ニート、《銃》を当てる/《お金》を当てる

《デイリーガチャ・無料!》


朝起きて、画面を見て、即タップ。


もはや何も言わなくなった俺は、悟りを開いた僧侶のような無の表情で、

今日もこの狂ったシステムに身を委ねる。


ピロリロリーン♪


《銃》


ポスン。


「……おい」


布団の上に落ちたそれは、どう見ても拳銃だった。

真っ黒なボディに、シンプルなシルエット。見覚えがある。


「……これ、Glock 17じゃん……FPSで見たやつだよ……」


実銃。それも、ただの模型とかじゃない。明らかに“本物”。


そっと触れてみる。冷たい金属の感触。ズシリと重い。


「……マジでやべぇの来たな……」


何も言わず、空き箱を用意して、その中に丁寧にしまう。

そして《スーツケース》を開き、地下倉庫へ。

《鍵》を使って奥の扉を封印するように、静かにカチャッとロックをかけた。


「銃は……ダメだろ……」


そして翌日。


《デイリーガチャ・無料!》


今日は何が出るんだろうな、って言うか平和なものがいいなと願いながらタップ。


ピロリロリーン♪


《お金》


ポスン!


「おおおおっ!? おおおおおおおおっ!!!」


布団の上に積まれた、札束。


正真正銘、札束。


俺は咄嗟に抱きしめるようにして、それを手に取った。


「やった! やったやったやった!! ついに来た! 神ガチャきた!!」


興奮しながら、一枚をじっと見る。


「……あれ?」


顔。


肖像。


知らんやつ。


「……え?」


よく見ると、どの札にも同じ顔――

髭面でサングラスをかけた、見覚えのない中年男の顔が描かれていた。


さらに書かれた文字は――


『GOVERNA · TEN · MIL』


言語も通貨単位も見たことがない。


「……はああああああああああああああああ!?!?!?」


俺は全力で札束を壁に叩きつけた。


「なんだよコレ!? どこ通貨だよ!? 使えるのかコレぇぇぇぇぇ!?」


テンションの落差で膝から崩れ落ちる。


そして床に散らばった札束の山を前に、静かに呟いた。


「……もう、心が持たねぇ……」

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