第24話 文香の受難

「白かよ。デートなんだろ。もう少し色っぽいヤツ履けよ。くくく」

 捲られた浴衣の裾。

 そこから、一気に太腿を撫でられて。


「いやぁーっ!」


 鳥肌が…、総毛立つってこういう事?

 身体中に嫌悪感が走る。


 中学の…、あの時以来、確かにアタシ文香は何人もの男とHした。気持ちいい時、そうで無い時あったけど、こんなにも気持ち悪いと思った事は初めて。


「あっ」


 その手に、股間を押さえられた時、身体がビクッとして。


「フッ。もう、湿ってきてるじゃねぇか。相変わらずのビッチだなぁ」

 ゲラゲラ笑いながら、アタシの股間を揉み出す一橋ケダモノ

「すぐに、気持ちよくしてやるよ」

「ならないわよ!アンタなんかので‼︎ 今だから言うわ!あんな貧相なモノで、独りよがりな自己満エッチなんて、満足出来るイケるワケないんだから」


 ガシィ!


 痛っ!殴られた?


「黙れよ、こんな濡らしといてよ!このビッチ」

女性オンナを知らないのね。感じてるんじゃないわ!レイプされた時も、防衛本能でなるのよ‼︎ 傷つかない為に。身体を守る為に!それを勘違いで、自分はオンナを悦ばせてるって。そんな都合のいい妄想!アンタがバカな証拠よ」


 バシぃ!


 今度は叩かれた?


 バシ!バシぃ‼︎

 何度も?コイツ…、誰か、助けて!ユキヤ…。


「何してんの!その娘を離しなさい‼︎」


 凛とした声が響いて。


「…一橋先輩?それにブンちゃん?」


 そこに立っていたのは、アタシと同じ浴衣姿の…。

「ムッちゃん?それに」


 ココから花火を見るつもりだったの?

 三嶋君と宮本ムッちゃんが立ってた。


「は?何だ?て、テメェ!何撮ってやがる」

「先輩の犯罪行為に決まってる。金井を離せ」


 一橋レイプ犯は振り向き、立ち上がると、

「そのスマホ、ぶっ壊してやらぁ」

 三嶋君に向かっていく。


 は?


 三嶋君はかわしながら首後ろに手刀チョップ入れて。

「パソコンオタクの隠キャだけどさ。一応実家は空手道場なんだから、無才でも基礎くらいは動くよ」


 ドスっ!


 つんのめった所、懐に入った宮本ムッちゃんが鳩尾に一撃。


「ぐ、が…」

ドサって、一橋が倒れて。


「気絶させるのなんて漫画やドラマだ。でもちょい動けなくする位はできるよ」

「証拠映像もあるしね。どうする?金井。警察に」

「いくわ」


 裾を捲られた位なら、そして未遂なら…。

 でも、何度も殴られた。アタシの顔は腫れ、こめかみに痣すら出来て。

 泣き寝入りなんて出来ない。


「先ずは病院ね。警察にはその後届ければ。ブンちゃん、亀沢君は」

「コッチに向かってる筈。現地集合だったから」

亀沢カメには、僕から話しとくよ。ムツミ」

「あぁ。私が付き添う。病院に行こう、ブンちゃん」


 ひぃ!

 ドタ、バタ、タタタッ。


 少しつんのめりながら。やっと動けるようになった一橋が逃げていく。


「僕等の証言とこの映像。被害届は充分出せるよ」

「そう。先輩には破滅の道しか残されていない。さぁ、病院へ」

「ありがとう。2人のデート、邪魔しちゃったね」


 近くの病院で診てもらう。

 幸い、軽い打撲だけって診察。


 そこへ、ユキヤも合流する。


「文香!」

「あ、ユキヤ❤︎」


 アタシは、ユキヤの腕に飛び込んでしっかりと抱き締めてもらった。


「ごめん。こんな事なら、ずっと一緒にいるべきだったんだ」

「アイツと会うなんて思わないし。花火、台無しになっちゃったね」

「…かお…。悪いけど、一橋、許せないから。陽介ゴン宮本ムサシも、ホントありがとう」


 安心した?抱かれて、ちょいホッとして。

 ユキヤも、少し表情が和らいで。


「いや、居合わせて良かった。カメ、例の画像な」

「あぁ…、チッ、益々許せねぇよ、コレ」


 三嶋君から、あの時の画像を受け取ったユキヤは、アタシも初めて見る様な鬼の形相してた。


「結構前から撮ってたんだ」

「えーと。ゴメン、早く助けろって責めは詫びる。でも決定的な証拠ヤツが欲しくてさ」


 音声含めて、掴まれて押し倒されたトコから画像があったから。


「いざって時には私が飛び掛かるつもりでいた。これでも一応、空手も有段者だ。陽介の当て身を喰らう様なヤツに、引けなんかとらないよ」

 浴衣姿のムッちゃんからは、そんな雰囲気は見えない。


 病院で診断書をもらい、アタシ達は警察へ。

 目撃者として、ムッちゃん達も一緒。


 ホント、デート邪魔してゴメン。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「警察?冗談だろ?」

 街中へ逃げながら、一橋は知り合いへ電話する。


「もしもし、あ、郷田さん、あの…」

一橋バシ、ふざけんなよ』


 何?この怒りに満ちた声は?


『お前知ってて、コッチに話振ってんのかよ。カメってヤツ、軍団あの伝説レジェンドの春口の弟分って言うじゃねぇか。俺等に、軍団とコトを構えろってのか?』


 そ、そんな…。


『悪いがな。そんな危ねぇ橋を渡る気はねぇよ。2度と俺等に関わるんじゃねぇぞ』

「ご、郷田さん、お…」


 ブチっ、ツー、ツー。


 軍団?弟分?ほんとに?

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