第2話 こおろぎ
どこから入ったのか、我が社にコオロギが迷い込んで来ましてね。根性のあるやつ、おれごんのデスクは電子セキュリティを4つほど突破せねばならぬのに。
なんだか小さな個体、おいおいこんなところにエサなんてあるのかと。
まあでもよろしくやってくれぃ。踏み潰されんなよ。
その後も何度か見かけて。あれだけ昼間は社員がドタバタするのにどっこい生きている。音色なんか響かせないで。でもなんだか元気そうと思っていたら。
死んじゃいましたよ。寿命なんですかね。それともやっぱりエサがなかったか。こんなところに異性なんていないでしょうに。
おれごんの机のすぐ近くで、立ったまま絶命。今日はなんだかじっとしているなと、ツンツンしてみたらその姿勢のままひっくり返っちゃって。
こうなる前に捕まえて逃してやればよかったか。でもそうしようとしたならあなた、全力で逃げ回ったでしょう?
今だからほら、こうして触れることもできる。
社内の一角、芝のあるところに。お仲間の音色ひびくところに帰してきました。そこでなら土になれると思って。
なんだかしんみりしちゃいましたが、毎日バクバクバクバク牛やら豚やら食べていて滑稽ですよ、おれごん滑稽。
あのコオロギにおれごんがどう映っていたのかは、聞いてみたかったですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます