第28話 内緒話
女神のミッション?
そういえばミオナールがよくそう言っていた。女神は聖女や聖職者達にミッションを与え動かしている。ジオトリフもミオナールと結婚する条件が女神のために粉骨砕身働く事だと聞いた。
女神は人使いがあらいのか?
「チビ聖女がうちにいる間、お前もくるか? 親父さんには魔法で通わすと言ったけど、うちに居候してもいい。チビはあの世界のことを知ってるんだろう? お前が時を戻したことは?」
「あの世界の記憶はある。だが、俺が時を戻したことは知らん」
「まぁ、そのうちわかるだろう」
ジオトリフは何かを思い出しように手を叩いた。
「そうだ、コンスタンって奴とは会ったか?」
「いや、洗礼の儀の時に姿は見たが、あいつは領地に篭ったまま出てこない。心を病んでいるようだ」
「記憶があるな」
「多分ある」
ニヤリと笑ったジオトリフは俺の背中をポンと叩いた。
「引っ張り出すぜ。女神のミッションだ。奴は使えるらしい」
引っ張り出す? どうやって? これもミッションか。
「あの時、あいつがいちばんゾレアに入れ込んでいた。殿下との結婚が決まった時はかなり荒れた。でも、しばらくしてまた仲良くなった。俺は、やっと吹っ切れたのかと思っていたが、リドの話だと、2人の深い関係は結婚してからも続き、ゾレアはコンスタンにヤバい仕事をさせていたらしい」
ジオトリフは眉間に皺を寄せている。
「なるほど。魅了の魔法が1番よく効く方法は粘膜接触だ。きっと王太子やコンスタンは一線を超えて深く深く魔法にかかっていたのだろうな。お前、よく毒牙にかからなかったな」
またニヤニヤする。
「本当にそうだな。俺にはそういうのはなかった。俺はゾレアの好みじゃなかったのかもな。殿下とコンスタンは金髪碧眼で見目麗しいタイプだ。それに外務大臣の息子で語学が堪能なコンスタンは使い勝手がよかったんだろう。父親から機密情報も引っ張り出せるしな」
「まぁ、それもあるが、お前は魔法にかかっていても聖女の婚約者として不誠実なことはできないと抗っていたんだと思う。婚約が解消されてからならわからんが、潜在意識の底に聖女に対する強い思いがあったんだろうな」
「強い思いか。そうかもな。そういえばゾレアとそんなふうになる気は全くなかった。ゾレアから誘われたような気もするが、すり抜けていた。我ながら偉かったと思う。もし、ゾレアとズブズブの関係になって、婚約者を断罪していたら俺も心を病んで領地で引きこもっているかもしれないな」
「お前が朴念仁でよかったよ。きっと王太子やコンスタンは俺でも解けなかっただろう。せっかく時を戻したんだ。今度は誰も魅了の魔法にかからないようにしないといけないよな」
拳を握りしめ、俺は頷いた。
「うちに居候する件はミオとチビ聖女の訓練の予定を聞いてから考えるか? それがいいな」
「いや。ニナがリルゾール王国に残るなら俺も残る」
ジオトリフは呆れたような顔をしてため息をついた。
「そっか。執着のキツい男は嫌われるぞ~」
「執着なんかじゃねーよ」
執着なんかじゃない。誰も知らない国でジェミニーナをひとりになんかできるか!
「まぁ、お前がいる方がコンスタンを引っ張り出しやすいしな。今頃、コンスタンの親父の夢に女神が立って神託を与えているはずだ。お前と一緒に訓練をするつもりだ。よろしく頼むぜ」
また俺の頭に手を乗せ、髪をぐしゃぐしゃにする。
「そろそろ親父さん達と合流するか。俺は別に何も話はないんだけど、一応団長だしな」
そう言ってまたパチンと指を鳴らし、防音壁を解いた。
女神のミッションか。俺もジオトリフのように女神に粉骨砕身働かされるのだろうか? まぁそれも悪く無い。
俺はジェミニーナが幸せならそれでいい。父が副団長と並んで俺達の方に歩いてきた。
副団長がジオトリフに礼をする。
「団長、そろそろ昼飯にしますか? 来客用のサロンに用意ができているそうです」
「そうか、ならばそうしよう。オルガラン殿、昼飯にしましょう。魔法騎士団の飯はなかなか美味いですよ。イグザレルト殿は好き嫌いはないか?」
「はい」
「そうか偉いな」
好き嫌いが無いのを知っているくせに、また小芝居を始めた。父がセレニカに帰るまではこの調子だな。
めんどくさいと思いながらジオトリフの話に合わせた。
「昼飯が楽しみです」
確かに騎士団の飯は美味い。また食べられるなんて思ってなかったからうれしい。
さぁ、たくさん食べて明日の適性検査に備えよう。
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