第30話 椿の日常と廃神殿のダンジョン化

最近、クソ世界にもちょくちょく行くようになったナギサ。

アンナとキリアに強請られているのだが、そこに椿もしれっと加わっていた。


(キリア サキュバス)

お前、領地とか大丈夫なんかよ。


(早乙女 椿)

大丈夫です、ちゃんと領地経営してます。


(クラン王国王都クラン ギルド職員 アンナ:女)

私はお休みの日に来てるだけだけど、領主様は忙しいんじゃない?


(椿)

ちゃんと側近も置いてます!


(ナギサ)

その側近に裏切られたり、横領されたりすんなよ?


(椿)

大丈夫です、国王直々に派遣してくれましたから。


(ナギサ)

ダメやん(ため息)


(キリア)

お前、それスパイだ。

お前の行動、全て国王に筒抜けだぜ?


(王都ギルド職員 アンナ)

どんな事してるか丸わかりじゃない。

仕舞いにこっちに来てるのバレて、強請られるよ?(ため息)



お前が言うか?アンナ。


(椿)

うーん……

それでジャムとかバターとかお土産を買ってきてって言われたのかな?

レトルトのシチューやハンバーグも言われたんよ。


(キリア)

既に丸バレ、パシリじゃねぇ〜か(ため息)


(椿)

仲良くなった王女が私と同じ推しキャラで、グッズのお土産買おうと思ってるし。


(王都ギルド職員 アンナ)

もう、カモられてる!(ため息)


(ナギサ)

それで同じ物を3つも……


(椿)

私用と鑑賞用、お土産用よ!


(ナギサ)

変な物買うなよ。


(椿)

分かってるわ、後々揉めるような物は買わない。


(ナギサ)

今のところ、紙の開発は禁止だ。


(椿)

えっ?


(ナギサ)

紙は高い、だから本は高い、貴族の財力の象徴。

これを利用して"本喫茶"、いわゆる漫画喫茶をやる。

儲けが飛ぶようなバカな真似はするな。


(椿)

そうか!

高い本が安く読める!これは大流行ですよ。


(ナギサ)

そこからお茶会につなげ、コスプレに持って行く、その先はコミケだ。

そうなってから紙の開発をやる。


(椿)

なるほど!

あの世界の二次元文化を投入するんですね!


(ナギサ)

そうだ。

だから、紙の開発を先にやると儲けが少ない。

まずは"本喫茶"で興味を引く。


(椿)

師匠の計画、王様に伝えます。

紙の開発は師匠の指示が出るまでしないように。


(ナギサ)

そうしてくれ。

その為にも識字率上げろよ。

ウチはもうやってる。

真面目にやっているのは、貧民街の子供でも読み書き計算はできる。


(椿)

マジですか!


(キリア)

無料学習会やってるからな。


(椿)

私もやろう……でも無料か……


(ナギサ)

自領だけで良いんじゃないか?

費用は莫大だ。


(椿)

そうします。

って師匠はよくできますね。


(キリア)

コイツは事業の儲けと女神への寄付、国からのコイツへの給金の全てを湯水の如く注ぎ込んでやがる。

莫大な財産は右から左に消えてるよ(ため息)


(椿)

じゃあ、無料の学校とか、安く使える治癒院や病院、老人院は?


(キリア)

全部コイツの個人的な慈善事業だ。

それだけに、誰も文句は言えねぇ。


(椿)

流石師匠!(誇る目)


(キリア)

コイツ分かってんのか?(ため息)



リゾートと買い物、食事を楽しんで各々の国に帰る。

キリア以外。

クソ世界では、夏葉原はもはや常連になっていた。

まぁオタクの聖地だ、そうだろうな。

特に椿は。


(ナギサ)

キリア、今更だろ?


(キリア)

良いじゃねぇ〜か、クラン王国でも楽しんで。


(ナギサ)

あゝ、はいはい。



"ホルモン"の納品を済ませ、グレンのところへ行く。

魔動車はまだ投入できない。

やはり土地確保の問題だ。

貴族にも手を回し、新製品をちらつかせているが。

という事で、"ダブルウィッシュボーン"の開発をやってしまおうとなった。

"リッジドサス"を投入後、頃合いを見てどうせ投入するんだ、今のうちに開発を済ませてしまおうと。

という事で、ナギサは"ダブルウィッシュボーン"の見本を希望数出した。

ロロア魔王国は車体製作の段階なので、それが終わってから開発に取り掛かる事になった。

開発さえしてしまえば、いつでも投入できるからね。

魔動車の開発はドラコ王国にも許可しているが、権利金はナギサに払う事と、安全装置はナギサ製を使う事になっていた。

魔動車は売れた。

画期的な魔動具であり、楽しめる。

財力誇示にもなり、台数が揃うとレースをやる。

優勝の栄誉だけでなく、年間王者も決まるシステム。

これにハマったらしい。

"サーキット使用料"もしっかり取るが、貴族ならお遊び程度の価格設定が人気に火をつけた。

ドラコ王国側は少々開発に手こずっていた。

椿がナギサみたいに詳しくない事。

サーキットと言われても、どのようにレイアウトして良いか分からない事などが足枷になっていた。

もう、ロロア魔王国から輸入し、サーキットについてはナギサに頼もうかという声も出てきた。

どうせ権利金を払うなら、それで良いのでは?と。


(椿)

師匠!


