第11話 覚醒
「あァ…?ついにイカれちまったかァ…?」
「楽にしてやるからよォ、抵抗しないで身を任せなァ…まあ、抵抗してもズタズタにお前を切り裂いて終わるだけだがなァ」
「やれるもんならやってみろよ」
真正面から向かい合う。
「そうかァ…残念だなァ。じゃあ、これを使わせて貰おゥ」
そういうと、武中は腕を地面付近に下ろし。
旋風を巻き起こす。
「俺の旋風にィ…石を混ぜ込む」
「これによって、俺の旋風は残虐性を増し…一度触れただけで…痛みに悶え苦しむ拷問器具に変化することになる」
「…つまり触れなきゃさっきと一緒ってことだ」
「そうかァ…一度喰らえば分かってもらえるかなァ…」
こちら側に、向かってくる。
なんとか見切って避けつつ、攻撃のチャンスを伺う。
…そして。
「ロック!!降りてきてくれ!!」
『あいよーッ!』
ロックが上から降りてくる。
武中のすぐ側を高速で飛び抜け、風が巻き起こる。すると。
「…クソッ…!!石で目がァ…!!」
武中の纏っていた風が乱れ、顔に小石が直撃する。
…そして。
「…やっと隙が生まれたな…!!」
俺の、見せ場だ。
俺の右拳…そして狙いを定めた武中の腹部の一点を、を重鋼化させて。
「…喰らえぇええ!!」
思いっきり、一撃を放つ。
「ただのパンチじゃねぇ…」
俺の拳が命中した瞬間。
鋼と鋼が擦れ合い、大量の火花が散る。
そして。
俺たちに引火し、燃え上がる。
…熱い!
腕に点いてしまった火を消すため、地面にゴロゴロと転がりなんとか消火に成功する。
「…ハア…俺は腕だけで済んだが…果たしてお前はそれで済むかな?」
ちらりと武中の方を見る。
発火点が武中の腹部だったこともあり、火は武中の全身に広がっていた。
「うあああああああ!!熱い!!!旋風!!旋風!!」
しかしいくら風を吹かせても、火の勢いを強めるばかりだ。
「武中業…ものすごい強敵だった。俺は…絶対にお前のことを忘れない」
「だが、この戦いは俺の…いや、俺たちの勝利だ…!!」
「クッ…クソオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
…バタン。
3…
2…
1…
0。
“生き残りが1名になったため、ゲームを終了します”
アナウンスが流れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「というわけで…今回の勝者は『龍ヶ谷周斗』!!!!!」
「勝者の龍ヶ谷さんには、勝利ボーナスのこれをプレゼントしますね」
そう言ってカードを渡される。渡されるの…だが。
その時。
“タイムリミットに到達致しました!只今より下位プレイヤーの処理を行います!”
と目の前の大きなモニターから通知がなる。
今回のゲームの脱落者は、少し上の方にある浮いている…檻の中に気絶した状態でいる。
その中に…武中の姿もあった。
「武中…!!武中…!!」
必死に呼びかける。気絶しているのか、反応しない。
そして次の瞬間。
身体が光の粒子と化し。
霧散した。
…俺のせいで、死んだ。
…俺が、実質的に殺した。
「うッ…う『シュート』
『泣いても良い。…俺たちでちゃんと、見届けよう』
『決してあいつらのこと…忘れないようにさ』
その後、俺たちは少しだけ残っていた粒子が上の方へ上がって行き、そして…消えて行くのを見送った。
あの時の光は、今までで最も優しい輝きを放っていた。
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