第6話
「でもなぜ、若くもない俺なんかを?」
「それは、うちのブランドにぴったりだと思ったからです。ルックスやスタイルなど、文句がありませんから」
彼に目を留めた理由を述べても、なかなかルキは納得できないようだ。
「お願いします」
奏太が頭を下げて力強く言うと、ルキはこう答えた。
「オファーは有難いですけど……事務所が何と言うか……」
確かにその通りだ。
ルキは「スプレンドーレ」に所属している身だから、事務所におうかがいを立てねばならないだろう。
「そうですね。もし事務所側が良いと言っていただけたなら、お受けしてくださると?」
奏太の問いに、ルキは言いにくそうにしながらも口を開いた。
「実は俺、KANATA SINDOの服が好きで、着てるんです。だから、まさか俺なんかがモデルになっていいのか……」
まさか、彼が自身のブランドの服を着てくれているとは想いもしなかった。
とは言え、KANATA SINDOの服は決してリーズナブルというわけでもなく、ルキも余裕のある時に買ったものが数着あるだけだと言う。
それでもKANATA SINDOの服は好きなので、良く着ているのだそうだ。
「そうだったんですか。ありがとうございます。それならぜひお願いします!」
意気込んで奏太が再度要請すると、ルキは「俺で良ければ」と言ってくれた。
しかしルキは思い出したように言った。
「そうだ。この店は続けてもいいんですか?」
「うちの仕事に支障がない程度であれば、続けていただいて結構ですよ」
奏太の返答に、ルキはホッとしたような表情をする。
きっと、ここでのバイトが好きなのであろう。
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