第35話 ライン・ロルナ先生となかなか進まないクラン王国

大成功に終わった"コミケ"。

さてと次は何をする。

と思っていると、面白い事を見つける。


(ナギサ)

調子はどう?カイン。


(ロロア魔王国魔王 カイン・ロロア サキュバス)

はい、抜群です、シルフィア様。


(ナギサ)

それは良かった、ライン先生(ニヤッ)


(カイン・ロロア)

えっ?……だ、誰の事です?(半裏声)



動揺するカイン。


(ナギサ)

だってねぇ〜、ライン・ロルナ先生(ニヤリ)


(カイン・ロロア)

えぇぇぇっ!!!


(ナギサ)

"女王と勇者の禁断の恋:Rー18版"


(カイン・ロロア)

嫌ああぁぁぁっ!!言わないでぇ〜!!


(ナギサ)

だって、ウチの"本喫茶"で人気No.1ですから。

"続編まだですか?"って問い合わせが凄いんですよ。


(カイン・ロロア)

ううっ……なんで分かったんです?


(ナギサ)

なんとなく。

勇者がやっている事が、誰かさんと全く同じなんですよ(ニヤッ)


(カイン・ロロア)

ガーン!!


(ナギサ)

しかもやたら詳しい(ニヤリ)


(カイン・ロロア)

ああぁぁぁっ!!


(ナギサ)

ただ、誰かさんは、主人公と違い、抱くより抱かれる事の方が好き(笑)


(カイン・ロロア)

そうなんですか!押し倒しても良いとか!!(血走り目)


(ナギサ)

だろうねぇ〜、誰かは分からないけど(ニヤリ)


(カイン・ロロア)

そ、そうでした、誰の事やら、あはは(冷汗)



