第49話 思いがけない

 サイちゃんとミシェリーはやっほいとばかり採取に出発していったので、私は「追跡する」から開いた画面をそのままに「買取所」の小部屋に引っ込んだ。MPを回復させてガチャを回すのが私の一番の仕事だからね。……全く胸は張れないけど。

 なお画面では怒鳴り声の陰でキャンプに来ていた人達が相談し、反省の色が無い人達に本気の反省文を書かせる事になったようだ。なおその会話を聞く限り、反省の色が無い人達はダンジョン内キャンプに申し込んだ訳でもなんでもなく、入り口前にキャンプの人達が乗って来た大型の車が停めてあるのを見て、勝手に入って来たらしい。

 もちろん入口で止める人もいたんだが、封鎖する訳にもいかないし誰かの私有地って訳でもない。だから強く止めきれず、どうやらそこそこ「レベルを上げた」強い人間が混ざっていたから、強引に押し通られたんだそうだ。


「……入口に居た人、大丈夫かな?」


 そして「レベルを上げた」っていうのは、ダンジョンでモンスターを倒して経験値を稼ぎ、ステータスをアップさせる事らしい。だから見た目より力が強いとか、人間の枠を超えて素早いとか、そういう不思議な事が起こるそうだ。

 かつ、そういう人がそれなりに出ている以上、取り締まる側も大急ぎでレベルを上げる必要がある。その為には「安全地帯」に野宿してみっちり戦闘経験を積むというか、モンスターを倒しまくるのが一番早い。

 しかし「安全地帯」で野宿するには慣れが必要だ。なおかつ「観察」と「探知」は戦闘を安全に進めるにはとても重要なスキルらしく、それらが限りなく安全に習得できるという事で、ここ『雑草平原』は国側の人間に秘匿されていたようだ。


「そうだったんだ……」


 まさか国の実質お抱えになっているとは思わなかった。ダンジョンマスターの生存戦略としては大勝利では? だってこれからも毎年新人は入る訳で、元々強い人じゃないならうちにキャンプに来るって事だよね?

 他のダンジョンがあったり「レベルを上げた」人達が悪さをする限り、うちのダンジョンは安泰なのでは……?


「わぁい?」


 疑問形になったのは、実感がない+滞在と撤退でDPが入らないからだ。ついでに今みたいなダメな人達が突入してくるからである。これで安全が保障されて毎日1万DPが入るのなら左手で団扇を仰いじゃうんだけどなぁ。

 思ってなかったところかつ思ってなかった形でうちのダンジョンである『雑草平原』の評価を知る事になった訳だが、まぁでも、それはそれとして自衛は必要だよな。ここを利用した人の中にだって、手段を択ばずに叶えたい願いが出来るかもしれないんだし。

 だから階層を増やすのと、出来ればもうちょっと積極的に守ってくれるように採取物を増やす事と、同じくうちの存続を望んでくれる人を増やす為に「買取所」の強化と商品の充実は必要だ。


「まぁその為にはガチャを回すしかないと」


 ガンガン動いてもMP消費が変わらないなら、私も頑張って蝶々を捕まえて標本を作るんだけどさ。動かない方がMP回復が早いのは仕様だからな。そしてMPを回復させた方が圧倒的にDPが稼げる。

 ガチャに頼らなくてもDPぐらいはいくらでも稼げるなら、「買取所」の商品充実の為に「虫取り網」を振り回すのもやぶさかではないんだけどな。……それこそなんかこう、蝶々が寄って来る罠的なものを作った方が早いか。それはそうだな。


「何か色々食べられそうな木の実が手に入るようになったんだし、ごみ扱いだったけど、「何らかの布の切れ端」を使って網みたいなものを作って……いや普通に「虫取り網」を材料にした方が早くて確実か」


 ……ダンジョンの罠って基本的にガチャで出すというか、ロックを外すものっぽいんだが、人相手ではないとはいえ、罠を自作した場合はどうなるんだ?

 この辺もちょっと色々試してみるか。「林」環境階層なら、枝が手に入るタイプの採取可能配置物の木があるかもしれないし。

 最悪「何らかの布の切れ端」を頑張って繋げば、ロープっぽいものにはなるだろう。そしてもし手作りの罠でもロックが外れるなら、多少はもうちょっとどうにかなるかもしれない。頑張ってみるか。

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