ニート、《隠し扉探査機》を当てる

《デイリーガチャ・無料!》


朝の恒例行事。

俺はもはやためらうこともなく、無表情でタップした。


ピロリロリーン♪


《隠し扉探査機》


今日の成果は、スマホサイズの黒い端末だった。

中央にはやたらサイバーな赤い目みたいなスリットがあり、ボタンが一つだけ。


「……また意味わからんの来たな……」


《隠し扉探査機》という表示が、空中にポップアップされている。


「隠し扉? なにそれRPGかよ」


適当にボタンを押してみると、ピィィィ……と機械音が鳴り、赤い目が光り出す。


「え、えっ? 本当に反応すんの……?」


まるで金属探知機のように機械を振り回してみると――


ビーッ。


スーツケースの前で、けたたましく反応した。


「……お前かよ」


俺はスーツケースを開け、あの地下倉庫に降りていく。

探査機を片手に、倉庫の壁際をゆっくりなぞるように歩く。


すると――


「ん?」


ビーッ。ピッピッピッ……ガチッ。


何かが開いた。

目の前の壁に、カチリと音を立てて現れたのは、見落としていた小さな“扉”だった。


「マジで隠し扉じゃん……なんなんだこのRPG展開……」


中を覗いてみると、真っ白な空間が続いていた。

壁、床、天井、全て白。まるで箱庭のような無機質な空間。

しかも四方に扉がある。


「……こっわ……」


そのうちの一つを、おそるおそる開けてみた。


すると――


外。


空は不気味な紫色で、空気は霞んでいた。

見渡す限り、鬱蒼とした黒い森。

どこかの世界に繋がっているのは間違いない。


「やば……異世界?」


などと思っていたら。


視界の彼方に“それ”がいた。


巨大なタコのようなシルエット。

いや、タコにしては手が多すぎるし、頭に羽のようなものが生えている。

人の顔とも動物ともつかない、得体の知れない“なにか”。


「……え、ちょっ、あれ……こっち来てない……?」


近づいてくる。ゆっくり、確実に。


「ヤバイヤバイヤバイって!!」


咄嗟に扉を閉めて、走って倉庫を駆け上がる。


「鍵! 鍵ぃぃ!!」


机の引き出しから《鍵》を掴み取り、ドアの前で捻る。


カチャッ。


その瞬間、ガコン!!と扉が揺れた。

まるで巨大なモノがぶつかったような鈍い音が響く。


「っ……!」


息を殺して、ドアを睨む。

……が、扉は開かない。何度ガンガン音がしても、開く気配はない。


《鍵》が、ちゃんと“封じている”みたいだった。


「……ふぅ……っぶねえ……!」


心臓がバクバクする。汗が止まらない。


俺は《鍵》を見つめて、息を吐いた。


「もう……この世界、おかしすぎるだろ……」


部屋のドアを背に、俺は床にへたりこんだ。

それでも、毎日ガチャは回すんだろうなと、うっすら思っていた。


「でもその前にまだ二つ、扉があるんだよなぁ…」

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