"女王と勇者の禁断の恋:Rー18版"の作者が確定したところで、次は何を投入するか考えるナギサ。

"リバーシ""囲碁系""将棋""サッカー""ペタンク""ボーリング"は既に投入した。

これも大当たりし、莫大な財産を築けた。

それにより、教育・医療・福祉の事業にも余裕が出てきた。

ナギサの生活も向上した。

いや、"無限通販"があるんだ、元々困ってはいないが。

まぁ、服飾関係は目立つので、外出にはこの世界のドレスなどを着ていた。

それが他の貴族と違い、使い回しをしていたので、周りからは貧乏だと思われていた。

住処は魔王宮の為、それについては分からなかった。

多くの専属メイドが居た為だ。

しかし、メイド長以外はメイド・執事学校の卒業生だった。

なんだかんだで毎年卒業生を採用するのだから、凄まじい人数になっており、魔王宮内でも一大派閥になっていた。

だからといってふん反り返る事なく、着実に業務をこなしていく為、最初こそバカにしイジメていたりもしたが、もはや手が出せなくなっていた。

そうなると、他の派閥は手のひらを返したように接触してくる。

敵対するより、共闘した方が得だからだ。

しかも、その後ろにはナギサが居る、そしてナギサを魔女王様が頼っている。

ドラコ王国の勇者、椿も師匠と慕い、ドラコ王国すら頼りにするナギサの専属メイド達。

しかも卒業校のオーナーはナギサ。

よくよく考えた時、よく今まで生きていれたと感謝する。

一発処刑でも文句は言えない。

そんなメイド達が一大勢力。

自分達はいつ首どころか処刑されても代わりが居る。

ナギサの一声で自分達の生死が決まる。

こんな状況でそのメイド達をイジメるなんて、自殺願望のあるヤツぐらいだ。

下手したら家ごと潰される。

入れ替わりで新しく入ってきたメイドには、古参メイドが徹底的に教育が施されていた。

それでも手を出す跳ねっ返りは派閥の者に袋叩きに合うか、派閥から追い出され、場合によっては辞めていく。

ナギサの専属メイド達は皆優秀な為、空きが出た業務を任され、魔王宮内部をどんどん侵食していく。

派閥を維持するには、おとなしく友好関係を築くか、自分の派閥からの採用者を徹底管理するしかない。

別にナギサは魔王宮のメイドを傘下に収める気は無い。

そんな事をしたら反発必至だからだ。

それに、実際には全員魔王宮から給金をもらっているわけじゃない。

身分相応の人数以外はナギサが直接雇っている。

事業で莫大な財産を築いた分、自分の専属メイドに給金を払って雇っているのだ。

優秀な成績で卒業すれば、倍率は厳しいがナギサの専属メイドという道が開かれているのだ。

ナギサがドラコ王国に行く時は、凄まじい数の専属メイドがついていく。

しかも護衛は武術も心得た"武装メイド"だ。

盗賊ごときが下手に手を出したら瞬殺される。

場合によっては捕縛され、ナギサの前に突き出されるのだ。

ナギサは手の施しようがないのはその場で自ら処刑し埋めてしまうが、改心の余地ありとなると犬として雇う。

忠実な犬は、あちこちに散らばり、情報を持ってくる。

ナギサはその情報もカイン・ロロアに持っていく。

カインは自分の放つ影と諜報機関、ナギサの専属メイドと忠犬からの情報を元に判断をする事がある。

何重にも張り巡らされた情報網。

しかも専属メイドは貧民街出身が中心だ。

最近は最低所得者も学校に入学できるようになっている。

まさに街に根付いた情報網、メイドの下にはお小遣いをもらう為に情報を持ってくる者達がいる。

主に子供達だ。

相手は子供となると油断する。

何気ない世間話が情報としてメイド達に伝わる。

それを精査してナギサに持っていく。

怒られはするが、自分の手下も助けてくれる。

今があるのはナギサのおかげ、家が、親が安心して食べていけてるのはナギサのおかげ。

その忠誠心は凄まじい。

賊の、刺客の攻撃に身体を張って守ろうとする。

そのメイド達をナギサが守る、ナギサが間に合わずとも、いくら傷つこうが死にかけようが、完全完治してくれる。

必ず守ってくれる安心感から躊躇なく飛び込んでいく。

弓を向けようが、斧を構えようが、毒を塗った剣を向けようが、怯まない。

死ぬ?なにそれ美味しいの?と言わんばかりに突っ込んでくるのだ。

相手にとっては恐怖である。

メイドごとき、脅せはどうにでもなると舐めたら、隠し持ってた武器を出して襲いかかってくる"武装メイド"。

"我は肉壁"と迷いなく間合いに飛び込んでくるメイド。

こんなの襲撃者からしたら、悪夢以外の何物でもない。

何しても怯まないのだ。

中には笑って突っ込んでくる者も居る。

ナギサがいくら止めても聞かないので、諦めて保護に回る。

そうなると、襲撃するより話を聞いてもらう方が利口と、ナギサの前に嘆願しに出てくる。

事と次第によっては助けてもらえるからだ。

その後、忠犬になれば食い扶持も保証される。

知らないうちに、裏ギルドがナギサ側についていた。

下手に貴族や実力者が金を積んでナギサへの妨害や暗殺を依頼したりしたら、情報が筒抜けである。

金を払って処刑台に行くようなもんだ。

裏ギルドも黙っていない。

情報を漏らした事がバレないように、上手くすり抜けた依頼者には、裏ギルドから刺客が飛ぶ。

いわゆる証拠隠滅、口封じだ。

また、裏ギルドは領地を跨ぐ。

他の領地にも犬ができるわけだ。

他領地出身のナギサの専属メイドも居る。

領主も警戒するしかなかった。

他領で悲劇が起こった場合は諦めていた。

しかし、それを聞いたナギサは、お忍びで訪れ救済していた。

それは身内にはすぐバレる。

里帰りすれば、死んだはずの子達が生きているのだ。

いくら口止めしても、身内にはバレる。

それからは素直に申し出て、怒られるようになった。

それに領主も考えを変えだした。

どこにスパイが居るか分からない。

多分大丈夫と思っている、長年家に仕える執事長ですら分からないのだ。

万が一の場合がある。

なら、どうすれば良いか?

善政を敷くしかない。

それにより、領民の生活が良くなった。

なんか凄い事になっているぞ、ナギサ。

気にしても仕方ない。

ナギサはその環境を利用する事にした。

ある程度は他領の事も分かるからだ。


(ナギサ)

なんか凄い事になってるんですけど……


(カイン・ロロア)

そうですか?シルフィア様。

極々普通だと思いますが……


(ナギサ)

そうかな……


(カイン・ロロア)

そうですよ、シルフィア様。



なんか納得いかないナギサだった。

まぁ、そう言うならと商人を呼び寄せた。


(御用達商人 狐獣人)

お呼びでしょうか?ナギサ様。


(ナギサ)

えーっと、最近どうですか?新しい物を投入するとか。


(御用達商人 狐獣人)

そうですね……

そろそろ新しい娯楽があれば投入したいですね。

ちょっと市場が安定してきましたから、起爆剤が欲しいです。


(ナギサ)

なら、これを投入しましょうか?



ナギサがポチッたのは、"人生ゲーム"と"トランプ"だ。


(御用達商人 狐獣人)

こ、これは紙を使った娯楽品!



