ー2章ー 17話 「森の恵みと、異世界の海」

舗装部隊が村の近くをせっせと工事するなか、俺はふと思いついて、隣で家畜の世話をしているナツキに声をかけた。


【リュウジ】「なあナツキ。お菓子とか、スイーツみたいなのって作ったことある?」


【ナツキ】「え? う、うん。好きでよく作ってたよ。……どうして?」


ナツキは額の汗をぬぐいながら、不思議そうに首をかしげる。

その反応に、俺はにやりと笑った。


【リュウジ】「実はさ、ロックゴーレムがいた森でサトウキビみたいな植物を見つけたんだ!あれ、村で栽培できたらって思って」


それを聞いたナツキの目がぱっと輝いた。


【ナツキ】「それ、すごいじゃん! 甘いものって元気が出るし、村の特産品にもできるかも!」


ナツキの乗り気な様子に、俺も嬉しくなった。


【リュウジ】「じゃあ決まりだな。スライムも増えたし、森に行こう。スライムにサトウキビを食べさせれば、村で増やせるかもしれないし!」


こうして俺はナツキ、それにスライム数匹を連れて、ロックゴーレムのいた森へ向かった。


到着してすぐ、1匹のスライムがぴょんと跳ねて、サトウキビをパクリ。


【スライム】「ぷるんっ」


どうやら美味しかったらしい。

体をくねくねさせながら喜んでいる。


【ナツキ】「かわいい……! でもちゃんと育つかな?」


【リュウジ】「きっと大丈夫さ。だって、スライムはなんでも育てる天才だからな!」


軽口を叩きながら、俺たちは森の奥へと足を踏み入れた。


すると――


【リュウジ】「……おいおい、マジかよ……」


そこには、信じられない光景が広がっていた。

小豆、トウモロコシ、ブドウ、メロン、モモ、カボチャ、ダイズ、コショウ――

まるで宝物みたいに、色とりどりの作物が自生していたのだ!


【ナツキ】「ここ、すごい……季節に関係なく自生してる……!」


【リュウジ】「そうか!あまり詳しくないけど、植える時期があるもんな!ってか自然の摂理無視かよ!……さすが異世界」


【ナツキ】「もし、村で育てても同じように育つなら、食もそうだけど飼料も安定するかも!」


ナツキも感嘆の声を上げる。

俺たちはしばらく、興奮しながら森を歩き回った。


そんなとき──ふわりと潮の香りが漂ってきた。


【リュウジ】「……ん? これ、潮の匂いじゃないか?」


【ナツキ】「え?……本当……磯の香りする!」


胸が高鳴る…まさか、この先に──


俺たちは藪をかき分け、香りのする方へと急いだ。


そして──


【リュウジ】「うおおおおお!! 海だああああ!!」


目の前に広がっていたのは、果てしない蒼の世界。

優しく打ち寄せる波、潮風、きらめく水面──まぎれもない、本物の海だった。


【ナツキ】「……すごい……こんな近くに海があったなんて……」


転生して以来、荒野しか見ていなかったせいか海という存在すら忘れていた。


しばらく俺たちは言葉もなく、海を見つめた。

この世界に来て、こんなにも美しい景色に出会えるなんて思わなかった。


【リュウジ】「……よし、決めた」


【ナツキ】「え?」


【リュウジ】「いずれここで塩作りや釣りでもして、海の幸を手に入れよう!」


ナツキはにこっと微笑んで、頷いてくれた。


海から吹く潮風が、俺たちの背中を押すように、やさしく吹いていた──。

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