第二十二話『魔力を吸う洞窟、偽りの歓迎と修正者〈コレクター〉の進化』

「なるほど、それは妙な話だな......」 


 ディルさまはうなづく。 ぼくは城に今日戻りあったことを三人にはなした。


「突然のモンスター襲来と仕事の募集、どうも怪しいですの」


「そうね。 エゴイズムの製造の可能性は高いわね」


「そうなんだけど、その製造している場所が見つからないと......」


「そうだな。 しかしメルディよ。 遠出することは禁じられてるのであろう?」


「どうにもいやがってるですの。 モンスターがでるからとかなんとかと話をはぐらかしているですの」


「サグの両親のこともあるわ。 もう無理矢理にでも探しにいきましょう」


(やはりこうなるか...... そううまく行くかな) 


「それはできかねます! モンスターが現れて危険なのです!」


 そうルビアン卿が強弁にはなした。


「ですが、外遊といっても視察もかねておりますですの」


「モンスターならば我々なら容易く倒せますよ」


「それともなにか外に行けない理由でもあるのか?」


(グイグイ行くな。 大丈夫か。 ノーキン三姉妹)


「ルビアン卿、そういうことなら条件付きで許可をだしてもよろしいのでは」


 そうレセーラがいう。


「むう...... わかった」


「メルディ姫、こちらは責任を取りきれませぬ。 ゆえに一筆お願い致したい」


 そうレセーラは紙をもってきた。


「一筆?」


「ええ、渡しがお止めしたむねと、ご自分たちが責任を取られるとのこと。 それを頂戴したい」


(意外にあっさり引き下がったな) 


「わかりましですの」


 メルディ姫が紙にそうしたためた。



「結構あっさり許可しましたね。 しかも監視なしとは......」


「うむ、隠せば余計に怪しまれるからかもしれないですの」


「もしくはもう隠して見つからないとたかをくくっているかも?」


「ふふっ、やつはぬかったわ。 わらわは魔力を感じられる。 近づけばわかるはずだ」


 自信満面でディルさまが鼻を広げている。


「ただ領地といってもかなりの広さ。 山や森もある。 かなり近づかないとわからないかも......」


「ディルさまの魔力をあげれば、かなり広範囲を調べられるはず......」


 ぼくはステータスを修正、ディルさまの魔力を最大値にかえた。


「ふむ、かなり感じるな。 あっちのほうに強い魔力を感じる」


 ディルさまが森のほうを指差した。


 

 ぼくたちは森のほうにむかった。


 深い森に近づく。


「うむ、ここから強い魔力を感じる。 奥だ」


 そこには洞窟があった。 人の手が入ってるようで燭台が明かりをともしている。


「行きましょう......」


 ゆっくり中へとはいる。 しばらく歩くと、人のうめき声がしていた。


「これは......」


 そこには大勢の人たちがチューブのようなものをつけられベッドに寝かされていた。 そしてチューブは中央奥にあるカプセルのような容器に繋がっている。


「この赤いの血液......」


「いやちがう。 これは魔力だ」


 ディルさまが眉をひそめた。


「この人たちから魔力を吸収しているってこと?」


「人の魔力がエゴイズムの原料...... ですの」


「そうですよ」


 後ろから声がする。


 そこには大勢の兵士たちとルビアン卿がいた。


「ルビアン卿! これはどういうことなのですの!」


「これはメルディ姫、それをお調べにこられたのではないのですか?」


「最初からわかっていたということですね」


「ふふっ、当然のこと、いずればれることは想定の範囲内」


「ずいぶん余裕だな」


「ええ、あなたたちを押さえればそれですむ話...... そのために証文を書かせたのですから」


「その紙、そうかそれでメルディに」


「これでモンスターに殺されたことにすればかまわない」


「そんなことをしても、いずれここを調べられますよ」


「でしょうね。 でもその前にこの国は滅びますがね」


 そうルビアン卿は薄く笑った。


(国が滅びる......)


「ふふっ、まさか聖女に姫、こんな低魔力のものたちなどより、上質な薬がつくれる」


「やはり薬の原料ですか」


「ええ、魔力の高いものほど純度が良いのです。 わざわざきていただけるなんて」


(それで喜んでいたのか)


「そう簡単に私たちを捕らえられると?」


 そうカレンがまえにでた。


「そうですね。 あなたのお噂はかねがねよりきいておりますよ。 アマゾネスエンプレス、ですが薬はただ夢を与えるだけじゃないんです。 さあ力を解放しなさい!」


 そういうと兵士たちの体が肥大化していく。


「これは!? ベルストンとおなじ! やはり薬をのんでいたのか!」


 兵士たちは人間とも思えない動きでこちらに跳ぶようにちかづく。


修正者コレクター!!」


 兵士たちを弱体化させ、周囲の空気を重くして、地面を柔らかくしたが、それをものともせず壁を蹴り兵士たちがせまる。


「くそっ!」


 ディルさまとカレンを強化するが、それでも押されている。


(これだけ弱らせてもこの強さ! ステータスの最低値が上がりすぎて移動させても効果が薄い!)


「メルディ姫、魔法を!」


「でも、この距離ではカレンたちに当たるのですの!」


「くっ!」


(このままだと本当に捕らえられる! 修正者コレクターを試すしかない!)


修正者コレクター!!」


(使っているうちに更に変えられるようになったものがある...... ただ痛みと効果時間が短い!)


空間ホーロス!!」


「なんだ...... 体が重い!」


「くそっ...... 動きが!」 


 兵士たちが地面に這いつくばる。


「い、いまです! ディルさま! カレン!」


「よかろう!」

 

「わかったわ!」


 二人は兵士たちをつぎつぎと倒していく。


「なんだ!? 何が起こっている! こうなったら私も! ぐはっ!」


 ルビアン卿は地面に吸い付くように倒れた。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る