第2話 最強災厄の悪役転生
ある早朝、近藤雅都は目を覚ました。
(ん?なんだ、俺はたしか電車に轢かれて死んだんじゃなかったのか。てか、ここどこだ?俺、どうなっちまったんだ)
彼が目を覚ますと、見知らぬ空間が広がっていた。数分間思考が停止した後、我に返った雅都はどこか、既視感を覚えた。
(ん、待てよ。この光景どこかで見たような?)
コツ、コツ
彼は誰かが来たかと思い、即座に寝たフリをする。
「ほんっと、ここで働くのは給料がいいけど、ゼフィルス家ってのは血の気が多い人ばかりで嫌になっちゃうわぁー」
「ちょっと!しー、ここの家の人に聞かれたら殺されちゃうわよー。ただでさえ、私たちメイドの命なんて、虫けら同然なんだから」
メイドなのか。そう思った雅都は一つの単語に引っかかった。
(ゼフィルス家、だと…)
そう、ゼフィルス家。なぜ、この単語に彼が引っかかったかというと、彼が作ったゲーム
(この世界は俺が作ったゲームの世界なのか、それとも、たまたま、ゼフィルスという名前が被っただけなのか)
雅都は率直な疑問を心の中で呟いたが、その答えはすぐにメイドの口から判明した。
「さあ、今は愚痴を言ってないで言われた通り、ルーク様のお世話をしましょ」
「はいはい、わかったわよ」
(は?ルーク…?つまり、ルーク・フォン・ゼフィルスのこと、か?)
愕然とした雅都は、一旦頭の中を整理する。
要するに、転生前?前世では、全てが思い通りにいかなかったただのゲームプログラマーが自分自身の手で制作したゲームの悪役一族の末っ子、ルーク・フォン・ゼフィルスに転生した、ということだ。
そして、ゲーム制作者だからこそわかる。なぜ、よりにもよってゼフィルス公爵家なのかと。ゼフィルス公爵家はゲーム内では飛び抜けたスペックを有する一族だ。まさしく、"大陸最強の一族"と言っていいだろう。
しかし、悪役と言うからには最終的には、正義が勝つ展開が大半であろう。そして、彼、近藤雅都が作ったこのゲームも例外ではない。最終的には史上最強災厄と評されたゼフィルス公爵家は、突如現れた主人公によって滅亡する。
つまり、このままシナリオ通りに行くと、またも彼は死ぬ運命にあるということだ。
誰もがその運命を知れば、嘆かずにはいられないだろう。彼もまた、そのようなことを嘆いていると、心の底から…
(クックックッ…クハハハハハハ)
笑みが零れてしまう。零さずにはいられない。
(これは夢か?夢ならば覚めないでくれ。折角掴み取ったチャンスなのだ。存分に楽しまなくては勿体ないだろう)
大陸最強の一族に転生したという事実。
そして、彼だけが、このゲームを一から制作した彼だけが知りうるゼフィルス公爵家の末っ子。
───"ルーク・フォン・ゼフィルス"という男の異常性をまだ誰も知らない。
(前世では常に奪われ続ける人生だった。だが、今世では違うぞ。奪われるくらいなら全て奪ってやる。兄弟だろうと、父だろうと、主人公だろうと、シナリオも全て壊して、根こそぎ奪ってやる。次こそ、幸せになるのはこの俺、ルーク・フォン・ゼフィルスなのだ。クハハハハハハ)
と、息巻いたが、現時点では「おぎゃあ、おぎゃあ〜」と言うことしかできないのはなんだかモヤモヤするな。
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