自由週間がはじまるまで
3階層にて
「さんぽキノコが来るぞ! 俺が止めるから攻撃態勢とれるか?」
3階層に出てくるのはさんぽキノコと言われるキ〇コ組のような、手足の生えたキノコだ
頭の笠で体当たり攻撃を仕掛けてくる
予備動作があるから今までは回避してから攻撃していたが、回避行動からの攻撃だとどうしても時間がかかる
「もちろんだ 止め次第行くぞ」
「いつでもぶっ放せますの!」
その2人の反応を聞いて、目の前のさんぽキノコの前に盾を構えながら出る
『挑発!』
昨日までどの役割に成長させるか迷っていたがメンバー的にも足りていないのがタンクだったので残してたTPTをタンク用に少し振ったのだ
スキルの効果でさんぽキノコが俺の方へ向かってくる。というより完全にロックオンされてる
右手を上げて、左手を上げて、手を下ろしながら体勢を低くして……
「来るぞ! 『シールドディフェンス』」
スキルの発動と同時に鈍い衝撃が腕に伝わる
体の前で構えた小盾にさんぽキノコがぶつかってきたので、足で踏ん張ると両者の動きが止まった
「今ですの!」
セシーリアの掛け声と共に左側から魔法が飛んでくる
右側からはリンドウが槍を構える
『両手突き』
倍率は1.1倍であるがスキルレベル1でMP3なら初心者ダンジョンでは重要な攻撃になる
リンドウの攻撃でさんぽキノコがひっくり返る
「行くぞ!」
掛け声をかけて攻撃に転じる
そこからさんぽキノコが起き上がってくることはなかった
「新しいスタイルはどうだ?」
「凄くやりやすいですの!」
「戦いやすいな タイミングもとりやすい」
実際に戦闘する2人は戦いやすいようだ
戦闘しないエイルにも聞いてみよう
「あ……安心感があります」
「それなら良かった。サブパーティになったら敵から狙われることも無くなるからそれまでの我慢だな」
「ひ……拾ってもらったので頑張ります」
軽い反省をして、3階層までを2往復した所でその日の探索は終了した
そこからの1週間は毎日少しずつではあるが、ダンジョンに行きレベルを上げた
採集もしっかりと行い、MP回復薬以外のものは売却し少ないが資金を貯めた
「ダンジョンに潜り放題ですの!」
第2週目の授業が終わり、教室を出た瞬間にセシーリアが精一杯背伸びする
毎日ダンジョンに行っているのにまだ足りないみたいだ……
『ポーン組の生徒に連絡です 食事と入浴を済ませ次第再度教室に集合すること』
急な放送がかかり、隣にいるセシーリアの顔が段々白くなっていく
完全に顔から色と表情が無くなった
「私の……ダンジョン……」
語尾が消え失せるくらいショックだったようだ
今はどうしようもないので、何とかセシーリアを食堂へ連れていく
たまたま居合わせたリンドウにセシーリアを預け食事を取り、自室へ向かった
「こんな時に呼び出し……何かあったのか?」
記憶のゲーム内にこんなイベントは無かった気がする
リアル特有の何かしらのイベントなのであろうか……
室内のシャワーを浴び、再度制服を着て教室へ向かった
「まだ誰もいないな……」
教室に着くとまだ誰もおらず一人ゆっくりと待っているとクラスメイトが入ってくる
学校が始まって2週間が経つが、皆顔が更に死んでいる
探索者という夢が叶うと信じて入学したものの、どん底になったことを受け入れ諦めているように見える
「ダンジョンに行きたいですの……」
セシーリアは全然違う理由で顔が死んでるけど……
まあ終わってダンジョンに行けば解決するだろう……
ガラガラ
「全員いるなー」
相変わらず無気力でどこか挑発的なオルクス先生が入ってきた
全員がいることを無言で確認すると、再度話を始めた
「さっそく本題に入るわ。明日からの自由週間は残念ながら自由ではない」
隣のセシーリア気絶したが?
