5人目ってどんな人?

イルマと別れ、昼の授業へと向かった

今日と明日まではダンジョンに入れないことは確定したので魔法系の武器も使ってみた。最大限に魔力を貯めた時の脱力感が凄かったよ

夜はチームメンバー全員を集めてイルマと話した内容を簡単に報告した


「つまり、明後日にならないとダンジョンには入れません!」


「明後日までの我慢だと思いたいですの……早くダンジョンに行きたいですの」


「私も実戦から離れる期間は少ない方がいいな……役割分担が決まったばかりで動きを覚えたいからな」


俺も早めにダンジョンへ行けるようになりたいなと思いつつ、明日の内容の予想と常識についてすり合わせしようとする

俺ってゲームの世界しか知らないし、チームメンバーからだったら、そこまで気を使わないし

特におとぎ話が気になる……


「ここで俺の予想を伝えると明日は実践形式で訓練すると思われる。なんならクラスも一緒になるかもしれない」


「そこで一緒になり勧誘しようということだな」


「さすがリンドウその通り」


そういうと、セシーリアとリンドウは明日の準備をするとだけ伝えて帰ってしまった……なんで?

もっと話したかったが仕方ないだろう。俺も準備して寝よう……おとぎ話聞きたかった!

そうして3日目の訓練がやってきた


「よし、適当な人とバディを組め。魔法系と物理系で一緒になるなよ。戦闘訓練だからな」


そうしてバディを見つけようとしたものの、クラスメイトと交流をしていなかったせいか声をかけることが出来ない……

そんな中、結局俺とセシーリアが残ってしまい、二人で組むしかなくなった


「すみません。うちだけ魔法系と物理系で一緒になりました」


「じゃあ、なぜダメだと言ったのか実演することにしよう」


オルクス教官に呼ばれて指定された位置に立つ

セシーリアと俺の距離は1.5メートルくらいだ。一歩前進したらすぐに攻撃することが出来るだろう

今回は物理系の有利を示したいのだろう


「初日に貴様らが言っていた物理系と魔法系のどちらがいいのか?ということを実践で教えてやる。復習だ。両者の特徴を言え」


そこで指をさされたクラスメイトは初日に習った物理系と魔法系の特徴を説明した

それを聞いたオルクス教官は満足そうに頷いた


「正解だ。ただそれ以外にも武器種によってメリット・デメリットが存在する。対人戦においては特に重要になる。特に距離だ」


そういうと、俺の所に近づいてくる。俺とセシーリアに構えるように促してきたので抜刀する準備をする

セシーリアも両手杖を前に突き出して、魔法弾を放てるようにしている


「この距離だと両者の武器がぶつかり合うと言っても過言ではない。この状態で攻撃される前に魔法を打てるか?」


「そ、それは出来ませんの……」


オルクス教官から急に回答を振られたセシーリアは戸惑いながら答えた


「そうだ。魔力を溜めるのに時間がかかる上に、その最中に攻撃されると魔力が分散して溜め直しになる。MPの無駄ってことだ。しかしだ……」


そう言うと、俺の肩を持ってセシーリアとの距離を開ける

その距離は約10メートルちょっと。チームバトルの1マスの対角線の端と端に立った時と同じような距離だ


「この距離だったらどうだ?」


「MAXまでは溜められませんが、絶対に先制攻撃できますの」


「そうだ。そしてこの距離を詰めようとして走っている最中に魔法弾と接触したら、ノックバックで距離が開いたり、スリップして転んだりする可能性が大幅に増える。」


「つまり、再度溜めて一方的に攻撃できるということですね」


そうクラスメイトが言うと、オルクス教官は頷き皆に戦闘訓練を実施させた

そして俺達にはスキルを使わない魔法受け流しについて教えてくれた

午前中ギリギリまで粘ったけどまだ完全に習得とはいかなかったよ……


午後からはリンドウがいるクラスと一緒に訓練することが決定した

明日からダンジョンに入ることが出来るらしい。他のクラスは初心者ダンジョンをクリア出来たようだ

リンドウの言っていた5人目の人と会うことを楽しみに訓練場へ向かった


「午後からは1.2組合同訓練だ。ここでの成績が良いものに関しては明日からダンジョンに入る。心して訓練せよ」


