転生した元賢者は、正体を隠しながら平穏に過ごしたい

@fubki-san

第1話 賢者の死と転生

「賢者」カリス・フラジール


彼は、最強に相応しかった。


全盛期をとうに過ぎ、衰退の一途を辿っていたこの魔法社会を立て直し、誰も冠することが出来なかった魔法使いの中でも最上位の称号、「賢者」の名を冠した最強の魔法使いであり、国民の中では伝説の存在となっていた。


彼が「賢者」になった事は全世界に一瞬で伝わり、世界中からカリスの弟子に志願する者たちが続々とカリスに押し寄せ、その志願者達のあまりの多さにカリスは全員に試練を課すことにした。


その試練の内容としては、最初は基本的な魔法をどれだけ安定して出せるかやその威力、その魔法の範囲など、色々を試練として課し、達成出来なかった者は脱落という条件で数々の挑戦者がそれに挑んだが、最終的にその人数は10人になり、カリスはその10人だけを弟子にする事に決める。


その日から、10人を最強の魔法使いに育てるためにカリス達は毎日のように修行を重ねた。


そして...5年後。


弟子達はこの5年の間で急成長を遂げ、皆がカリスの元から旅立って、独り立ちした。


世界最大の魔法使いギルドのギルドマスターや一国の王、魔法使いだけで構成された勇者パーティーのメンバーに選ばれる者など、みんなが何かしらの形で世界的に有名になった。


(この5年間は、幸せで、みんなでご飯を食べたり、遊んだり、当然...修行もしたけど、楽しかった...)


そんな事を、病に伏せるカリスは思っていた。


「あれから...もう5年か...」


毎日の様に血を吐き、もう魔法に体が耐えきれなくなって、「賢者」だった頃の自分とは考えられないほど弱っていく。


歩く事すらままならず、ご飯も喉を通らない、水だけが生きる糧で、体ももうガリガリになってしまった。


そんなある日、水を飲むために立ち上がろうとするが、体の感覚が無くなり、膝から崩れ落ちてしまう。


痛みで立ち上がれないカリスは、静かに終わりを悟り、静かに声を漏らす。


「もう...限界か...」


そんな言葉を呟いて、カリスは最後の力を振り絞って、弟子達と一緒に住むために魔法で建てたこの家に、魔法で火をつける。


火はすぐに燃え広がり、熱いなどという感覚もなくなり、程なくして目を閉じる。


この瞬間、「賢者」カリスの人生は終わりを告げた...



...はずだった。


今、何故か...


「知らない...洞窟の中に...裸...って...なんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!?」


状況が理解できない、なんで俺はこんな格好でここに居るんだ?まずここはどこ?というか俺死んだはず...?


...とりあえず、内容を整理しよう。


・俺は全裸

・外は晴れてる

・ここはどこ?


この3つしか分からない...


と、その時、驚く程の轟音が響き渡り、超巨大な火球が空から降ってくるのが見えた。


「なっ...!?」


俺は全裸ながら一瞬で戦闘態勢に移行しようとして、杖を出そうと空に手をかざす。


...だが、杖は一向に出ること無く、火球は降ってくる。


「や、やばい...あんなのが落ちたら...」


落下点が森のど真ん中と言うこともあり、落ちれば間違いなく超大規模な山火事間違いなしである。


「ちっ...なんか...出来ることは...!」


その場で出来ることを模索するが、全く見つからずに、火球がもう落ちるという所まで来てしまった...と、その時!


飛行魔法で超大勢の魔法使いが、その火球に向かって来ていた。


彼等は冷静に火球を処理し、処理し終わった後に、何故か俺の方に向かってきて、一瞬で拘束魔法を掛けられた。


「え?ちょ、ちょっと!?」


「黙れ!全裸で何をしていた変態め!!」


「へ、変態ぃ!?」


「明らかに変態だろう!!」


俺は反論しようとしたが、結局拘束されたまま、王都に連行されることになり、その道中で、ある言葉を聞く。


「なんでこんな子供が...?」


「いや、分からん...でもとりあえず連行するしかないだろう...」


そう聞いた瞬間、俺は改めて自分の姿を見てみると...縮んでるぅ!!?


そんな自分の姿に声が出ない時、横にいた女性が話しかけてきた。


「ねぇ、君...何処からここに来たの?」


それを聞かれた瞬間、頭の中でその質問が反芻した、確かに...俺死んだはずなのに...なんでこんなところに...しかも体も縮んで...


その時、俺はあることも一緒に聞かれる。


「君...名前は...なんだい?」


名前...そりゃ名前っていえば...


「カ、カリス、カリス・フラジールです...」


そう言うと、その魔法使いの集団は絶句し、ザワザワし始めた。


「伝説の大賢者様の名前だと...?」


「名付けることは禁じられているはずだぞ...?」


それを聞いた瞬間、俺は咄嗟に口からある質問を発した。


「今って...「賢者」カリスが死んで...何年...経った世界...なんですか?」


その質問をしたことで、俺は色々な情報を得る事になる。


この世界は、俺が死んでから10年経った世界で、この時代では、俺の名前を付けるのは世界中で禁止となっているらしい。

そして、俺の弟子達は世界各地に散らばり、各自で各々活動をしている。


それから、俺の杖などは国宝とされているらしく、どんな魔法からも守られる防護壁の中にあるらしい。


あの時に放火した事が原因で、杖以外は骨すら残らず燃え尽きてしまったとのこと。


そんな話をしながら、とりあえず服を着させて貰って、何とか全裸じゃなくなった後に、俺は色々質問される事になる。


「君、親は?」


「親...?い、居ないです...」


「なら、なんであんな所にいたの?」


「え...わ、分かりません」


そこから、幾つか質問をされた後に、俺は解放され、とりあえず貰った放浪者のような格好をして、行き先もなく歩いていると、大勢の人だかりを見つける。


その人だかりは何かを囲んでいて、人混みを掻き分けて進むと、見覚えのある2人がいた。


「メリア!!今日こそ決着付けるぞ!!」


「ええ!!かかってきなさいアルガ!!」


何と、俺の弟子であるメリアとアルガが、こんな王都のど真ん中で決闘をしていたのだ。



















































































































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