第4話

いおりは静かに病室の片隅に立ち続けていた。

 彩香はベッドの上で目を閉じ、時折痛みをこらえるように眉をひそめていた。


 「ねぇ、いおり」


 突然、彩香が声をかけた。いおりはそっと振り返る。


 「君は、ずっとここにいるの?」


 その問いに、いおりは答えを探した。


 「私は、君の記録を回収するために来ている。でも、まだその時ではない」


 彩香は少し笑った。


 「それって、つまり……まだ死なないってこと?」


 いおりはうなずいた。


 「そう。君が最後を迎えるまで私は側にいるよ」


 彩香は静かに息をついた。


 「……死ぬのは怖い。でも、なんだか安心もしてる」


 その言葉に、いおりは胸の奥がざわつくのを感じた。


 「まさか、いおりが……死神が側にいてこんなにも落ち着くだなんて思わなかった」


 静かな病室に、小さな笑い声が響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る