第16話 ラドグリフは震撼する
入国後、俺達は四軍に配属された。
正直、当初悔しい気持ちもあったが、それはすぐ吹き飛んだ。
確かに俺個人で言えばこの程度は余裕だったが、団全体で言うと過酷とも言える鍛練量を日々課され、今まで築いて来たプライドが根元から折られていた。
それでも、それなりに名が知られていた【雷鳴団】の誇りを胸に過酷な鍛練に耐え、何とか団全体であれば三軍にもう少しで上がる事が出来そうになったある日、俺達に任務が下った。
噂の殿下の狩りのお供の一団として着いていくらしい。
任務の内容は殿下達が狩った獲物の回収をする事だ。
先日聞いた所によると八歳そこらのガキの狩りのお供で獲物の回収? 護衛でなく、あくまでも獲物の回収だと?
大方、ガキのお守りに屈強な者が着いて行く、お遊び見たいな狩りでもするんだろう。
――――――――――
「皆さん、今日はお付き合いいただきありがとうございます。
今日は少し奥まで進むので、皆さんは前に出ずに、あくまでも獲物の回収に専念してください。
万が一、魔物に襲われた際は倒そうとせず、安全第一で耐えてください。
すぐに駆けつけます」
双子を一回り大きくした様な偉丈夫の肩に乗り、朗らかに語る妖精の様な子供が噂の殿下だった。
やはり予想通りお遊びの狩りのお供なんだと嘆息したのも束の間、
「今日はオークを狩りに来たんじゃないんだけどなぁ。
でも、美味しいからいいか[レイ]
すみませーん、回収お願いしまーす」
……はっ? 何だ今の? 一瞬でオークが十体程倒れたが?
回収の為にオークを見ると見事に眉間を貫かれている。
魔法……なのか? 全くわからない。
これが物語で読んだ幻影魔法だと言われた方が余程納得がいく。
何をしてこうなったんだ?
更に狩りは続く。
「おっ、いたいた♪
じゃあ叔父上、行ってきますね♪」
殿下が巨漢の肩から飛び降りオーガに向かって行く。
オーガだぞ? さっきの魔法? では無く何故向かって行く?
何故、巨漢も笑顔で見送っている?
何だあれは? マジックバッグから殿下の背丈より長い金棒を取り出しオーガ達に、踊り掛かって行く、の、か?
「ヒィィヤッハーーー!」
一体目の頭を金棒で潰し、振り返り様にもう一体を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばす? あの小さい体で? その後も次々とオーガを容易く屠って行く。
最後の方は逃げようとするオーガを魔法で仕留め、泣いて命乞いをするオーガを笑顔で殺して行く……。
何だこれはっ! 本当に八歳なのか!?
と言うより、大の大人でもあんな事出来るのか?
瞬時に一人でオーガを二十体だぞ?
嗚呼、双子の話は嘘じゃなかった……。
八歳にしてこの強さを持っているって何だよ!
双子がもし、自分達が殿下と戦ったら何も出来ずに死ぬって言ってたのは、弟可愛さからじゃなくて、言葉そのままだった!
世の中に上には上がいるって言うが、上過ぎる……。
これが次代の王か……俺如きが目指すもんじゃないな。
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