第18話 四日目① 朝

 寝覚めは快調だった。寝起きの悪いイグを置いてベッドから抜け出し、一足先に朝食を食べて外に出た。勿論書き置きは残してある。せっかく来たのに全く観光せず別の場所に行くのも違うような気がしたのだ。


 なんだか、日本とは違って全く見慣れない街並みのはずなのにずっと懐かしい感じがしている。転生前のこの体の記憶というやつか。設定なのか、本当にそのように生きていたのかはイマイチ分からないところだが、本当にあったのであればもっとちゃんと記憶が戻ってほしいと思う。


 エルフの市場は賑わっていて、採れたての野菜や果物、キノコや木の実を皆物々交換している。そこに男たちが帰ってきて、肉が並び始めると女達が一斉に群がっていく。どこの世界でもここは女達の戦場らしい。


 交換できるようなものを持っていなかったから、ただ見るだけになってしまったが、いい気分転換になった。活気のある場所はいい。だからこそ、この場所を守らなければ。思わず手に力が入ったのを緩めて、宿の方へ戻っていく。この時間に朝食を食べる人が多いのか一階のレストランスペースは賑やかしい。その中に二人の姿を見つけて、手を振りながら駆け寄った。


「お前、朝強いよなあ……俺まだ眠れる」

「……よく騎士やれたよな、お前…………」

「アルも強い方だよね。今日は俺が一番だったけど」

「まあ、騎士は朝が早いからな。イグは特殊な例だ」

「特殊とか言うなって……寂しいじゃん」

「…………」


 イグは完全に寝ぼけている。食べながら寝ている人は初めて見た。アルに聞けば、朝はいつもこんな感じらしい。


「まあ大丈夫だ。イグはやる時はやる男だからな。」

「そうだぞ〜、トーマも森の戦いに参加してりゃあなあ、俺のかっこいいところ沢山見せられたんだけどな」

「え、その話聞きたい!」

「分かった、俺が脚色に脚色をして語ってやろう」

「は!?脚色しなくても俺はかっこよかっただろ?……かっこよかったよな?」


 互いにどつき合いながら朝食を取る二人は微笑ましい。結局、アルに語らせると脚色されるからと言ってイグが森でのことを語ってくれた。


 森に入って、エルフたちが木を傷つける度に魔物が現れる。それをひたすら倒しながら、木に溜まった瘴気を解消する。どの木に傷を付けたか分からなくならないように、レズィアスと同じ斥候役の身軽なエルフが木の上に登ってさっとリボンを巻いていく。その繰り返しだ。木がトレント化することもあると言われたが、本当にトレントになるところをみたのは初めてだったらしい。


 そうしているうちに魔物の数が増えていく。群れで襲ってくる魔物は厄介で、仲間がやられたと分かると凶暴になって倒しにくくなるらしい。


 ついに魔物の数がエルフの数を超え始めたあたりで、撤退することも考えたらしい。そのタイミングで木の元気が良くなり、急成長を遂げたことで魔物の攻撃の妨害に成功し、見事倒し切ることが出来たみたいだ。ちなみに、その最後の一太刀を担当したのがイグだったみたいだ。


 そんな話をしながら朝食を終え、イグはどうにか動けるくらいにはなっていた。長の家に挨拶に行くと、長は家の前で立って待ち構えていた。

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