ヒロイン④【B面】メスガキ美少女~混浴のお風呂で熱い演技指導!?~

 場面転換 秘密基地の別荘内(お風呂)


 //SE 洗い桶に勢いよく水が流れる音。蛇口を閉めた後でシャワーの音が反響する。


 「……お兄ちゃん、波音はのんだけど中に入るよ。あれっ? 聞こえていないのかな?」//脱衣所からくぐもった声


 //SE 引き戸がゆっくりと開けられる


「……お邪魔しますね」//声が次第に近くなる。


 //SE 風呂場の床を歩く湿った足音。


「えへへ、お兄ちゃんが火傷していないか心配で、確認に来ちゃった」


「一緒にお風呂に入ってもいいでしょ?」//甘えた口調


「子供の頃はよく一緒にお風呂に入ったよね。お互いの背中を流したりしたっけ……」


「……懐かしいな」


(こちらの背後に立つ)


「わわっ、お兄ちゃんの背中、おっきくなってない? 私の手のひら、何個ぶんかな。 久しぶりに波音のお手手ててを使ってはかってみようかな」


 //SE 手のひらでぺたりと背中を触る音。


「いっこ、にっこ、さんこ」//リズミカルに


 //SE 背中にふれる濡れた手の音


「お兄ちゃんの背中の筋肉。すごく固くこってるよ!? まるでカチカチ山の狸さんみたい」


「そう、狸さん。子供の頃、お兄ちゃんとお風呂で歌った曲の歌詞覚えていない? 私が出演していたキッズ向け情報番組のテーマソングだったね」


「長旅お疲れ様。こんなに筋肉が固くなるなんて私のために無理させちゃったね」


「お詫びにお兄ちゃんの背中、洗ってあげるね」


 //SE ボトルをプッシュする音。タオルで泡立てて背中につける音


「……背中が固くこってるのが、タオル越しの指先にも伝わってくるよ。よし、私が筋肉をほぐすマッサージをするね」


 //SE タオルで背中を拭く音に続いて揉み手でマッサージする音(※数回くり返し)


