第61話 ルド


 十一階層からルドのレベル上げをする事になったが、サリーの時みたいな遠距離攻撃での戦闘参加が出来ないので、最初は少しだけ苦労した。

 わざわざ木から落としてとっ捕まえた猩々を殴らせたりして、なんとか経験値を与えていたが、それでも二日目にはレベルが20を迎え、進化が出来るところまで至った。


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【“ルド”が進化レベルに到達しました。進化先を選んで下さい】

〈ロックパペット〉〈ハウスパペット〉

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「…………ワ、ワッツ?」


 思わず口から英語が漏れる程の驚き……進化の分岐があるという事は、スケルトンの件である程度予想出来ていたが、この“ハウスパペット”というのは……?


【ハウスパペット】

家事をこなせるほど器用な木人形型モンスター



「…………なんそれ!?」


 モンスターって書いてるけど、絶対ダンジョンでもダンジョン外でも出ぇへんやろ!

 

「……もしかして、従魔専用のモンスターか? やとしたら、従魔士として是非欲しい! しかも、教えた通りに家事もやってくれるんなら……最高やんけ」


 俺は衝動に任せ、“ハウスパペット”を選択しようとする……が、しかし、周りにいるブルースとサリーを見渡して、冷静な判断を下す為に一度深呼吸をする。


「ふぅ……落ち着け。まずはパーティを安定させるのが先決やろ。家事を代わりにこなしてくれるのは魅力的やけど、それは今じゃ無くて良い……。今はとりあえず、レベルを上げてどんどん昇格していく為の力が必要や」


 冷静さを取り戻した俺は、改めて“ロックパペット”を選択する。

 タンクがいるだけで戦闘が安定するのは、レオさんを見て理解している。パーティには絶対に必要なパーツだ。



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[名前]ルド

[種族]ロックパペット Lv.1


[HP]80 / 80(+20)

[MP]36 / 36(+6)


[能力値]

体力 26(+6)

筋力 14(+4)

知力 6(+1)

精神 12(+2)

器用 14(+4)

敏捷 8(+3)


[スキル]

頑丈/毒無効(New)

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【毒無効】

毒による攻撃を一切受け付けない



「“毒無効”か……って事は、毒攻撃してくるモンスターももちろんおるんやろな。今んとこルド以外なんの対策もしてへんけど大丈夫やろか」


 能力値は耐久性にだいぶ偏ってるけど、タンクとしてやったらこれで問題無し。これにデカい鉄盾でも持たせれば充分機能してくれるはずや。

 しかも、武器はダメージを与える為に魔鉱石とかのダンジョン素材を使う必要があるけど、盾とか防具やと、攻撃を防ぐだけやからダンジョン素材を使う必要が無い。だから、ルドの盾は結構手頃な値段で用意する事が出来そうや。

 もちろん、もっと上位のモンスターを相手にするってなったら、ダンジョン素材を使った盾も必要になってくるんやろうけどな。


 とりあえず、今日のところはまだ盾を用意していないので、二十一階層以降でのレベル上げは先送りにし、ダンジョンを出る事にした。






 一週間後。

 ルドの盾を買う為に一日だけ休む事にしたが、俺達はこの一週間二十一階層でのレベル上げに勤しんでいた。

 大きな鉄盾を買い与えたルドのレベルは20まで上がり、さらに“魅了耐性”というスキルを獲得した。


【魅了耐性】

“魅了”に関する精神攻撃を受けにくくなる


 ……なにやら精神攻撃をする恐ろしいスキルが存在しているらしい。これは毒攻撃の件も含めて、一度しっかりスキルについて調べないとマズいような気がしてきた。


 ルドはレベルアップのおかげで能力値も上がり、二十一階層でもタンクとして活躍出来るぐらいにはなってきた。まぁ、サリーによる回復は必須になるが。

 盾の扱い方は、最初に渡したときもしっかり教えたが、探索の合間でもちょくちょく止め方、流し方などを教えて順調に上達している。“調教”スキル様々だ。

 贅沢を言うならば、しっかり模擬戦などで特訓したいところなのだが、広くて従魔を出しても大丈夫な都合の良い場所が見つかっていない。




「ルド! 次は流さず受け止めてくれ!」


 最前線でオークの攻撃を防いでいるルドに指示を出し、俺とブルースは左右から敵を挟み込んだ。

 指示通り、ルドが次の攻撃をしっかり受け止めた瞬間、完全に動きが止まったオークに対して総攻撃を仕掛ける。

 ブルースは手足の関節を重点的に鉄棒で殴り、サリーはルドを回復させながらちょくちょく光矢ライトアローを飛ばす。

 俺は動きを阻害するために、“木魔法”で発生させた丈夫なつるをオークの足に絡ませると、目や指などの刃が通りやすい部位へ剣で攻撃を仕掛けていく。


 ろくな抵抗も出来ず地面に倒れ伏したオークは、黒いもやとなって姿を消した。


「よし、もう二十三階層でも充分やれるな。じゃあ、そろそろ二十四階層行ってみよか」


 二十三階層のモンスター相手でも問題無く戦える事はわかったので、俺は先へ進む決意をした。






 翌日、予定変更。

 前日の夜までは意気揚々と二十四階層へ挑むつもりだったのだが、が来て今日は別の予定が急遽入ってしまった。

 その為に今はダンジョンの前で待っているのだが、予定より少し遅れてようやく連絡の主が現れた。


「トキオやー。おっはー」

「……あぁ、おはよう、マリア」


 そう、昨日の連絡の主は同期のマリア。

 どうやら、俺が地方を飛び回ってた間にレベル10を超え、既に“光魔法”を取得していたらしい。それを俺に見せたいという事で、ダンジョン同行の誘いを連絡してきた訳だ。


「じゃあ、とりあえずどうする?」

「ウチまだ十四階層までしか行った事ないから、どこまで行くかはD級探索者様に判断任せますって感じで」

「……わかった」


 要するに、ほとんど俺任せって事やな……ちょっと追い込んでみるか?




「ちょ、ちょっと! 速いって!!」

「そんなノロノロ進んでたら、十四階層着くまでに昼過ぎてまうやろ」

「いやいや! それが普通やから!」


 ……普通なんか知らんのよ。

 俺を誘ったんならこれぐらい覚悟してもらわんと。


 俺達は見掛けたモンスターすら放置して、先へ先へと走り続ける。そして、昼が過ぎた頃には十五階層へと足を踏み入れた。

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