4. 恩返し
「失礼ですけど、
「目的――、ですか?」
「あ、ごめんなさい。初対面の方に、不躾ですよね。でもちょっと、気になったものですから……」
「……やっぱり、調査目的ですか?」
「は?……」
すぐには、話が飲み込めなかった。
「まさかこの島に、新たなリゾート施設か何かの、開発計画があるのでは――」
その発言を聞いて、ようやく彼女の言いたいことに気付く。
――なるほど。そういうことか。
失礼がないよう、身なりをしっかり整えたつもりだったが、どうやらこの島でビジネススーツは、逆効果だったみたいである。
警戒させてしまったのなら、申し訳ない。
「いえ、違いますよ。それは、まったくの誤解です」
「誤解……。本当ですか?」
なぜか3猫たちまでもが彼女に同調し、ギロッと睨むような鋭い眼差しを、こちらへ向ける。
軽く敵意をまとった8つの瞳に、じーーーーっと見つめられる。
まるで、4匹の猫に睨まれる、ネズミになった気分である。
やれやれ。
「もちろん、誤解ですよ。このような
「まあ……」
それを聞くと、
「僕がこの島へ来たのには、理由があるのです。実は――、僕には個人的に成し遂げなくてはならない、ある目的がありまして――」
「目的……、ですか?」
「はい」
「それは……、お伺いしても?」
「それは……、ですね」
少々、言いづらい。
だが
「実は……、僕は昔、1匹の猫に、命を救ってもらった経験があるのです」
「あら……、命を」
「はい。それで――、僕がこの
「猫への恩返し……、ですか」
芝の上の3猫たちは、スイッチが切り替わったように動作を再開させ、各々の仕事へと戻る。
のぞみはその場で毛繕いを続け、オス2匹は、背中を向けてどこかへ行った。
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