第15話

昼下がりのグラウンド。

風は涼しく、空はどこまでも澄んでいた。


 


「よし、じゃあ今日は昨日の《バーストスライド》の応用からいってみようか」


 


結月が腕を組み、少しだけ“先生っぽい”口調で言う。


 


「昨日は“後ろに飛ぶ”だったけど、今日は“横移動”も入れてみて」


 


「了解」


 


カイは片足を半歩引き、地面に沿うように爆発の魔力を展開。

息を吸い──


 


「──っ!」


 


ドンッ!


 


風を切る音と共に、身体が横へ滑る。

爆風の向きを意識していたため、方向転換も最小限に抑えられていた。


 


「やるじゃん! もう感覚掴んでる!」


 


「まあ、昨日のうちにイメトレはしてたからな」


 


「イメトレ万能かよ……」


 


結月は呆れたように笑いながら、距離を測るように一歩下がる。


 


「じゃあ今度は、横移動からの《バーストブロー》。

ちゃんと連携させて動けるか試してみて。私が標的ね」


 


「了解。いくぞ、先生」


 


「こい、生徒」


 


カイは低く構え、右へと爆風で跳躍──


 


《バーストスライド》で急接近し、その勢いを保ったまま拳に爆発の魔力を集中。


 


「──はっ!」


 


ドンッ!


 


結月の前、ほんの数十センチ手前の地面に拳を叩きつけた瞬間、砂埃と衝撃波が広がった。


 


「っ……ちょ、近っ……! 危ないってば!!」


 


結月は慌てて飛び退きながら、顔をしかめる。


 


「今の、めっちゃ怖かったんだけど!?」


 


「寸止めだろ」


 


「こっちは“感覚”じゃ命預けられないの!!」


 


ぷいっと顔を背ける結月に、カイは苦笑を漏らした。

けれどその目は、少しだけ──嬉しそうだった。


 


「けど、ほんとにすごいよ。魔力制御も、打撃のバランスも。

……たった数日でここまで来られる人、普通いないよ」


 


「……」


 


「──カイ。もしかしたら、私……近いうちに、教える側じゃいられなくなるかも」


 


そう言った結月は、照れ隠しのように髪をかき上げながら言葉を継いだ。


 


「でも、それでもさ。隣で見てるだけなら──私にもできるでしょ?」


 


「……教えるの、飽きた?」


 


「違うし!」


 


軽く拳を飛ばしてきた結月に、カイは笑いながらその拳を受け止める。


 


「ありがとな、“先生”」


 


「……もう、そうやって茶化すから……」


 


どこか拗ねたように呟く彼女の横顔は、少し赤くなっていた。


 


そしてその日、ふたりの距離はまた少しだけ、近づいた。

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