そんなことを構わずにオルクス先生は続けた
「来週に関してはダンジョンについての座学と戦闘訓練だ。合格し次第、最終日に初心者ダンジョンの1階層を攻略する」
つまり、自由週間は何も出来ないってことですね
ダンジョンを進める予定だったが、完全に崩れるな……
「また今ダンジョンに潜っている者も関係なくメンバーはこちらで決定する」
メンバーを勝手に決められるのは正直良かった
新しい人と仲良く慣れたら新しい人をスカウト出来るからな
スカウトと割り切ってこの自由週間を過ごすしかないか……
「また訓練の進み具合によって毎日メンバーをシャッフルする。そして隣のクラスの人間とも組むこともある。まあ頑張れや」
そう言い残し、先生は退出していった
周りを見渡してみると、気絶しているセシーリアはいいとして、それ以外のクラスメイトは激しく落ち込んでいる
恐らく、授業に凄い集中しているクラスメイトばかりだったのは、ダンジョンに潜っている人はいなかったのだろう
諦めるのは簡単だが、希望を持ち続けるのは難しいことだもんな……明日の準備のために部屋へ帰ろう
「失礼しますの……」
準備をしていたら、真っ白な顔をしたセシーリアが部屋に入ってきた
「どうした急に?」
「今日、言われた内容を覚えておりませんの……教えて欲しいですの」
気絶してたもんな……
仕方ないと思いながらも、再度説明しているとセシーリアはだんだんと泣きそうになっていた
もうダンジョン中毒やん……
「まあダンジョンに入れないわけじゃないから……」
「楽しくないですの……いつものメンバーがいいですの」
「まあ、ずっと同じメンバーでダンジョンに行き続ける訳じゃないし、特にチームが大きくなったら」
「うぅ……我慢しますの……」
コンコン…… ガチャ
セシーリアが部屋に来てすぐにリンドウとエイルに連絡をして、この自由週間での内容について打合せしようと呼び出しておいたのだ
二人は部屋に入った途端、泣きそうになっているセシーリアを見て、俺をめちゃくちゃ睨んできた
「申し開きを聞こうではないか。まずは正座だ。内容によってはわかっているな」
「話を聞いてくれ……俺は悪くない」
全く悪くないのに正座したまま、この状況について説明したよ
納得はしてくれたけど、足が痺れて立てなくなって散々だったぜ……
二人はセシーリアを慰めるのに一生懸命だったが、何とかいつもの状態になったようで本題を話始めた
「まずはリンドウに聞きたいことがあるのだが、そっちのクラスにはダンジョンに潜っている人はいるか?」
「確実ではないが、1人だけ入ってそうな人はいる……」
うちのクラスにはいなさそうだから、その人は有望株だな……
今回の期間で一緒になれるといいな。その時に良さそうだったらスカウトしよう
「その人の情報だけ共有してほしい。もしこの3人の中で誰でもいいから一緒になったら仲良くなるところから始めよう」
エイル以外の3人の今回の目標はとりあえず決まったな
次はエイルにお願いしたいことを伝えておこう
「エイルはこの自由週間について学園から言われていることはある?」
「しょ、職業体験として受付をすることになってます……」
1年生は全体的にそういう指示が出ているのだろうか?
一旦それは置いておくか
「時間は決まってる?」
「じゅ、授業開始の8時から15時までです……」
「じゃあその後に練習してほしいことがあるんだよね 一応俺も見に行けるようだったら行くから」
エイルにもお願い事という名の指示を出して、解散した
これが上手くいくかどうかでこれからの進み具合も変わるからエイルには頑張って欲しいな
ゲームでは無かった自由週間の束縛……どれくらい束縛されるかわからないから慎重に進めてみよう
準備を万全にして眠りにつくのであった
ダンジョンに潜ってそうな人の情報を聞き忘れてるわ……
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