第33話 制度再編編:双環の継承者、美凪の覚醒

魔導圧の沈静化から数時間後。

東京ドームの地下、旧式魔導管制室にて、美凪はひとり祈りの残響を辿っていた。


「……この感覚、私のものじゃない。けど、確かに“私たち”の記憶だ」


融合変身体美凪としての記憶は、彼女の中で再構築されつつあった。

その中には、卑弥呼の補佐科制度の原型となる“双環補佐術式”の記録が含まれていた。


凪が管制室に駆け込む。


「美凪!制度局が動いた!魔法少女制度そのものを“再編”するって……!」


美凪は静かに頷く。


「……来たね。祈りの裏側にいた者たちが、表に出る時が」


その瞬間、管制室の壁面に古代魔導文字が浮かび上がる。


> 【制度再編通知】

> 補佐科双環継承者の魔導因子が発現。

> 魔法少女制度に対する干渉権限を一時付与します。


「つまり……私たちが、制度そのものを“書き換える”ってこと?」


凪の声に、美凪は微笑む。


「ううん、“祈り直す”んだよ。

魔法少女がひとりで戦う時代は、もう終わる。

支える者がいてこそ、祈りは届く」


ふたりは手を取り合い、再び融合変身体美凪を展開する。

今度の術式は、制度そのものに干渉する“祈りの再定義”。


双環補佐術式リライト・コード、展開開始!」


空間が揺れる。

魔法少女制度の根幹にある“孤独な祈り”が、ふたりの手によって“共鳴する祈り”へと書き換えられていく。


その時、制度局長・茅場ヒロが姿を現す。


「……やるじゃん。祈りを制度にまで干渉させるなんて。

でも、俺は“孤独な英雄”が好きなんだよ」


美凪は静かに言葉を返す。


「英雄は、孤独じゃなくてもいい。

祈りは、支え合ってこそ、世界を変える力になる」


ヒロは一瞬、言葉を失う。

そして、笑った。


「……面白い。なら、制度再編の“最終試験”を始めようか」


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