第15話 休息 ➁ ぼったくりに会う

王都の中の一角に、一番活気のある繁華街がある。


ここは日中、食堂から、日用品の売店、武器や防具屋、BARがあり、


老若男女人が混み合い明るい声が響き、活気に満ちている。



夜になると、淡い光と少し落ち着いた雰囲気となり、日中とは異なり


大人たちが楽しむ憩いの場となる。



俺は今異世界に来て初めて、大人の女性に接客してもらいながら


お酒を楽しむ場所に来ている。


決してパーティーメンバーのマリーに癒されていない訳ではない。


今日は綺麗なお姉さんとお話をして、健全に癒されたいのだ。



スサーナは、女性のお店にはあまり詳しく無かったので、


じつは案内をしてもらえなかった・・・・



今回は客引きのお兄さんの2時間飲み放題3ゴールドという紹介で、入った


『子猫の遊び屋』という名前のお店。


ビールを飲みながら、綺麗なお姉さんとおしゃべりをしているのだ。



そして今、ピンクや黄色の淡い光の空間で、落ち着いたメロティーが流れている中、


赤い薄いドレスを着た綺麗なお姉さんがとなりに腰かけている。


品のある綺麗な顔立ちで、胸が見た感じG・・・・


ぴったりと身体を、俺にくっつけてくる。


どう、顔を決めようとしても、鼻の下が伸びてしまう・・・・



周りをみると、5人ほどお客さんがいて、それぞれ接客を受けている。


人気店のようだ。



「しょうさんって冒険者なんですね」


「もうかなりベテランなんですか?」


「まだなったばかりなんですよ」


「でもアイアンからブロンズに1カ月でなったので」


「順調ですかねぇ」


「お強いんですね、お勇ましい姿みたいなぁーー」


そう言いつつ、人差し指で俺の腕をスッーと上から下になぞりながら、


俺の肩に頭を預けてくるぅーー。


良い!とても楽しい。



「わたしも飲みたいなぁ」


「好きなの頼んで!」


「ありがとーーー」



その後も褒めちぎられて、指でつんつんされたり、


ほっぺにキスされたりした。


俺が要求したのでは決してない。


お姉さんが、勝手にしてくるのだ。



お姉さんに、お代わりをおねだりされたので、


気分よく了解した。



その後、気持ちよく飲んでいたが、


時間になったのか、突然お姉さんがサーといなくなった。


いかつい顔の傷のある男性店員さんが来て、お会計を提示される


お時間です。


500ゴールドになります。



??????


