第12話 束の間
…帰ってきた。
なんとか怪我の応急処置だけ済ませ、その後…ベッドに倒れ込む。
「…寝ようか、ロック。一旦、時間をおかなきゃ…この気持ちは、整理できない」
『…そうだな』
『…おやすみ、シュート』
「おやすみ」
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翌日。
『…ろ……きろって…!おい…そろそろ起きろ!』
顔に、何か質量を感じる。
俺は寝ぼけたまま、本能に従って。
顔の上にあるものを両手で包み込む。
『…ギャッ!?おい…シュート…お前…』
ゴンッ!
「…痛ぇッ!!」
ヒリヒリと痛む頭を抑え、飛び起きる。
「何するんだよ…そんな…悪いことかよ?」
『別に構わないんだけどよ、急に掴まれると反射で攻撃しちまうからやめてくれよな…頭突きに抑えただけでも褒めてくれ』
「なるほど…それは悪かった」
「それで、起こした理由ってのは」
『シュート、相当疲れてそうだし満足するまで寝かせてやろうと思ったんだけどよ』
『さっき12時になったとき、いろいろ情報が入ってきた。今後の動きにも影響するから、早めに伝えておこうと思ってよ』
「そういうことか。どんな情報が入ってきたんだ?」
『新たな情報は大まかに分けて三つ。次のタイムリミットと生き残りラインの発表、イベントの縮小化、そして…決闘システムの導入だ』
『まずは一つ目。次のタイムリミットは5日後。次のボーダーは…150位までだ』
「…あ、そうだ。今の俺の順位って…」
『シュートは今、147位に入ってる。昨日のイベントが、評価されてるみたいだ』
147位!…かなり…上がったな。
『…だが、このまま何もしない、って選択肢は取れないぜ』
『確実に他のプレイヤーが順位を上げてくる。何もしなきゃ一瞬で抜けれてく。それに…何もしないことは己の評価を下げることに繋がる』
『安寧ってのは俺らからしたらずっと享受していたいぐらいのもんなんだが…見てる側にとって、それは退屈なんだ。彼らは必然的に刺激を求める。…だから俺らも、挑戦し続けなきゃならない』
『まあそんなわけで、これからも頑張っていこーって感じだ』
『次に、イベントの縮小化だ。今までずっとイベントオンリーだった分、飽きが来たんだろうな。1日に1回に変更された』
『もう、今までのように人は集まらないだろうし、例えそこで勝ったとしても、大した金額の上昇には繋がらないだろうな』
『そこで、次に言う説明につながる』
『最後に、決闘機能の追加だ。これは、1対1で戦って勝敗を決めるものだ。参加者はお互いに何かを賭けて戦う』
「その決闘って、どうしたら始まるんだ?」
『決闘は、基本的には片方が誰かに申し込む形で行われる。基本的にはこのタブレットで操作する感じだな』
『それが成立した後…直接会って会場や何を賭けるのか、何で戦うかを指定して、その後決闘が行われる』
『ちなみに…自分より順位が上のやつからの決闘の申し込みは断ることもできるが…下のやつからの決闘は強制的に成立する。そこの所は、気をつけてくれよ』
「なるほどね。大体わかった。ありがとうな、ロック」
『…後』
『…あの時の約束覚えてるか?』
…なんだっけ。
『…昨日戦う前に俺が言ったやつだよ』
あ…思い出した。
「なんか1個お願い聞いてくれるって、やつだっけ」
『…そう』
『シュートは昨日、よく頑張った。あんな状況から、色々模索して、最終的にあんな勝ち方するなんて、俺も予想だにしてなかった』
「いや…あの勝利は俺だけのものじゃない。最後隙を作ってくれたのだってロックだったし…何より、あの作戦を思いついたのはロックのおかげだったんだ」
「あの…解釈次第ってやつ」
『…そうだったのか。素直に役に立てて、俺も嬉しいぜ』
ロックは目を細め、微笑む。
尾が、ゆっくりと、振れ始める。
『…シュート、お前はすごいやつだよ』
『最後まで諦めず…考え抜いて、最終的に乗り越えた』
『…だから、どんな形でもいいから、ご褒美をあげたいなって…そう思った』
『俺に…俺にできる事ならなんでもやるからよ…やれることがあったらなんでも一つ、俺に言ってくれ』
ロック…そんなことを思っていてくれたのか。
こんなに俺のことを思っていてくれる。
…それだけで、充分嬉しいのに。
ロックは俺の返答を待っている。
ここでカッコつけて、何もしなくていいと言っても、それじゃあロックは満足しないだろう。
だから、ここは正直に。
「じゃあロック、そこに立っていてくれるか」
【龍ヶ谷周斗】(りゅうがたにしゅうと)
人生評価価格:20万8000円(147位)
タイムリミットまで あと4日
・基本的に毎日18時投稿を予定しております!
・評価、フォロー是非よろしくお願いします!あなたの評価が私のモチベーションに直結します!
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