第4話 もうちょっとだけ

(スーパー帰り)

//SE 足音

(楽しそうに)

「お家に帰ったら、最高に美味しい生チョコ作ってあげる!」


「売り物より美味しくてびっくりしちゃうかもね?」


(からかうように)

「これからどんな女の子にチョコをもらったとしても、一生、私のチョコを忘れられなかったりして」


//SE 立ち止まり、足音がとまる


(拗ねた声で)

「……ちょっと、なにか言ってよ」


(驚いた声で)

「大丈夫!? また顔色悪くなってる。汗もすごくかいてるし、息も荒いし……」


「……もしかして、私のせい?」


「……前に一人で外へ出た時より、私、動きまわれてる気がするの」


(泣きそうな声で)

「私が、君のエネルギーを奪っちゃってるのかな……」


「え?」


「めろんちゃんのエネルギーになれるなら幸せすぎるから問題ない?」


(笑って)

「君ってもう……本当に、私のこと好きすぎ!」


//SE 手を繋ぐ音


「そんな君に、めろんちゃんからご褒美! 倒れちゃわないように、私が家まで手を繋いでてあげる」





(家に到着)

//SE 玄関のドアを開ける音


「ほら、君はベッドで寝てて」


//SE ベッドに横たわる音


「その間に、私はチョコ作っておくから」


「だーめ。無理は禁物だよ?」


「言うこと聞いてくれないと、めろんちゃん怒っちゃうからね?」


「うん。いいこいいこ」


(耳元で)

「おやすみなさい」


//SE 台所から、がさごそと荷物を漁る音

//SE チョコレートを刻む音

(チョコレートを刻む音が、だんだん遠くなっていく)





//SE 水で濡れたタオルを絞る音

//SE 濡れタオルを額に置かれる音


(眠っていると思っている主人公に配慮し、小声で)

「家に帰ってから、ちょっとずつ顔色はよくなってる気がするけど……」


「やっぱり私が、エネルギーを奪っちゃってるのかな」


(辛そうな声で)

「……ごめんね」


「でも私、君に出会えてよかった」


「私が見える人にやっと会えて、しかもそれが私を推してくれてる人だなんて……こういうのを、奇跡っていうのかな」


「今日一日ね、本当に楽しかったの」


「変装もしないで、普通の女の子みたいに君とデートができて……」


「……きっとアイドルをやめて、普通に生きる選択肢もあったんだろうね」


「でも、あの時は選べなかった。辛くて逃げ出したかったのに、アイドル以外の道を選ぶ自分が許せなかった」


(溜息を吐いて)

「……『めろんちゃん』じゃない私は、弱虫で面倒くさい女の子だったの」


「だけど私、アイドルが本当に好きだった。それは嘘じゃないよ」


(泣きそうな声で)

「君が緑色のペンライトを振ってくれるところ、ステージの上から見たかったな」


「君とチェキを撮って、いつもありがとうって書きたかったな」


(泣きながら)

「君が好きになってくれた『めろんちゃん』で、君に、好きだって言いたかったなあ……」


(泣き止んで)

「……ごめんね」


「私、自分のことだから分かるの。きっと、ずっとこのままじゃいられない」


「だから……」


(耳元で)

「……いなくなるまで、もうちょっとだけ、私のこと、大好きでいて」

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