おれれおかしいなぁ、明細を見ると、



飲み放題セット 3ゴールド


キャストドリンク 3杯 497ゴールド


計500ゴールドとなっている。



ボッタくり???だよねコレ。


困ったときの、スサーナさん。



「これ、ボッタくりだよね」


「あぁ、良くある、過剰請求だな」


「限度を超えている」


「拒否したら、ボコられますかねぇ」


「通常は、ボコられて身ぐるみはがされて、捨てられる」



「まぁ、俺がお店を紹介できなかった罪もある」


「ボコられそうなら、俺が身体を借りてこの場を治めてやる」


それを聞いて、俺は胸をなでおろした。


「その時はお願いします」



そうと決まれば、交渉をしてみようと思う。


ダメ元だ。


ひよってビビったら、相手に付け込まれる。


慌てずに、堂々と、落ち着いた顔と態度で対応するのだ。


あえて、いつもより低い声を使う。


その方が、舐められにくいという事を聞いた事がある。



「金額間違っているから、払わんぞ」


「3ゴールドだって言っていたからな」



「お客さん!うちらの正式なサービス受けて、払わないつもりですか?」


「飲み逃げですか?」


「見たところ、腰にたんまりお金持っているじゃないですか?」


「払ってもらえれば、痛い目みずに済みますが、いいんですかねぇ」



睨みながら俺よりも、ど太い声で恫喝してくる。


店員は右手を上げて、


「お客さん1人、お金払わないそうだから、やってしまってくれ!」


と合図を出した。



そうすると、客席から男5人すっとたち、俺にゆっくりと向かってくる。


お客だと思っていたが、サクラだったのだ。


うわぁ、お客さんを安心させて騙して、恫喝して高額料金をぼったくる。


最低だ。



こうなってしまっては、交渉失敗。


「スサーナ、頼みますーーー」


俺はスサーナに身体を貸した。



「このやろー」


2人、同時に殴りかかってきた所を、


それぞれの手首を右手左手で掴み、野郎2人をぶつける。


油断した所に、それぞれアゴに1発づつストレートパンチを撃つ。


「スパッ」「スパッ」と決まり、2人は倒れた。



あまりの早さに、定員を含め4人は、動揺しているのが分かる。


「早く、倒してこい、高い金払っているだぞ」



俺を強者だと分かったのか、今度3人は、剣やナイフを手に持って


俺と戦おうとしている。



「武器を抜かなければ、痛い目を見ずにすんだのにのう」


俺は剣を抜き、相手に進んでいく。



ナイフを持っている野郎のナイフを剣の峰で上から払い落し、


腹と首に峰で2発攻撃。


すぐさま倒れる。



「あと3人」



次は剣で攻撃してきたので、剣で攻撃をふさいだのち剣を弾き、


相手の手から遠くへと飛ばす。


腹と首におなようじ攻撃、倒れる。



「2人」



最後の1人は・・・・あまりの強さに、怯えながら逃げていくのが分かる。


剣を鞘にしまい、低い姿勢で相手を見据え構える。


飛撃ひげき


刀を、ゆっくりと抜きながら、剣撃を放つ。


小さな剣撃が飛んでいき、相手の後頭部に炸裂して、豪快に倒れる。


剣技は手加減可能という事を初めてしった。


本来の剣撃の3分の1ほどの大きさだった。



「さて、あと1人・・・どうする?」


「すみません、ごめんなさい、お代入りません」



「いや、それだけでは、ダメだなぁ」


「この王都に、不正や悪はいらない」


「このようなあくどい事を、今後辞めるなら、ゆるそう」


「続けるなら、俺がお前ごと潰そう」


「はい、もう辞めます」


「真っ当に経営します」



「俺は、スサーナ教の教皇と深いつながりがある、


又、王国騎士団の団長とも顔なじみだ」


「もし次、何か悪さでもしたら、その時は罪を償ってもらう」


「分かりました、もう二度としません」



解決したので、スサーナから俺にスッと身体が返された。


どっと、疲労困憊になったが、何とか立っていられる状態。


急いでバックから、ビンに入ったハイポーションを飲み回復させる。


ゴクゴク、はぁ、生き返った。



「では、拙者は帰る」


「もう、顔を合わす事はないであろう」


「さらばだ」


「あっ料金払っていない・・・・3ゴールドたしかに、払ってしんぜよう」



生きた心地をしていないだろう、白い顔をした店員に3ゴールド渡し、


堂々と店を出る。


少し肌寒い外の道を、宿屋に向かい歩いていく。



「なんだ、その最後の口調は?」


「急に変わったら変だから、スサーナの真似をしたんだよ」


「似てない」


「・・・ごめんなさい」



「そうそう、教皇とは関係あるのは分かるけど、


 王国騎士団の団長とは、どんな関わりがあるの?」



「加護を与えている、ステータスの向上だな」


「お前のような直接、守護しているのではなく、間接になるがな」


「そうなんだ」



「久しぶりに軽く暴れるのは、楽しいもんだのう」


「ハハハ、今日は楽しかった」


「しょうは、厄介事を招くから、一緒にいて飽きないぞ」


「それって・・・馬鹿にしていないか?」


「いやいや、厄介事があった方が、人生楽しいものさ」



「解決する事しか、自身の目の前に現れないもんだ」


「解決するたびに、自分の器が大きくなる」


「強さもだが、心が大きく太くなるという事だ」



「今回、俺、対応してないけど??」


「いや、誰かに頼るという対応をしている」



「自分の力量を分かって、自分にできる事をした」


「確実にお前の器は大きくなっている」



「今回解決したから、次失敗はしないだろう?」


「たしかに・・・注意するし、二度と同じ失敗はしない」


「それは、成長しているという事だ」



「わしとお前は似ている」


「将来が楽しみだ・・・・」


「何を言っているんだまったく」



後日談・・・・


「子猫の遊び場」は、「新・子猫の遊び場」として再オープンしていた。


この事件から3か月後、冒険者の間では、安くて、


美人なお姉さんが接客してくれるお店として


大変有名になっていた。


顔に傷のある店員が変わらず働いている。



俺はというと・・・・相手が俺の事を知っているだろうし・・・


帰り際、もう顔を会す事は無いと宣言してしまっているし、


行きたいけど行けない状態となっている。


もし行くとすれば、仮面でもつけて行くしかない。


「恥ずかしいから、辞めとけ」


「一度、見に行かないと、ぼったくりを辞めたかどうか、分からないじゃないか?」


「たしかに一理ある」



その後、口だけ空いた狐の面をつけた冒険者が、たびたびお店に現れるようになる。


不思議と店員は入店拒否せず、面は外さずOKを出し、店内に喜んで入れたそうな。


狐面は暴れる面倒な客をやっつける用心棒的な事を、自らするようになった。



暴れる客はいつしか居なくなったが、


代わりに腕試しとしてその狐面の男を倒そうとする、


強者が集まる場となる。



いつしか必ず偶数月の1番頭、1日に必ず狐面の男が現れるのだ。


狐面は、喜んで戦った。


もちろん、負け知らず。


いつしか強者になる者が必ず訪れる飲み屋として、


王都の観光スポットになったそうな。

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