ー1章ー 29話 水と希望の狼煙(のろし)

数日後。

村は威勢の良い声が飛び交い、活気に満ちていた。

川の整備工事が、ついに最終段階を迎えたのだ。


【リュウジ】「あと一歩だな……よし、今日で決めるぞーー!」


リュウジの声に、村人たちが頷く。

ミズハ村の人々も駆けつけ、皆で協力して土砂を整え、川の出口を固めていく。


【村人A】「よしっ、これで堤防の補強も完了だ!」


【村人B】「水路の歪みも直しましたーっ!」


ミズハ村でも………


【タケト】「よし!残り1件だ!これでミズハ村の家が全部完成するぞ!!」


【ガンジ】「ついにここまできたか!半ば諦めておったが………うぅっ」


【村人A】「ラスト、俺の家、頼んだぞ!」


【タケト】「おう!任せておけ!」


作業は最終盤を迎え、ウルフ車は何度も往復して土や資材を運び、スライムたちがぬちゃぬちゃと川沿いに緑を生やす。


そしてついに、川とミズハ村が息を吹き返したのだった。

ミズハ村の人々は、工事の成功を見届けるため、トリア村に集結していた。


無事にやり終えたリュウジは空を見上げた。


【リュウジ】「……よし。行くぞ!」


準備していた狼煙台に火を点け、白煙が空高く舞い上がる。


――それは、山のドラゴンに向けた合図。


数分後、遠くの山から「グオオォォォ……!」という雄叫びが響き渡る。

そして、轟音とともに――


大量の清らかな水が、山から勢いよく流れてきた!


【村人C】「き、来たぞぉぉぉぉ!!」


【ガンジ】「こんなに美しい水が……また、戻ってくるとは……!」


水は整えられた川を滑らかに流れ、ミズハ村を越えてトリア村へと繋がっていく。

泥まみれだった川が洗い流され、まるで命が甦るようだった。


【リュウジ】「……成功、だな!」


スライムが「ぷるるっ」と跳ね、足元のぬかるみで喜びを表す。


川沿いに立ち尽くすミズハ村の村人たちは、涙ぐみながら手を取り合った。


【村人D】「これで……やっと、生活が戻るんだ……!」


【じいさん】「リュウジ……お主がいなければ、この奇跡はなかった。本当に、ありがとう」


【リュウジ】「いや、俺だけじゃない。スライムや、ウルフや、みんなが一緒にやってくれたからだよ」


その言葉に、双方の村人たちはまた感極まり、拍手と歓声が広がる。


そして、誰かが言った。


【村人E】「祝賀会だ! イモだ!! 祝うぞー!!!」


【タケト】「やっぱイモか……いや、俺も食うけど!」


こうして、トリア村とミズハ村の合同祝賀会が開催されることとなった。


魔物とイモと努力の結晶が、今、一つとなって実を結ぶ。


そして、その日が終わる頃、村のどこかで誰かが囁いた。


【???】「これは、スゴいものを見せてもらった………すぐにあの方へ報告せねば!」


歓喜とはうらはらに、怪しげな動きがあるとは知らず時は流れるのであった………。

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