ナギサは"カルタ"と"百人一首"もポチッた。

"百人一首"に関しては、"スポーツカルタ"のルールも教えた。

なかなか盛り上がったが、まずは簡単は方からとなった。


(御用達商人 狐獣人)

これは次回にしましょう。

二段構えでいきましょう。


(ナギサ)

分かりました。



あの"紙の娯楽品"という事で、話題を呼んだ。

いくつかは貧民街にも配った。

その代わり"賭博は禁止"という事を約束して。

また、"トランプ"はルールブックも一緒に付けたので、大好評であった。

たった一つの物で何通りも遊べる。

これは貴族もハマり、早速、金箔を貼ったり、銀の装飾を施した鑑賞用などの注文が入った。

まいどありである。

人生ゲームも流行った。

マスに沿って進むだけで、色々変わる。

紙のおもちゃのお金を作り、最後に一番財産を築いた人が勝ちっていうのもウケた。

騎士になったり、貴族になったり、国王にもなる出世ゲーム。

しかし、失敗するとどん底に落ちるドキドキ感が良かったらしい。

サイコロを付けた為、サイコロのゲームも同時公開した。

丁半やち……ゲフォゲフォゲフォゲフォ……まぁ、あまり賭博に繋がるゲームはお勧めしない。

しかし、権利の問題があるので、"あるなら公開してしまえ"という事になった。

賭博で身を崩さないで欲しいが。

大ヒットしたため、御用達商人とニンマリしていたナギサだった。

紙の開発ができていないクラン王国には、まだ投入できない。

という事でサイコロの投入を相談してみた。


(ギルド御用達商会ラミング商会商会主 グレン・ラミング:男)

これはまた変わった娯楽品ですな。


(ナギサ)

手軽だし、装飾もしやすい。

道に丸やマスを描けば、"すごろく"という遊びもできます。



実際描いてやってみた。


(商会主 グレン・ラミング)

なるほど、これは子供でも簡単ですから、流行るかもしれません。


(ナギサ)

他にもこんなゲームもあるんですが……



ルールブックを出し、説明した。


(商会主 グレン・ラミング)

なるほど、大人でも楽しめますな。

たしかに賭博要素の強い遊びですが。


(ナギサ)

こんなん公開して良いですかね?


(商会主 グレン・ラミング)

良いでしょう。

こちらは遊びを紹介しただけ、賭博に使うのは勝手です。

別に公開しなくても、そういう連中は簡単に思いついてやるでしょう。

なら、最初から公開して権利金を取る方が利口です。


(ナギサ)

賭博推奨になるようなら、投入しませんが。

結果が簡単に出るだけに、ハマらなければ良いですが。


(商会主 グレン・ラミング)

関係無いですよ。

今まで投入した娯楽でも賭博しています。

やる人は何をしてもやりますから、割り切ってください。


(ナギサ)

分かりました。

で、これの投入はどうするか迷ってるんですが……



ナギサは"和紙"と"上質紙"を見せた。

作り方も見せたが、目立ちすぎるのでどうかなと。


(商会主 グレン・ラミング)

ちなみにもう一つの世界では?


(ナギサ)

既に投入しています。

あっちでは学校も塾も作り、ボクの居る国では識字率は約100%です。

だから"本喫茶"もやり、それに付随する娯楽も投入しています。


(商会主 グレン・ラミング)

し、識字率が約100%!

それは凄い!それで本を使った娯楽も……


(ナギサ)

はい、"本喫茶"というのは……



そこで、主にロロア魔王国でやっている娯楽を話した。


(商会主 グレン・ラミング)

なんと進んだ国なのですか!

これはクラン王国も負けてはいられません。


(ナギサ)

しかし、それをどうやって投入するか?

なんよねぇ〜……

これ、識字率が高くないと……


(商会主 グレン・ラミング)

たしかに貴族だけの娯楽で終わりますな。

そこまで大々的なイベントは無理かと……


(ナギサ)

あと、紙の開発だよね。

これ、どうやって誤魔化すか……


(商会主 グレン・ラミング)

"和紙"というのはなんとかなりそうですが……

情報の出所ですよね?


(ナギサ)

なんとなく紙が安くならないかと悩んでいたら、思いついたとか。


(商会主 グレン・ラミング)

紙の革命ですからね。

それだと"英雄"になりますよ。


(ナギサ)

なら、ソイツに全部おっ被せたら。


(商会主 グレン・ラミング)

地獄ですよ。

追求されたらどうにもならない。

それに重圧が物凄い。

次、何か無いかの期待もあるでしょうし……


(ナギサ)

そっか……

なら投入できないなぁ……


(商会主 グレン・ラミング)

一層の事、ナギサ様が表に出られては?


(ナギサ)

いや、こちらは任せたい。

あっちではロロア魔王国と弟子が居るドラコ王国の両方に関わってるから。

ちょっとそこまで手が回らない。

行くとこまで行ったら手が空くかもだけど、それまでは無理。

そうなると、なかなかクラン王国には手が出せない。

誰か代わりが要る。


(商会主 グレン・ラミング)

娯楽ならなんとかですが、紙となると流石に……

既に娯楽ですら、一体どうやったら思いつくのか?

と怪しまれてます。

商会あげて娯楽に取り組んでますとは答えていますが、バレるのも時間の問題かと。


(ナギサ)

うーん、キビシイなぁ……



なかなかクラン王国は進まないナギサだった。


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