第30話 七日目② 訓練

 ルカから連絡が来るまで何もすることがないので、各々好きなことをしつつ過ごそうという話になった。俺はコタローと街ブラしつつ、鎧を着ての鍛錬。普段からあの兜を被るのはハードルが高いので、ザ・戦い、という場面以外では着ていなかった。だが、あの鎧を着て戦うことが出来るようになれば、戦力向上が見込めるのは間違いない。

 それに俺の戦い方は……自分の意思というより、勝手にダウンロードされた知識に動かされている部分が大きいので、いざという時に自分で動く判断が出来るように戦い方の精度を高めたいというのもある。オート戦闘から自分でコマンドを選んで戦闘出来るくらいにはなりたい。可能性の大きいコタローの戦い方を増やせたらとも思うので、今回は二人で訓練だ。

 アルとイグは街中で魔王国内部の状況を探れないか試してみる予定らしい。そういう腹の探り合いのような会話は俺には出来ないから、二人に任せることにする。


「じゃあコタロー、行こっか」

「がう!」


 コタローに乗って街の中を一周する。昨日と違ったお店が出ていないかチェックしたが、特に変わりはなかった。祭りというわけでもないし、彼らにとっては日常だからな。仕方ないかと宿の方に戻って、裏庭のスペースを使わせてもらう。

 鎧を取り出して身につけ、問題の兜を被る。見た目は難アリだが、やはり感覚が研ぎ澄まされるのはいい。やる気のみなぎっているコタローとそのまま模擬戦を始める。

 右、左、右にとステップを踏みながら飛びかかってくるコタローを避け、反撃をする。対人と違って武器に当てることが出来ないので、剣は使わない。素手でも十分に戦える自信はあったし問題ない。空手だとか少林寺拳法だとか、武道の心得は全く無いけど、似たような動きで倒せと知識が言っている。コタローは倒さないけど。


「っ!」

「がるるる……」


 闇雲に拳や足を出しても、動きが読まれて避けられてしまう。ならばどうするか。まずは……。


「スピードを上げることだよなぁ!」

「がう!」


 出した拳にコタローの蹄が当たる。この速度にも追いつけるか。なら次は?


「これはどうかな?」

「がう!?」


 フェイントを出せば簡単に引っかかった。軽く拳を入れれば、コタローは悔しそうに唸った。


「がうう……」

「よしよし。じゃあ、引っかからないように訓練しようか」

「がう!」


 コタローには瞬発力がある。フェイントには弱いが、弱点を克服すればそれは武器になる。


「よし、行くぞ!」

「がう!」


 コタローと訓練を繰り返し、並大抵のフェイントに引っかからなくなった頃には、さっき登ったと思っていた日が落ちていた。驚いて宿の部屋に戻ると、とっくに帰ってきていたアルとイグに呆れた顔をされた。


「俺達も混ざろうかとは思ったんだけど、集中してそうだから声かけるのやめたんだ」

「え、かけてくれればよかったのに」

「ほら、トーマはこういうやつだろ?」

「そうだったな。それにしても、また戦うのが上手くなったか?殺気立ってたのに楽しそうに笑えていたし、それでいて二人とも目立った怪我がない。加減はしていないが相手に直接当たらないようにした、という感じか?」

「うん。アルとかイグ相手なら武器で済むかなって思うんだけど、コタローにはそういうのないし、爪折れちゃ戦えなくなっちゃうから。でも加減してたら意味ないのは分かってるから当てるときにだけ力抜けばいいかって」

「がう~~!」


 コタローに押し倒され、顔をベチャベチャにされる。それを笑ったイグも同じようにベチャベチャにされて、二人で仲良く顔を洗いに行く羽目になったのだった。

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