番外編『榊 翼:生き残るための嘘』
第1章「正しいことをするな、生き残れ」
「——どんな命令でも、実行できますか?」
かつて自衛官候補生だった俺は、面接官にそう問われた。
迷いなく頷いた。
正しいことより、“必要なこと”を選べる人間になりたかった。
家には戻る場所がなかった。
俺が14歳の時、父は戦場で死に、母は心を病んだ。
誰も俺を守らなかった。だから俺は、自分を守る術だけを磨いた。
あの日、突如として始まった“デスゲーム”。
オルタの放送とともに、俺の名前が空に浮かんだ瞬間、こう思った。
(やっと来たな、人生を決める“本番”が)
選ばれた5人チームの中で、迷っていた者はいなかった。
だが、“鍵”を持たない4人の命を賭けて、正しい判断を下す必要があった。
感情で誰かを救うことはできない。
だから俺は、光に「お前が鍵だ」と嘘の視線を送り、紬には「俺を信じろ」と偽った。
そして、鍵であることを黙っていた自分に、票が集まるように仕向けた。
3人の命と引き換えに、俺は生き残った。
そのとき、自分の心がわずかに震えたことを、俺は知られたくなかった。
「人を殺してでも、生き延びる」
そう教えてくれたのは、この国そのものだったからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます