第11話 出口の無い迷宮
プルートゥが産まれた時から、きっと鯨達は彼女の事を見守り、慈しんで来たのだろう
海中、或いは海上に於ける核実験は何百回と行われ、中には水爆実験も在った筈だ
幾ら海が広いとは言え、確かにそんなに核物質を拡散させていては " 死の海 " に為るのも当然だ
授業では、海が広いから時間と共に希釈されて環境問題は無い様な都合の良い話しを聞かされたが、実際はそんな訳は無かったのだ
ビキニ環礁を強制退去させられた島民が、アメリカの許可を得て帰還して後、健康被害や新生児の奇形等の諸問題が表面化し、結果的にあそこは半永久的居住禁止区域に指定されていた
海中にバラ撒かれた放射性物質を体内に吸収する事で浄化出来るプルートゥも、地上の核汚染を浄化する事は出来なかった
今や世界中に在る原子力発電所から垂れ流され続ける " 人体に影響が無いレベル " の筈の核廃棄物質も、彼女が居なかったらとんでもない事に為っていたのだろう
人類はそれを知らぬまま、海は広いから大丈夫と嘯いて罪を犯し続けていたのだ
「何が叡智の光だ …… 」
和磨は人類の無知と傲慢さを恥じる
彼女が居なければ、人類などとっくに絶滅していたかも知れないのだ
「プルートゥ、ごめんなさい」
和磨はプルートゥに向き合い、人類を代表して謝罪の言葉をかけ頭を下げたが、彼女は何の事だか分からずにキョトンとしていた
「カズマ♡お腹空いたか?」
プルートゥはいつの間に採って来たのか、両腕の中に大きなブダイを抱えて笑っていた
何しろ彼女の泳ぐ速さは尋常じゃ無い
海中で彼女に追い付く事の出来る存在は無いだろう
「そうだな、腹が減っては戦は出来ぬと言うしな!焼くか?」
「焼いた魚、大好き♪」
とは言え、台所の竈の上で焼くには少々どころか大き過ぎるので、半身を刺し身にして残った片面を庭のドラム缶窯の上に網を載せて簡易BBQと洒落込んでみた
刺し身に切り分ける様子を興味津々に覗き込んでいたプルートゥの口に、1切れ入れてあげると尻尾を振りながら喜んでくれた
素直に可愛くてドキッとする
人間では無いものの、女子に免疫の無い和磨にはプルートゥの裸体はやはり刺激が強く、意識すればするほど下半身がマズい状況になりつつある
しかも彼女は和磨の事を "
灘瀬海将補の電話があった直前の状況を思い出してしまい、思わず前屈みになる和磨
もしも同じ部隊の同僚が居たら、間違いなく誂われるだろう
下手をすると、一生ものの黒歴史なのは間違いない
ブダイが焼き上がるのを待つ間も、刺し身を手掴みでパクパクと食べていたプルートゥが聞く
勿論、醤油など使わず、食材の味をダイレクトに堪能しておられる
「カズマ、今日はアレは飲まないのか?」
アレとは恐らく昨夜呑んだ泡盛の事だろう
「うん?朝からお酒を呑みたいの?」
海将補からあんな情報を聞かされて居なければ、どうせやる事も無いし、それも良かったかも知れないが …
和磨は少し考えて、冷蔵庫から " さんぴん茶 " を取り出してグラスに注いで彼女に手渡した
プルートゥはグラスに鼻を近付けてクンクンと匂いを確認していたが、一口飲むとパアッと明るく笑顔になる
「良い匂いだ♡」
ジャスミンの香りが気に入ってくれた様だ
朝っぱらから素晴らしい食欲を見せてくれるプルートゥの可愛らしさにヤラれつつ、ふと気になった疑問を投げ掛けてみた
「そう言えば、汚染物質を体内に取り込むとか言ってたけど、取り込んだ分はどうなるんだ?」
「???知らない」
プルートゥ自身、自分の身体の仕組みは良く解っていないらしい
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