(ナギサ)

断る!


(椿)

まだ何も言ってないじゃないですか!(涙目)


(ナギサ)

魔動車とサーキットだろ?

魔動車の輸入は別に良い。

今のところ軍事転用は不可。

サーキットレイアウトが分からないなら、頑張れ(笑)


(椿)

作ってくださいよ、サーキット(涙)


(ナギサ)

だから、国王と魔王様の許可取れって。


(椿)

取ってます!レースに詳しくて、ルールからサーキットまで作れる師匠に任せた方が絶対成功するって許可取りました!


(ナギサ)

なんでハードル上げるんだよ!


(椿)

その方が許可もらえるじゃないですか!


(ナギサ)

ったく……知らないよ?


(椿)

やったぁ〜!ありがとう、師匠!!


(ナギサ)

はぁ〜……



仕方ないのでサーキットを作り、ルールも作った。

サーキットは"ヘレス"と"マニクール"。


(椿)

師匠、2つだけですか?


(ナギサ)

今の場所じゃ、2つが限界だよ。

観客席も要るでしょ。


(椿)

あっ……


(ナギサ)

またスペースができたら言っといて。

ロロア魔王国には"インディ""モナコ""鈴鹿""富士""ル・マン"を作ったから、その気があるなら走りに来れば良い。

ルールも発表した。

やはり、単発の優勝者だけでなく、年間王者も決まる事に大いに盛り上がった。

ロロア魔王国から土地が空いたと連絡があり、更に"スパ・フランコルシャン"と"ラグナ・セカ"を作った。

ナギサ、お前、耐久レースのサーキットも作ったな。

そんな事をしていたら、クラン王国のギルマスから連絡がきた。


(ナギサ)

どうしたん?


(クラン王国王都クラン ギルドマスター ミレンナ:男装)

それが廃神殿が、どうやらダンジョン化したみたいだ。


(ナギサ)

そんな事もあるんだ。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

普通は無いが、過去の記録によるとダンジョン化やダンジョン発生が起こった事もあると記録があった。

問題は原因不明な事と、スタンピートが起こる事だ。

しかも、異世界と繋がったのではないか?という仮説の記録もあった。


(ナギサ)

繋がったのではないか?


(王都ギルドマスター ミレンナ)

そうだ、調査隊が"黒い渦"や"神殿の入り口"に入ったきり、戻って来なかった。

全ギルドが調査したが見つからず、消滅したか違う世界に飛ばされたんではないか?との結論になったらしい。


(ナギサ)

で、その調査に行って、この世界から消えろと。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

そんなわけあるかああぁぁぁっ!!

調査には同行して欲しい。

分かる範囲で調べるだけで良いんだ、お前に消えられたら困る。


(ナギサ)

同行って、調査隊組むんだ。

誰がリーダーなん?


(王都ギルドマスター ミレンナ)

紹介する、ウチの主任のノルンだ。


(クラン王国王都クラン ギルド主任 ノルン:男の娘)

ギルド主任のノルンです、よろしくお願いします。

今回ボクが隊長を務めます。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

私も同行する、キャンプで報告を待っている。


(ナギサ)

来ないの?ギルマスが目視確認しないと。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

後から行く。


(ナギサ)

ヘタレ(笑)


(王都ギルドマスター ミレンナ)

違うわ!



という事で、問題の廃神殿に向かった。

到着すると陣を張り、測定用の魔動具などを準備する。

ナギサは"ストレージ"を付与した袋を提供し、その中に必要物資を入れる。

魔石付きの小型の袋だが、大容量なので運びやすくなった為、調査隊から感謝された。

準備ができると問題の廃神殿に入って行く。


(ナギサ)

スタンピートがという割には魔物が居ないな。


(王都ギルド主任 ノルン)

おかしいですね。

スタンピートを警戒するなら、魔物が大量発生していても不思議じゃないんですが。


(ナギサ)

ちょっとギルマスに聞いてみるか。



ナギサは突入前に渡してあった"スマホ"の異世界仕様を使って連絡する。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

なんだと、魔物が居ない?



