第7話
「気が付いたら使えるようになっていました。此の魔法には、治癒の魔法と、動物と話せるアニマルコミュニケーションと言う二つが一つになっている魔法らしいです。」
「いるらしい? 誰かに聞いたのかい?」
「鼠が教えてくれました。動物達の世界でも同じような話が数百年前から語り継がれているそうです。」
「鼠と会話? では、グレンはどうしたら鼠と会話が出来る様になったのかい?」
「僕が親方から追い出される時、親方の所で働いていた、リリアさんから食事を頂いたんです。そのままドラン辺境伯領を出て、森の入口の小屋で寝ている時に、入って来た鼠に、食事で残したパンを食べさせたら、元気になり、僕と会話が出来るようになったのです。今では、鼠だけでは無く、其処に居る馬達や鳥たちとも話す事が出来ます。先程奥様の居場所を教えてくれたのも、其処に居る鼠や鳥達です。」
「それじゃあ君は、もしかして其処の鼠や馬達だけではなく森の動物達とも会話ができるのかい?」
「はい、他にも沢山の動物と会話が出来ます。以前森で、皆様が野盗に襲われている事を教えてくれたのは烏達です。只、先日の輩はただの野盗では無いみたいです。目誰の指図か、もう少ししたら、分ると思います。」
「分かった。所で、アニマルコミュニケーションとはどういう魔法なんだ。」
「私も良く分かっていないのですが、鼠の長老の話では、数百年前からの動物達の言い伝えで、此の魔法が使える者から、食事や治療を受けると、その者と会話が出来るようになる。その時治癒の種を落とすから、種を植え薬草を育てると良い。と言う事らしいです。」
「その種や、薬草は分かるのかい?」
「はい、此方で食事を頂いた時に落ちた種が、一粒位は此処に多分有る筈…⁉ 在った。コレです。薬草はお庭にも少し生えて居ます。」
「え…⁉ 」
「厩に生えた分は、馬達が食べてしまうので余り見当たりませんが、種も鼠達が殆んど拾って何処かに持って行くので、あまり見当たりません。」
「その話は、私が祖父から聞いた話と似ているようだが、動物の事は知らなかった。」
「ん~~。在った。薬草も一本位残って無いか見ていたんですが、奥様の足元にあります。」
「此れかい?」
「そうです。」
「そう言えば、この草なら先程、此処に来る前に猫が美味そうに食べて居たような?」
「多分それだと思います。」
「何と、万能薬草が我が屋敷の庭に生えていたとは?では、我々を救けて貰った場所にもその種は落ちていたのかい?」
「恐らく、かなり落ちていたと思いますが、もう動物達によって何処かに運ばれているかもしれません。それと、今朝方の墓所にも落ちていたと思います。」
「そうか、漸く納得できた。」
「何が、でしょうか?」
「イヤ、此処数か月の間に、領民からの往診の依頼が減り、今では殆んど、言って来なくなっていたんだ。調べて見ると、今迄寝たきりになっていた者達も元気に畑仕事をしているようだし、農作物も豊作で品質も最高な物ばかりが出来、この領地の野菜は何処の野菜よりも美味いと、取引価格も上がっている。お陰で領民の収入が増え、税収も増えた、この辺境の地はとても豊かな領地に変わっていたのだ。」
「どういう事でしょう?」
「じつは、二か月程前この領地でも更に辺境の領民から、がけ崩れに会い、怪我をして動けなくなった牛に、道に生えていた草を食べさせたら傷が治り歩ける様になった。もしかしてと思い、その草を持ち帰り雑炊を作って、それを寝たきりの祖父母に食べさせたら、元気になり、野良仕事が出来るようになったと、さらにその草を畑の土に混ぜてから作物を育てたら、とても良い野菜が育った。と報告を受けて居たんだ。そしてその噂は瞬く間にこの領地の村々に伝わり、往診の依頼も無くなったんだ。」
「そうだったんですね。では鼠達が食事や治療で落ちた種を拾ってこの領地のあちらこちらに撒いているのかもしれません。」
「そうだよ、でも僕達は、烏達にあちらこちらにこの種を空から落として欲しい。と、お願いしただけなんだ。小さな生き物は直ぐに死んじゃうから。薬草は大切なんだ。動物は匂いで薬草か毒草か見分けるからね。」
ぼくは、鼠から聞いたことをそのままご主人様達に伝えた。
「そうなのか。みんなありがとう。」と鼠達にご主人様は頭を下げた
「所で、グレン君は父上の部屋から出る時、リバー子爵とドロミテ子爵にバーム伯爵に気を付けてと言っていたが、それはどういう事だったのかい?」
「それにつきましては、ケイト様もご一緒の方がいいかも知れません。」
「そうか、それなら、リバーが屋敷を下がった時がいいかも知れない。では、今夜、父上の部屋をもう一度尋ねてくれるかい?」
「分かりました。訪ねさせていただきます。」
「では今夜、父上の部屋で待って居るよ。」
その時馬達が、グレン早くここを出て。リバー様が此方に向かっている。と教えてくれて、鼠がこっちに隠れて。と厩の奥に出来た窪みに僕を隠してくれた。
その光景を見ていた、デイトス様達は、何かを察したようで、この場所では、何事も無かったかのように、三人で仲睦まじく、馬達を撫ぜたり、餌を食べさせたりしていた。
其処に、リバーが厩の扉を開け、中を見渡していた。
「デイトス様、此方に見慣れない少年が、入り込んでいる。と言う者が居たので、確認に来たのですが、ご存知在りませんか?」
「私達は、先程から馬達を見にきていたが、そんな少年は見て居ないが、ケンタ、何か気づいたかい?」
「イエ、父上いくら何でも、この場所に居てそんな少年が居たら気付きますよ。リバー、その者の勘違いではないのでしょうか?母上はどうですか?」
「私も気付きませんでしたよ。私がその者と話しましょうか?」
「イエ、皆様のお手煩わせることもございません。私が話して置きます。」
「では、リバー頼んだよ。」
「はい。今から話して参ります。」
「では、私達も屋敷に戻ろうか。ジェシー満足したかい?」
「はい、貴方。私の我儘に付き合って頂いて、ありがとうございます。ケンタも一緒に付き合ってくれてありがとう。とても嬉しい一日になりましたわ。」
「母上が喜んで頂けたのなら僕にとって、何よりです。」
「では帰ろうか。リバーはまだ此処に居るかい。」
「イエ、私もお屋敷に向かいます。」
そう言うと皆さんは、厩を出て行った。
暫くすると、ソフィアさんが夕食を抱えて入って来てくれた。
肩が凝った様子だったので、バスケットのお礼に肩もみしたら、肩こりが治り、その上痛かった脚も治ったそうで、ビックリしていたが、とても喜んでくれた。
その夜、ソフィアさんが突然、息子さんを連れて厩にやって来た。
一人で翌朝の食事の下ごしらえをしている最中に誤って指を斬り落としてしまったらしい。
「グレン、息子が、ドランが怪我をしたんだ、診てやって貰えないだろうか?」
「構いませんが、私でいいんですか? ご主人様にお願いしてみては?」
「いや。グレンに頼みたいんだ。」
「分りました。では診させて頂きます。」
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