三題 鏡

 家には大きな姿見がある。

 母がいつも姿を映していた。

 今は鏡映しの自分がいて、昔の母によく似ていると言われる。

 まるで自分の人生は鏡の中に吸い込まれていってしまったようだ。

 鏡に触れる。

 爪を立てる。

 それくらいでは表面でさえ傷つけることはできないと分かっていても。

 名前を呼ぶ声が聞こえる。

 この家の王が自分の名前を呼んでいる。

 せいぜい抗ってみせよう。

 美しく着飾って武装する。

 鏡の中の顔は動かなくても。

 自分自身を殺さないために。


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