ー1章ー 24話 「湯けむり、希望の湧く地」

カーン、カーン……ザクッ、ザクッ……


リュウジは今日も汗をぬぐいながら、黙々とスコップを振るっていた。

川の整備作業も、ついに半分を越えたあたり。

川幅を広げ、深さを整える作業は予想以上に骨が折れるが、着実に水の通り道が形成されていた。


【リュウジ】「……ふぅ、やっと半分か。まぁ、地味だけどやりがいはあるな!」


休憩を取ろうとスコップを置いたとき、ミズハ村側から歩いてくる人影があった。


【リュウジ】「お、タケトじゃん。どうした?」


【タケト】「様子を見にな。思ってた以上に進んでるな!すげぇよリュウジ」


【リュウジ】「まあ、ウルフ車の協力がなければ無理だったけどな」


川の工事で出た残土を何度もミズハ村まで運んでくれる頼もしい仲間が、この途方もないと思っていた作業に、希望をもたらしている。


【リュウジ】「ミズハ村の方はどうなんだ?残土バンバン運んでるけど……順調か?」


【タケト】「ああ。お陰で高台も仕上がってきたよ!今は仕上がった所から、基礎と家の土台作りをしているところだ。もう少しで皆の家をハンマーで直してあげられる!」


【リュウジ】「おお!!もうそんな事になってるのか!?タケトもスゴいな!」


二人で地べたに腰を下ろし、水筒を回し飲みしながら雑談していると──


【タケト】「……あれ?ちょっと待て。あそこ……湯気、出てねぇか?」


【リュウジ】「えっ?……ホントだ、何あれ……水じゃないよな?」


二人は不思議に思いながら、川の傍にある小高い窪地へ向かって歩き出す。

近づくにつれて、確かに地面から“もわっ”と湯気が立ち昇っていた。


【リュウジ】「これ、地熱?……いや、でも何でこんな場所で?」


【タケト】「……こういうのは、叩いてみたら分かるんだよなぁ」


腰からハンマーを引き抜き、地面の中心に立つタケト。


【リュウジ】「おいおい、マジでやるのかよ?」


【タケト】「女神のスペシャルハンマーだからな。信じてみるさ……はあっ!」


 ゴンッ!


 タケトが地面に一撃を加えると──


 ドゴォォォッ!!!


突然、勢いよく地面が割れ、お湯が噴水のように吹き出した!


【リュウジ】「わあぁぁぁ!? 熱っ!? って、温泉!? これ温泉じゃんかよ!!」


【タケト】「な、なんだよコレ!? マジで出たぞ温泉!!」


噴き出したお湯は、たまたま地形的に大きく窪んだ場所に流れ込み、みるみるうちに天然の湯船が完成していく。


【リュウジ】「うわー……もう、これ村の新名所じゃん……」


【タケト】「いや、マジで奇跡だなこれ……」



後日、二人はじいさんに相談し、温泉整備のための木材や道具をウルフ車で運搬。

タケトの設計を元に、仕切りや脱衣所を設置し、簡易ながらも立派な温泉施設が完成した。


【リュウジ】「まさか温泉が手に入るとはな……労働のあとの癒し、完璧だな!」


【タケト】「これ、ミズハ村とトリア村の中間だし、どっちの村も使えるな」


【リュウジ】「よし、じゃあ二つの村に伝えよう。“今日からこの温泉、解禁です”ってな!」



こうして、村人たちは湯けむりに包まれた癒しの時間を手に入れた。

そして再び、二つの村に人の往来と笑顔が戻ってくることとなる。

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