第20話 連休中のバカップル

 亀沢が目覚めた時、大概金井カナブンは先に起きてる。

 普通にエプロンして、朝食作ってるんだ。


「おはよう!ユキヤ‼︎」


 夕べの事より何より、その姿にを意識してしまうのは仕方ないよね。


「今日、ショッピングモールで買い物するの、付き合ってね」

「あー、約束だもんなぁ」


 ウチから最寄りの…、まぁ、そこそこあるけど、北町駅から3駅。

 市の中心街にある南駅隣には、県内でも有数の大きさを誇るショッピングモールがある。

 ちなみに、その1つ前の三谷駅から10分程の山手に行くと、我等が開南高校だったりする。

 俺んちから2駅の距離とはいえ、地味に遠い。しかもバス通りからも離れ、尚且つ直通路線は無い。

 バイク通学許可がおりてるのは、仕事バイト事情だけじゃないんだよね。


 大荷物の買い物の時、俺はスクーターPCXで、金井カナブン自転車チャリで北町駅に行って、の現地集合の手を使う。

 「恋人同士だろ?」と突っ込まれるかもしんないけど、現実的に楽に運べるから。

 でも、まぁ、今日は服買いが主目的メイン

一緒に歩きで駅まで向かった。


 7月だから、確かに徒歩は暑い。

 けど、偶にはこうして肩を並べて、ってのも悪くない。俺達は、その水着をどこで着るか、プールか海か、でおしゃべりしたんだ。


「『トロピカル・れじゃすぱ』でよくね?」

「でも、海も捨てがたいし」

「日焼けとベタつき。こないだ難色示してなかった?」

「それはそう、なんだけどねぇー」

「…文香、まさかお泊まりで海、行く気じゃねぇだろーな?」

「まだ、アタシの名前呼びに抵抗あるんだ」

「それがわかるんなら、"金井カナブン"呼びでも」

「だーめ!絶対やだ‼︎」


 照れ臭いが仕方ない。

 何せ、通い妻半同棲している相手恋人。渾名呼びは、誰が考えてもおかしい。しかも、俺のことは"ユキヤ"呼びだから、尚更だ。


 恋人繋ぎして歩きながら、こんな会話だ。


 バカップルだよなぁ。


 うん、自覚あるよ。

 あんまり暑いんで、駅についた途端に先ず自販機に直行!いつもは缶コーヒーなんだけど、流石に今日は炭酸飲料コークにした。


 で、俺は券売機で切符買って。

 殆どスクーター移動だ。電車のカードもアプリも持ってないよ、彼女と違って。


「いい加減、いれたら?」

「普段、全く必要ないし」

「アタシとのデートで必要でしょう?」


 1年後、2人乗り解禁したら後ろピリオン乗せまくりだと思ってるんだが。


「髪のセットとかもあるの。あんまヘルメット、被りたくないんだけど?」


 あれ?ソイツは盲点だ。


 住宅街だからか。この北町駅から乗る客は多い。逆に言えば、ここまでの電車はガラガラだ。急いで乗れば、座れないって事はない。

 俺達は普通に座り、あまり混む事も無く南駅までそのまま過ごしたんだ。


 ショッピングモール内のアパレルショップ。

 その一角に水着コーナー売り場がある。


 カラフルな水着~主にビキニがマネキンやハンガーに飾られている。下は1,980円から主に3,980円程のモノが陳列されていた。


「あはっ!コレ、凄い‼︎ ね、ユキヤ、着てみない?」


 男性用ビキニ?

 いや、これ、アレを包んでるだけだよね?


「あ、でも、コレじゃユキヤんのは、はみ出しちゃうよねー」

「おおーい」


 そんなこたぁないと思うけど。

 いや、でも、コレ、万が一の時は…。


「着ないからね」

「残念」


 何でだよ。


「じゃあ、約束通り3つは選んでね。どんな際どいエッチなのでもOKだからね」

「そんなの、他のヤツに見せる訳ねぇだろ」

「大丈夫、室内鑑賞用にするから」

「それも、おかしいだろ?」


 金井カナブンはケラケラ、ひとしきり笑うと奥の方へと。

 とりあえず俺は、その辺のスポーツタイプを見る。

 ビキニ…と言うよりセパレートタイプとでも言えばいいのかな?ほぼ谷間が露出しないチューブトップのヤツとか。この辺りは、メーカーロゴが入っている黒系統しか無いな。

 コレはこれで、似合っていそうだけど。

 そう思って、1つ、手に取る。


 うん。黄色系も似合いそうだ。

 そう思って見てると、

「もし、お客様…」

 店員さんが声をかけてきた。


 あ、野郎が見てるの、おかしいのか?

 焦る俺に、

「先程一緒にいた彼女さんのを、お選びですよね。でしたら、向こうの方がよろしいかと」

 笑顔で案内してくれた。

「こちらでは、小さいのでは、と思いますよ」


 店員さん曰く、カップルで買いに来るのは結構多いらしい。

向こうの試着室プライベート フッティングルームなら、お2人で入れますよ」


 いや、そんな事しませんから。

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