<第1話を読んでのレビューです>
この物語は、夏休みを迎えた少女・宇海が、自室で秘めた願望と向き合うところから始まる。文章は軽やかでありながら、細かい心理描写に丁寧さがあり、宇海の焦燥や夢見る心を自然に伝えてくる。宿題に追われる日常と、心の奥に潜む冒険への憧れの対比が巧みに描かれ、読者は瞬時に宇海の世界に入り込むことができる。
個人的に印象的だったのは、ノートを枕の下に敷いて眠る場面だ。
「どうか、夢でもいいから、海で冒険をしたい。」
たった一文の願いに、子どもらしい素直さと切実さが凝縮されており、宇海の冒険心や孤独、そして希望への渇望が鮮やかに浮かび上がる。その簡潔な表現の中に、読者が共感する余白が残されているところが見事だった。
宿題や親の制約という現実の中で、秘密のノートに夢を託す姿勢。小さな日常に潜む心の動きや、少年少女の想像力の豊かさが描かれていて、読むほどに登場人物に親近感が湧く物語である。