第17話 三日目⑥ 宿での報告会
「トーマ、無事だったか」
「アル、イグ!俺は大丈夫だけど、二人も無事だった?」
こちらに駆け寄ってくる二人の姿に、レズィアスと長をコタローに任せてこちらからも近付く。目立つ怪我も無くピンピンしているようで安心した。
「勿論、腕には自信があるからな!トーマが帰って来てすぐに召集が掛かったのには驚いたが、行ってみればエルフの独壇場だ。あいつら、こういう戦いに慣れてやがる。」
「それに何と言っても、長い年月で培われたエルフたちの連携術には敵わない。俺達も見習わないとならない部分が多いと感じた。時間はあまりないが、今回のようにトーマだけで動くべき部分があるなら俺達は鍛錬でもしているつもりだ」
「おう!で、そっちの収穫は」
「うーん……結構驚くことはあったけど、勝手に話していいことか判断がつかないから、話せる部分だけ宿で話してもいい?」
「! 分かった、もう部屋は用意されてるみたいだから、すぐに案内しよう。それとも、やり残したことがあるか?」
「ううん、特には。ああでも、コタローだけ回収してくるから長の家前で待ってて!」
「了解」
長の家の前に向かうと、困った顔をした長とコタローが俺を待っていた。レズィアスは先に帰ってしまったようだった。それもあの様子では仕方のないことかと思う。
でも、俺には彼の考えが全て間違っているとも思えない。未来とか、運命とか、称号とかスキルとか魔法とか、勇者とか魔王とか、そういうの全部俺の元々の人生にはなかったもので、そういうものだと受け入れるしかこの世界の人間として「正しく」生きていく方法がないから受け入れているだけで、心の奥底から信じられてるわけじゃない。この世界が現実なのかも分からない。けれど、そういう疑問をそれが正しいと信じて疑うこともなく生きてきたこの世界の人たちにぶつけるのは酷なことだと思う。
とても複雑だが、俺はレズィアスに共感しながらも長のことも心配している。コタローが高い声で細く鳴いていて、きっと俺と同じ気持ちで長に寄り添っているのだと思う。
「コタローをありがとう」
「いいや……こちらこそありがとうね。見苦しいところを見せたけれど、これが私にとっての真実さ。お前は……いや。私の口から言うのはよそう。今日あったことを仲間さんにも話したいだろう?あまり言いふらすのはよくないけれど、あの二人のような仲間やジズに話すのは問題ないよ。信頼しているからねえ。」
「ああ、勿論だ。俺もおばあさんのことは信頼している。連れて行ってくれてありがとう、おかげでいい情報が入った」
「いいんだよ、それが役目だからねえ。今日はもう遅いから早く宿で休みなさいね。」
「ありがとう」
長の家を後にすると少し離れたところで二人とジズが待っていた。ジズも俺のことを心配して駆けつけてくれたらしい。
「仲間を分断してしまったのは俺のせいだからな。長も強い方だ、そこにレズィアスもいるならば問題はないと思ったんだが……どうやら失策だったみたいだな」
「いや、そんなことは……」
「謙遜しなくていい。レズィアスはああ見えてエルフの中ではまだ若い方で、子供が抜けきれてないんだ。長と折り合いが悪いにしても、短い時間なら上手くやってくれると期待していたんだが、あの様子じゃ上手く行かなかったんだろう?」
「うーん……説明が難しいんだけどお互いの問題だからなあ。それも含めて今日のこと、ここの三人には話していいって言われたけど聞いてく?」
「え?いや、アルやイグがそれでいいならいいが……」
「ああ」
「俺達は気にしなくてもいい。宿で話そう」
宿はお屋敷のような外観だが、中は暖かい雰囲気に包まれていて、明るいエルフの女将さんが部屋に案内してくれた。朝食はついてくるらしい。
部屋の鍵を閉め、見様見真似で【防音】を使ってみた。頭の中で【防音】が【遮音】にスキルアップしました。という声が流れたから、多分使えているんだと思う。
これで安心だ。言いふらさないようにだけ約束をして本題に入っていく。隠された神殿、ドライアドの話と長の役割とレズィアスの話……長い話になったが、三人は真剣に聞いてくれた。
「それでまあ最後にちょっとギスギスしちゃって……でも俺、レズィアスが完全に悪いとは思えないんだよね、確かに考えてみればそうかもって納得しちゃって。あれはあれで、長のことを心配してるんじゃないかなって」
「そう……か?そうだな……昔からアイツは皆が気にしないような部分を気にする質だから、長は敬うべきとか長は絶対とかそういうのが気に食わなかったんだろうとは思っていたが、俺も気にかけてやったほうがいいかもしれないな。面倒な性格だとは思うが、だから斥候としては優秀なんだ。皆の気付けないところに気付ける。絶対目の前では褒めてやらないけどな」
「少しくらい褒めてやれって。まあ、レズィアスくんのことはジズに任せよう。俺等は魔王のことに集中だな。何をすればいいのかがはっきりしたんだ、早めに動くべきだろ」
「そうだな。俺もそう思う」
「了解。明日の朝、出発しようか。ジズ、森の案内を頼めるか?」
「ああ。そのつもりでいた。悪いが、長に挨拶だけしてやってくれ。寂しがるだろうから」
「分かった。」
あくびを噛み殺しながら、宿を出るジズを見送り、部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。何故か今日もイグと同じベッドで、筋肉の圧を感じながら眠った。おかげでベッドから転がり落ちることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます