわらわが回復させたからの」
そういえば心なしか小さくなっているような気がする。
「すみません...... そんなに時間がたってたんですね」
「かまわぬ。 そなたが力を使わねばわらわたちもあの【農場】《ファーム》に繋がれていたであろう」
「
「奴らがよんでおったあの場所だ。 魔力を取り薬を作りだす異質な部屋だ」
(ファームか...... まさしく魔力の農場だな)
「装置などは回収しておるが、商人ギルドとのかかわりがわからぬ。 それにレセーラがいなくなっておるな」
「レセーラ、あのルビアンの側近」
「うむ、城のものにきくと、あのものは近年にこの城にきたものらしい」
「商人ギルドの手の者ですかね」
「......かもしれぬな。 ただそなたはもう休め、あとはわらわたちでやる」
「......ええ、お願いします」
ぼくはそういって眠りにおちた。
「やはり、繋がりは見つからなかったか......」
そうカイルはつぶやく。 ぼくたちはルビアン領からかえるとカイルに話を伝えにきていた。
「ただ薬の製造は止めたぞ」
「そうだな...... ひとつはな」
「ひとつ!? まだあるの!」
カレンが声をあげる。
「ああ、市中の薬はまだ流れている。 国で禁令はだされたが、まだ流通しているな」
「それはあんたたちのほうが詳しいんじゃないの?」
カレンがいうと、カイルはうなづく。
「ああ、マルゼイユ一家という各地のスラムを根城にするマフィアだ。 粗悪な薬をばらまいている」
「ならさっさと潰してきなさいよ」
「無茶いうな。 俺たちはお前たちのような化け物じゃない普通の人間だぞ」
「失礼なことをいうな!」
「そうよ! こんな可憐でか弱い女子にたいして!」
(か、か弱い...... いうにことかいて)
「そんなことより、そのマルゼイユ一家とやらを叩けば止まるの?」
「そんなことよりってなんだトール!!」
「そうよ! トールも反論しなさいよ! 一番わかってるでしょ!」
「まあ、まあ、二人とも話を進めよう」
(一番わかってるから反論できないんだけど......)
「そうだな。 他にもルートがあるかもしれないが、この国へ蔓延は防げるだろうな」
「そいつはどこにいるのだ!」
「さっさと教えなさい!」
「おいおい、そのまま突っ込むつもりかよ」
(どこが、か弱いんだ?)
「さすがにそれはやめとけ。 もし、やつらが薬を使ってきたらどうする? 化け物になるんだろ」
「まあ確かにな......」
「でも他に方法があるの?」
「マルゼイユ捕らえるのが一番だろう。 やつ自身はただの小男だ。 ただ護衛を常につれてるやつが隙を見せるのは商人との会談のときだろうな」
「貴族とつながってるの?」
「ああ、オイゼルドという商人だ」
「それって、商人ギルドの?」
「ああ、幹部の一人でオイゼルド商会の会長だ」
「商人ギルドにつながったのう」
「でも、ただ会ってるだけで罪には問えないわ」
「ああ、ただマルゼイユを捕らえるのが優先だ。 だが奴らの会談場所は貴族たちの社交場だ。 そこに紛れこまないといけない」
「それなら、メルディ姫だ」
ぼくたちはメルディ姫にあい、オイゼルド主催の社交場にむかう。
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