原因究明

 すぎ去っていく人と、自分の手を交互に見る。

「これ、どんな仕組みになってるんだ?」

 俺の独り言に、ヒスイは笑顔で返してきた。

「それは企業秘密ってやつですよ。まあ、ワープについて一つ言うなら、ワープ時に私たちは一度小さな粒子に分解されています」

「え?マジで?」

 既に建物内の調査を始めていたコハクも口を挟んできた。

「ひょっとしたら、今の僕たちはさっきまでの僕たちとは違う存在になっているのかもしれないね?」

「怖いこと言うなよ……」


 そんなふうに調査を進めていると、焼け跡が濃く残っているレジ付近の引き出しの中の、厚く重ねられた、燃えたせいでもはや炭となった書類の下に、焦げて真っ黒になったマッチ箱が一つ置いてあるのを発見した。

 俺はすぐに二人を呼んだ。

「どうかしましたか?」

 とりあえず、先に来たヒスイにマッチ箱を手渡した。ヒスイはそれを隅から隅まで調べ始めた。一見するとどこにでも売っている普通のマッチ。中身を見るとマッチは一つ残らず燃え尽きていた。

「ふむ…燃えカスから推測するに、この中には四十本のマッチが入っていたようです。そして、箱の大きさを見るに、四十本で全てのマッチが揃っているようです」

 少し遅れてやって来たコハクは顎に指を当てながら言った。

「普通に考えると、これが火事の原因になるね?」

「だが、マッチって勝手に燃えたりするのか?」

「普通なら、ありえません。ですが、はじめから暴発するように設計されていたとしたら…わかりません」

 ヒスイはマッチ箱を慎重にジップロックに入れ、鞄に詰め込んだ。

「念のためこれは私たちで解析し、このマッチの出どころを調べます」

「そうだね!よし!まだ何かないか探そうか!」

 それからしばらく探し回ったが、結局怪しいものはあのマッチ箱以外何もなかった。


 後日、俺はヒスイに呼ばれて、学校の屋上に集合した。もちろん今回はノゾミもいる。

 俺達が揃ったのを見て、ヒスイは口を開いた。

「さてさて~。とりあえず、あのぼや騒ぎの件について話しましょうか〜」

「…?」

 なんだか、違和感を感じた。ヒスイってこんな感じだっけ?

「まずノゾミさんに分かりやすいように説明しますね〜。ぼや騒ぎが起こった青果店の中に侵入して〜、怪しげなマッチ箱を見つけたんですよね〜」

 ノゾミは俺の方を見て言った。

「侵入って…それ不法侵入では…」

 俺は目を逸らして軽く笑いながら言った。

「ま、まあ、バレなきゃ大丈夫だろ…」

「バレたら大丈夫じゃなくなるのは大丈夫ではないですよ」

「はは…、で!あのマッチ箱は何だったんだ?」

 俺は隙を見て話を逸らし、ヒスイの方に目を向けた。それにヒスイは笑顔で答えた。

「ええ〜。どうやら予想通り、あのマッチには暴発するように細工が施されていたようです〜。そして…」

 さっきまでにやけズラだったヒスイは突然真顔になって続けた。

「あのマッチの出どころもつかみました」

 普段のヒスイとのギャップに驚きながら、俺たちは真剣に耳を傾けた。ヒスイは遠くを見つめて言った。

「出どころは、私たちが長い間追っていた組織…『世界救済の会』です」

「「『世界救済の会』……?」」

 俺とノゾミは顔を見合わせた。

 俺の勘が言っている。絶対にろくな組織じゃない。そして、確実にその組織と対立することになると。

 俺は空を見上げた。今日は少し曇っているが、雲と雲の隙間から射す光は、本当にまぶしかった。

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