第10章「偽りの正義」


投票の時が来た。

10人の参加者は、聖堂の奥にある個室へと順に誘導される。

目の前にあるのは、5人の名前が書かれた紙。

罪人を“選ぶ”ための儀式。だが、それはまるで“自分が神になった”かのような錯覚を与える。


——俺の手は震えていた。

(柚葉が言っていた“嘘を真実に変える能力者”が本当にいるなら——)


この投票は、まったく意味をなさない。

真実そのものが“塗り替えられている”かもしれないのだから。


だが俺は、自分の直感を信じていた。

俺の“感覚”が、ある人物にだけ、奇妙な“無音”を感じていた。


仁科レオ——

言葉に“熱”も“嘘”もなかった。あまりに“完璧すぎた”。


俺は彼の名前に丸をつけた。


投票が終わり、結果が表示される。


《最多票:仁科レオ。——処刑執行》


その瞬間、レオの表情が“消えた”。

まるで、最初から人間ではなかったかのように、微笑んでいた。


「——面白いな、悠人。やっとここまで来たか」


「……お前は、何者だ」


「お前に“力”を与えた側の人間だ。いや、正確には“君の原型”だ」


光が走る。レオの姿が崩れ、変わっていく。

あの、仮面の少年の姿——悠人の記憶に焼き付いた存在だった。


「俺は、お前の“失敗したクローン”さ。だがね、失敗作には失敗作の“役割”がある」


「なにを……」


「次の試練、“最終審判”が始まる。そのとき、君は選ばれる。“この国の運命を左右する者”として、ね」


仁科レオはそう言い残し、処刑装置の中へと沈んでいった。

そのとき、教会の鐘が鳴る。


——最終審判の開幕。

そして、天城悠人の過去と、出生にまつわる“全ての秘密”が暴かれる瞬間が、近づいていた。

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