ミレンナは早急に記録を調べた。

しかし、魔物が居ないという記録は過去には無かった。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

ナギサ、そういう記録は過去には無い、気をつけてくれ。


(ナギサ)

了解。


(王都ギルド主任 ノルン)

記録無しですか……


(ナギサ)

まぁ、行くしかないよね。


(王都ギルド主任 ノルン)

そうですね、慎重にいきましょう。



慎重に進んでいくナギサ達。

ナギサは"オートマッピング"で地図を作成している。

その為、広範囲を"サーチ"しているが、魔物やトラップの反応が全く無い。

そして廃神殿が長い。

下へ下へと続いていく。


(王都ギルド主任 ノルン)

まだありますね、もう10階層になりますよ。


(ナギサ)

どこまで続くんだろ?

今のところ、"オートマッピング"で地図も同時に作ってるけど、階層は広くはなってないけど、狭くもなってない。


(王都ギルド主任 ノルン)

すり鉢状ではないと。


(ナギサ)

まだそうじゃないね。



更に進んでいくナギサ達。


(王都ギルド主任 ノルン)

まだありますね、次は100階層です。


(ナギサ)

ですね、ここまで真っ直ぐです。


(王都ギルド主任 ノルン)

底が分かりませんね。


(ナギサ)

そろそろ終わってくれないと、魔物が出た場合、狩りきれないですよ?


(王都ギルド主任 ノルン)

単独パーティーでは潜れないですね……


(ナギサ)

冒険者用の転移魔法陣を設置します?

指定階層に一気に飛べるように。


(王都ギルド主任 ノルン)

そうですね、そういう対策が必要ですね。



100階層に突入する。

調査すると、これが最下位層のようだ。

最奥に広い空間があり、床に魔法陣が描かれてあった。


(王都ギルド主任 ノルン)

これは……


(ナギサ)

ちょっと待って!

触れは起動する!



触れないように気をつけながら魔法陣を調査する。


(魔道士:男装)

これは召喚魔法陣かもしれません。

ただ、この世界の物では無いかもな。

多分文字だろうが、我々の文字ではない。


(ナギサ)

古代の文字とかではなくて?


(魔道士:男装)

可能性もなくは無いが、我々魔道士が知る文字ではない。


(ナギサ)

起動した途端に飛ばされたり、魔物が溢れたり。


(魔道士:男装)

可能性はある。

何が起こっても不思議ではない。


(ナギサ)

なら、とりあえず壊します?

それから詳しく調べるとか。


(王都ギルド主任 ノルン)

それが良いかもしれないですね。


(ナギサ)

なら、壊します。

 【クラッシュ】



魔法陣に亀裂が入り、壊れた。

そしてギルマスに連絡がいく。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

分かった、そっちに向かう。



ギルマスが到着するまで監視を立てながら、異世界料理で盛り上がるナギサ達。

100階層も降りてくるには時間がかかる。

ギルマスが到着する。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

お前ら……良いよなぁ……


(ナギサ)

じゃ、お仕事しますか。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

オレにも何か食わせろ。


(ナギサ)

はいはい。



ナギサは齧ったピザを渡した。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

食いかけかよ!


(ナギサ)

いや、何かって。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

ちゃんとしたのにしてくれ!


(ナギサ)

はーい。



ナギサは"のどぐろの煮魚定食"をポチッた。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

うひょっ!ダンジョン内で煮魚定食が食えるとはな(嬉)



一息つくと調査を再開する。

説明を受けるギルマス。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

なるほどな。


(ナギサ)

どうする?

封印する?起動させる?


(王都ギルドマスター ミレンナ)

そうだなぁ……どんな魔法陣だ?


(ナギサ)

お・楽・し・み♡


(王都ギルドマスター ミレンナ)

言えよ!要らねぇ〜よ、そんなサプライズ!


(ナギサ)

文字はこの国のでは無いんだって。

魔道士も知らないって。

で、時空を弄る事が描き込まれているから、世界を渡る魔法陣やね。

ただ、その異世界がどんなのか分からない。

場所も分からない。

渡ったり、繋いだら、ブービートラップでいきなり魔物が溢れるかもしれない。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

魔物が溢れたら?


(ナギサ)

真っ先に逃げる!


(王都ギルドマスター ミレンナ)

なんでだよ!逃げるなよ!戦えよ!お前が最大戦力だよ!


(ナギサ)

魔物の強さが分かんない。

その異世界なら、ボクは瞬殺されるかもしれない。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

た、たしかにそれは言えるか……


(魔道士:男装)

ギルマス、魔法陣は写しました。

研究ならできます。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

そうか、なら、念入りに破壊して封印だな。


(ナギサ)

分かった、直して起動ね。


(王都ギルドマスター ミレンナ)

なんでだよ!人の話、聞けよ!



という事で、ナギサは念入りに破壊して厳重に封印した。


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