「……」


「あんまりカチカチすぎて、狸さんの歌詞みたいに、ママのミルクを呑んで、ねんねしなきゃだめかもね」//耳もとで甘いささやき


「お兄ちゃん、後で一緒にねんねしよっか? ……なんて、大胆すぎる発言ね」//甘えた後に思わず苦笑してしまう


「お風呂場の熱気にあてられて、何だかのぼせちゃたのかも」


 //SE 風呂桶や椅子がお風呂場の床を激しく転がる音 水がこぼれる音も重なる。


「お兄ちゃん、何で逃げるの!! お風呂の 椅子から転げ落ちて、怪我をしちゃうよ」


「えっ、大人しい波音からまた豹変ひょうへんしたって!? 私はまだ役柄になりきっていないのに……」//後を追いかけて声も近くなる



「えええっ、何で後ずさりしながら慌てて逃げるのぉ? こ、この、弱虫!! お兄ちゃんって、結構ザコキャラっぽいかも」


「ふうっ!! 妙に身体が熱いかも? 服を着たままだから蒸すのかな」


「はぁ、ふうっ!!」//呼吸が荒くなる


「……すうっ、はあっ~」//大きく上半身で伸びをしながら深呼吸。役柄になりきる動作が始まる。


 //SE ゴゴゴゴゴ、とお風呂場で何かが発動するような効果音


「ドラマ【鍵なし子】のヒロイン、メスガキ美少女になあれ!!」//お風呂で声が壁に反響する


 //SE  かちりと切り替わる作動音


「憑依完了」//声色がメスガキ風に変化する


「……」


「ろ、籠城ろうじょうするからかぎをくれっ!!」//ドラマの決めぜりふも堂に入った物になる


「きゃははは!! 下僕なお兄ちゃんのざ~こざこ!! ちょっと女の子に背中を触られたくらいで、ぶざまな悲鳴をあげちゃってさ。かなり幻滅なんですけど~~!!」


「えっ!? 波音はやっぱり憑依型の女優だったの? って、あんた何を訳の分からないこと言ってんの!!」


「今の私はどこをどう見てもメスガキ美少女小学生じゃない、下僕の分際でほんとに失礼しちゃうわ。」


 //SE 声と一緒に濡れた床を歩く音 次第に近くなる。


「ちゃんと椅子に腰かけて背中をこっちに向けなさい。男らしいところを私に見せてちょうだい」


「ありがたく思いなさいよ、今日の私はとても機嫌がいいの。下僕なお兄ちゃんは命拾いしたわね!!」 


「元天才子役から特別に演技の個人指導してあげるね」//背中越しから声が次第に耳元に接近


 //SE 衣擦れの音、柔らかな身体が背中に押し付けられる音


「さあ、もっと肩の力を抜くの。筋肉がカッチカチのままじゃあ、上手な発声は出せないんだから……」//耳もとで吐息混じりのささやき


 //SE 衣擦れと共に後ろから首に腕を回す音 服越しの身体が密着する濡れた音。


「 へ、変な勘違いしないで。これはバックハグじゃないからね!! 発声練習を兼ねた、演技のエクササイズなんだから、私だって厳しいレッスンを経験したの。抱きついた格好はあくまでカリキュラムの一環なの!!」


 //SE きゅうっ、と強く抱きすくめる腕の音。濡れた身体が密着する音も。


「えっ、台本がないから、ぶっつけ本番のアドリブは無理だって? めっちゃ甘いわね、お兄ちゃん。発声練習のセリフは、私が決めるから待ってなさい!!」


「……」//しばしの沈黙。


「そうだ、せっかくのチャンスだから、にしちゃおうかな」


 「ねえ、お兄ちゃん。……私への気持ちを台詞せりふにしてもらってもいい?」


 //SE 次第に背中に感じる心音が高まる。


(やってみる、と了解するお兄ちゃん)


「ありがとう、やってくれるのね!! 」


「……すうっ、はあっ」//耳元で深呼吸を繰り返す波音。


「はあっ、はあっ」//熱い吐息混じりの声。


 //SE 高まるお互いの心音。


「……」//お互いの気持ちも高揚する。


「じゃあ、ご褒美に波音が取っておきの呼吸法を教えてあ・げ・る」


「はーい、大きく深呼吸して。そこでいったん息を止める。‎‎ふうーっ、と大きく息を吐く。そうそう、お兄ちゃん、リラックス、リラックス……」


「深呼吸を繰り返して。‎‎ふぅー.!! はぁー!!」


「……あっ、背中の力が抜けたよ。もうカチカチ山じゃない。セリフを言うなら今だよ!!」


「はいっ、本番。アクション!!」


(お兄ちゃんが自分の気持ちを伝える)


「えっ……」//波音の驚きの感情を、吐息混じりで。


 //SE かちり、と元の波音に戻る作動音


「……お兄ちゃん」//セリフを聞いて思わず感極まってしまう。もとの波音に声色も戻っている。


 //SE 背中越しに押し付けられる身体と回した腕の力がよりいっそう強くなる。


「演技指導なんて、見えすいた嘘をついてごめんなさい。波音はね、やっぱり女の子だから、はっきりとしたお兄ちゃんの言葉が、どうしても聞いておきたかったの……」//甘えるような口調で。


「普段の私にはとても言えない大胆なセリフも、役柄を借りれば平気で言えちゃうの。えへへっ、女優って職業も案外、悪くないのかもね」


「……」


「やっぱりこれはバックハグだね。玄関でのお返しに、波音からお兄ちゃんをぎゅっ、と抱きしめたかったの……」


 //SE お互いの心音かさらに高まっていく。密着する濡れた身体の音が重なる。


「やっぱり私、世界でいちばんお兄ちゃんが大好き……」


 次回に続く


 

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