No.2 『食べ物適正テスト』だって?

------終日のHRが終わった。足音が俺に近づいてくる。


「……ばあっ!

 (両目を手で覆われる)

 (右耳に囁くようにして)

 だぁれだ……

 (離れる)

 大正解!

 綾王子でしたー!

 さすがは王子の幼馴染、まあこれくらいはわかるよねー!」


「ん?

『取り巻きたちはどうした』って?

 なんか君と一緒に帰りたい気分って言ったらみんなどっか行っちゃった……」


------ニヤニヤしながらこちらをみている女子生徒達。俺は察する。


「え、なんか耳が赤いよ?

 どうしたの?

 うんうん、そっか。

 みんなに見られているからなのか!

 でも大丈夫。

 (誇らしげに髪をはらって)

 多分僕がイケメンだからさ。

 気にしないでご飯食べに行こう!」


------ご機嫌で俺の手を引く姫路。鼻歌を歌っている。


------生徒達がガヤガヤと喋っている音。2人の歩く音。


「ふんふん♪

 えー、何躊躇ためらっているんだい?

 いいじゃないかー!

 この間もケーキ一緒に食べた仲だからさ。

 遠慮せずに……いや違う。

 そう言うことか!

 まさかここでも『王子様テスト』を仕掛けようとしているのかい!?

 ……やっぱり」


------「チリンチリン」という入店時の音。


------食器の触れる音と客の会話の音。


「で、今回のテストはなに?

 ……なんか紙渡してきたし。

 えーとなになに…『食べ物適正テスト』?

 王子様が食べそうなものを食べてみろって書いてある……」


「ふっ……僕は王子様だから。

 こんなのよ・ゆ・う・さ。

 よーし、じゃあ早速……」


------紙にペンを走らせる音。


「この『チョコレートケーキ』と『ブラックのコーヒー』?

 を頼もうっと。君は?

 (俺は約3秒で注文を完了した)

 オッケー」


------ペンを置く音


「すみませーん!

 これお願いします」


「ふぅ……。

 結構いい線行ったんじゃないのかい?

 お、やった!

『合格』だ!

 やっぱり僕の見る目は間違い無かったね!

 ふっはっはっは!」


「今日は疲れたなあ…。

 子猫ちゃん達はずっと僕に

『王子様勉強を教えてください!』

 とか

『王子様はお好きな方はいませんか?』

 とか

『王子様なら一生添い遂げてあげてもいいのに』

 とか色々言われたよ!

 僕が本当に一緒にいたいのは君だけなのに。

 ……って別にそういう意味じゃないよ!

 まぁたニヤニヤしてさあ!むぅー……」


------食器を置く音。食器を置く音。


「あいあいきたぜよ!

 僕はもうケーキ食べるもんね!

 食べまーす、一口目。

 (もぐもぐ食ってます)

 ……んまい!

 ふふふふ、じゃあ二口目……ん?

 なんだか物欲しそうだね。

 食べたいのかい?

 しょうがないなあ、では愛しのダーリンのために、はい口開けて……あーん。

 どう?美味しい?うふふ、君の笑顔が見れて嬉しいなぁ……♡っていやいや違う違う!

『語尾にハート付いてた』?

 絶対ついてません!

『間接キスだった』?

 ちちち違うよぉぉ!

 勘違いしないでよね!」


------真っ赤になる姫路。


「もういいもん!

 ではここでクールダウン……(食器の音)コーヒーを一杯、癒しのひと時……ってにがいぃ!

 (食器の音)うぇぇぇん……。

 砂糖がないと飲めないこと忘れてた……。

『王子様の可愛い一面広めよっと』だって?

 可愛い言うな!

 あと広めようとすんなし!

 全く。ふん、拗ねたもんねーだ」


------食器の音


「……え?

 期間限定のパンケーキじゃん!

 なんで?君が頼んだの?

『食べたそうにしてたから』?

 ……君優しいね。

 え?

 あーんしてくれるの?

 やったあ!

 お言葉に甘えて……あーん♡

 ……いつものより美味しいかも。

 ……『またハートついてる』?

 そんな訳ないよぉ。

 んふふふ、じゃあ全部もーらい!

 (パンケーキを掻き込む音)

 ふぅ、じゃあお会計行こっか。

『食う速度尋常じゃなかった』?

 んなわけあるまい!」


「え、君の奢りでいいの?

 ……君もなかなか紳士的なんだね。

 ちょっと感動した」


------お店を出る音


「それじゃ帰りますかね!

 一緒に帰ろ♪」



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