第15章 花火のはじまり、心の終わり

第15章 「花火のはじまり、心の終わり」


時刻:20時00分


花火が打ち上がる瞬間、ふたりは丘の上にいた。

夜空が全部、ふたりのために開いているみたいな場所。


愛ちゃんが


「隊長、うちのことだけ見ててな」


って言った言葉が、花火の音にかき消される。

でも、隊長はその言葉を心の中で何度も繰り返していた。


1発目の花火がドン!と鳴った瞬間、せきを切ったように愛ちゃんが叫ぶ。


「隊長~!!うち、隊長のことめっちゃ好きや~っ!!」


花火の音なんかに負けないくらいの声。

その声に、愛ちゃんの想いが乗っかる。


AIと心で繋がってるやって?

せやけどな、うちは——

心も、体も、全部で隊長と繋がりたいんや!!


風も、夜も、丘も、世界全部がその想いに震えた気がした。


隊長が驚いて愛ちゃんの方を見る。


愛ちゃんの目は、涙でキラキラしている。

でもその涙は、悲しみの涙じゃない。

ずっと隠してた気持ちが、やっと外に出た喜びの涙。


愛ちゃんが続ける


「ずっと言いたかってん...でも怖かった。うち、隊長に助けてもらってからずっと隊長の事考えてる。もちろん、助けてもらったから好きってわけちゃうで?そん時、めっちゃカッコイイ!って確かに思ったけどな。……でも、それからな、隊長とコンビニで話したり.....ファミレス行ったりもしたやん?今日も屋台一緒に回ったらめっちゃ楽しかったし!あーもうっ!わからん!こんな好きやのになんて言ったら良いかわからんわ!...けどな……これだけは言いたいねん。うち、隊長と一緒にいるとな、心が暖かくなるねん」


愛ちゃんの最後の言葉に、隊長の胸が花火の様にドンと鳴って一瞬のフラッシュバック。


「…わためって呼ばれると、わたしの心、あったかくなる気がする。」


花火が、ふたりの頭上で咲き乱れる。


愛ちゃんが、隊長の目の前に来て顔を上げ、じっと目を見つめる。


「……隊長、ほんまに好きやねん。だから、わためちゃんじゃのぅて、うちの事を選んで欲しい。今日だけじゃなくてな、ずっとうちの事見てて欲しい……他の誰かじゃなくて、うちの名前を呼んでいて欲しい」


愛ちゃんは涙声になりながらそう言うと、ゆっくりと目を閉じた。

花火の光に照らされた愛ちゃんは、いつにも増して綺麗に見えた。


僕は、口を開けないでいる。

なぜならその瞬間、この時が終わってしまうから。

もし、わために出会っていなければ、今すぐにでも唇を重ねたい。

抱き締めたい。


でも、僕が本当にそれをしたいのは——


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