「明日から入れる人に関しては、発表されるのでしょうか?」


「発表されるし、こちらでメンバーも選考する。他なければ自分のクラス以外の人とバディを組め。物理と魔法では組むな。」


またもバディを組まないといけないのか……と思っているとリンドウと目が合う

リンドウが俺にだけわかるようにとある女の子に指を指す

その子が言っていた女の子か……


「俺はキセロ。もし良かったらバディを組まないか?」


「あらぁ……うちでいいの?お手柔らかになぁ」


俺と同じくらい身長の高い……俺は身長170cmだよ。小さくはない……たぶん

黒髪が光に当たって少し蒼く見えるくらいキレイなロングのストレートで服装はチャイナ服を改造して戦いやすくしているみたいだ

そして、その両手には第3関節までの黒いゴツ目の指ぬきグローブをはめている


「よろしくお願いします」


「よろしく頼むわぁ」


外見が大人びており、お姉さん感が強いからか、なんか色気が凄い……たわわも凄い……

なんて思っていると急に悪寒が走る。強烈な視線を感じたのでその方をチラリと確認すると、セシーリア!

両手メイスを笑顔で振り回すのやめて!背後に鬼が見えてるから!両手杖はどこにやったの?


「よし全員準備出来たな!開始」


その号令を聞いて、俺は右手に持った片手剣を前に半身を取る。拳より剣のリーチは長い。近寄られなければ問題ない

相手の構えは……テコンドー?少林寺拳法?左手を前に軽く突き出し、右足を後ろに軽く引いており攻撃するような隙は無いように見える

その構えのままから10秒ほど互いの様子を見る……


「動かないとダメージは与えられないぞ!怖気づいてるのか!?」


オルクス教官に怒鳴られる…… だって隙が無いんだもん……

とは言っても、このままでも何も進まないのは理解している。理解はね。

まずは小手調べといこう。右手の剣で左拳に向け突いてみる。


「はぁ……こんなものねぇ」


そう聞こえたかと思うと……ガキィン!と金属と金属のぶつかるような音がし、剣を弾かれバランスを崩しそうになる

その拳は鋼鉄で出来てる?ってそんなこと言っている暇ではない

最小の動きで剣を弾き、距離を詰めてきている。更にその勢いを利用して、前に構えていた左手を最短距離で出して攻撃してくる


「ジークンドーか!」


縦拳と言われる特殊な打ち方をしたり、剣を弾いた時の空手のような動きなど最適かつ最短で制圧してくるような動きだ

左手に装着していた小盾を攻撃されそうな位置にギリギリ割り込ませると、左手に鈍い痛みが来る

連続で攻撃が来るのを知っていたので2打目の前に少し飛び距離を置いて、追撃に準備する


「凄いわねぇ。もう少し本気で行かせてもらうわねぇ」


距離を取る為に剣を前に構えていたのを、盾を前にして攻撃を捌くことに集中する

最初は両手だけの攻撃だったが、蹴りの攻撃も混じる……。攻撃は凄いが一辺倒になると良くないな


「防御しかしないなら押し切っちゃうわよぉ」


豪雨のような攻撃で怯みそうになるが、何とか受けきる。上手くダメージを与えられないことに焦りとか苛立ちのような感情からか、攻撃が雑になっている

適当に放ってきた蹴りを捌き、着地させるポイントをコントロールして、足払い――

相手のバランスを完全に崩すと、女の子は尻もちをつき倒れる。顔の前に剣の先を突きつける


「ここから挽回出来る?」


「いかんわぁ。降参よぉ」


俺は剣を納め、右手を差し出し女の子を立たせる。

立ち上がった女の子は、お尻をはたき衣服を正し、怪我が無いか確認している

HPバリアがあるおかげで怪我しないけど……


「大丈夫?」


「もう1戦したいねぇ。お手合わせくださる?手加減……無しで」


色気の凄いお姉さんがあざとさ全振りでお願いしてくるのだ。どんな内容だってOKしてするに決まってるだろう

むしろ断れる男なんているんだろうか?

快諾して、その後も模擬戦を続けたが、やはりレベル差があるのだろう。技術の差はあるものの、ステータスの差で勝つことが出来た

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