第42話:その頃のアメリカ合衆国(ミスの手術完了、手術跡が目立つようならばご指摘ください

 ルーズベルトがすでに死去したことは冒頭の項目に記述したが、その後ランドンが後代のアメリカ合衆国大統領選挙に重大な忠言を残したことによってある人物が大統領選に挑んだ結果、見事復権し雪辱を果たした人物が存在した。……ハーバート・フーバーである。

 そして、フーバーが第二次政権を築き始めた折、アメリカ合衆国はかなり妙な国勢となっていた。それは、一言で言い表せばマクロ経済的には不景気に突入しつつあったにもかかわらずミクロ経済的には未曾有の好景気に突入しつつあった、ということである。では、なぜそのように矛盾した経済状況出会ったかといえば、だが……。

「大統領、今の状況はどう表すべきなのでしょうかね」

 ある側近が大統領、フーバーに対してこの奇妙な現状を、決して悪くはないのだが科学的に奇っ怪な現状に対して、何かを進言しようとした。そして、大統領もまた奇っ怪な現状を不可思議にに思っているのは間違いないようで、確認を取った。

「……国民は、今の状態を不満だと思っているか?」

「いえ、どうやら……そもそも現在を不景気だと思っていない様子で。ワシントン・ポストのような高級紙だけではなくハースト系などのゴシップ紙も、現在を好景気か不景気かと問うアンケートをとっているようですが……何度とっても好景気の方が圧倒的多数を占めるらしく……」

 側近も大統領も疑問視している現状というのは、マクロ経済学とミクロ経済学といったように経済学が二分されている意味の骨子たる現象が現状であることがあった。

「……不思議なものだな。経済的成長は鈍化しているのだが」

 ……まあ、要するに、アメリカ合衆国は戦争をしていないことで急激な経済的燃焼こそしていないものの、国民消費は向上しており、つまりは、合衆国上層部は経済成長が鈍化していると感じているものの、国民感情としては現在は好景気である、と捉えている、というよく分らない状態であった。読者世界で例えるならば、感情面において令和現在の日本の逆と言えばわかりやすいだろうか。

 とはいえ、本来政治家とは国や民の隷奴たるべき存在である。それを忘れた者から、政治屋と揶揄される凡俗と化すのだが、フーバーはルーズベルトと違い、正しく政治であった。少なくとも、自身の人種的偏見や感情論のためだけにアメリカ合衆国国民に犠牲を強いるような行動は、特に慎むように心がけていた。

 そして戦争を行っていない関係上、反応兵器などの発明こそ鈍化していたが、その分国民に本当に必要とされる医療技術などが発達しており、アメリカ合衆国本土限定ではあるが適切な医療さえ受ければ結核が死病ではなくなったほどであった。

 さらに、その結核用抗生物質を輸出することにより未曾有の利益も享受できており、天然痘に続き結核が撲滅宣言対象になるのも時間の問題、かもしれなかった。

 つまりは、アメリカ合衆国はこの絶好の機に着々と下からの国力向上に成功していた。皮肉なことに、それは同時期の読者世界におけるアメリカ合衆国よりも、遙かに健全かつ効率的な上昇であった……。

「まあ、何にせよ国民が不満に思っていないから復権できたわけだが……」

 フーバーは、運の悪い人物であった。もちろん、大統領まで務めただけでも運は良いのかもしれないが、せっかく自分がまとめた作業をルーズベルトに簒奪されたという意味において、読者世界において彼以上に運の悪い政治家というものはかなり限られるだろう。ある意味、同じく読者世界で例えるのならフランスのペタンがそれに匹敵するかもしれなかった。立場も、ペタンはドゴールに簒奪されたという意味であれば、同じかもしれなかった。

「可惜今民主党に舵を渡して戦争を起こさせる訳にはいきませんからな。それに、外でのみ戦争が起こっている分には何の問題もありませんから」

 アメリカ合衆国という国家は、なぜか定期的に引きこもり思想を呼び起こすことがあった。それは、共和党・民主党を問わずそうであることがあった。ましてや、現状は引きこもっても収入が入ってくるのである、ルーズベルトのようなを避けたとしても問題ないほどである、それは順当な結果であった。

「……あまり、死者へ鞭を打つ行為はやめたまえ。無残な死だったかもしれないが、敬意は表するべきだ」

 そして、フーバーは現状の解析に一定の何かを得たようで、今は待ちの戦術をとるべきだと判断したらしく、趣味に打ち込むことにしたようだ。

「はあ。そういうものでございますか」

「ああ、そういうものなのだ」

 ……意外なことかもしれないが、彼はルーズベルトに対して、ポーズだったとしてもある種の敬意を表していた。それは、歴史の皮肉といえるものかもしれなかった。あるいは、市民の支持率を維持するためのものかもしれなかったが、それは真実となる。

 或いは、真田信幸も徳川家に対して、同じくをしたという意味では同じ気持ちだったのかもしれない。

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