第4話 青い瞳の招き
タイトル:占い師(イル・カルトマンテ)
第1章 - フォルトゥーナ
【第4話】 青い瞳の招き
【あらすじ】
いよいよ運命のテントへ。ロレンツォは青い瞳の少女オルテンシアと再会し、占い師セスのもとへ導かれる。
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とロレンツォ 深くため息をついた。
今や彼は一人だった。列に並んだまま、ひとりきりで。
チケットを手に取り、指でくるくると回した。あの女性のように引き返すことは、彼にはできなかった。少なくとも今は。そう、マルティーナに言ったように──これは普通のチケットではなかった。占い師セス専用の特別な招待状だった。そして何より、あの青い目の少女のことを思い出した。彼は、約束したのだ。「これは約束だ」と。
選択肢はなかった。
表示板を見つめたが、まだ入場のサインは出ていなかった。
音楽がまた変わった。
ロレンツォはテントの縁や色あせた模様を視線でたどりながら、上へ上へと目をやった。小さな屋根のような庇、その上に掲げられた大きな看板──「偉大なるセス、占い師」と書かれていた。
空はすでに真っ暗で、無数の小さな星がきらめいていた。
「あと二分です」
アナウンスの声が再び空気を震わせた。
小さな男の子が綿菓子を持って走っていた。
金管楽器のリズムが変わる。
視線の端に、カーテンのあたりで何かが動いたのが見えた。誰かが内側から外を覗いているようだった。ロレンツォはそちらに注意を向けた。
そして、彼女が現れた。
間違いない──マルティーナが「人魚」と呼んだあの少女だった。
彼女は段差を静かに降り、赤い絨毯の上をゆっくりと歩いて、ロレンツォの目の前に現れた。そして微笑んだ。
「来てくれてうれしい」
「君、僕のこと覚えてたの?」
ロレンツォは驚いた様子で応えた。「でも…約束はしたからね。僕は約束は破らない。性格なんだ」
「セスは、もうすぐ準備が整うわ。しばらくの間だけだけど、私が付き添ってあげるようにって頼まれたの。ちゃんと“偉大なるセス”って呼んであげてね。こだわってるから」
彼女はそう言って、片目をウィンクした。
「了解」
「さっき、女性がいたでしょう?」
「うん。帰って行ったよ。『どうせよくある話でしょ』って言いながらね。ショーのチケットを持ってたみたい」
「今夜のほとんどの人たちと同じね」
「僕は違うけど」
「そうね」
「どうして僕なんだ?」
「特別なチケット──それは特別な人のためのもの。明らかでしょ?」
彼女は一語ずつを強調しながら言った。
「それって褒め言葉?それとも…」
ロレンツォは眉をひそめた。
「さあ、どっちかしら?あなたのオーラは、特別なのよ」
彼女は空中で手を動かし、螺旋や円を描くような仕草をした。「あなたを包んで、脈打っている。昨日、初めて会った瞬間に気づいたわ。私はオーラが見えるの。あなたは時を越えてここに来た人。私と同じように。あなたが過去に誰だったのかは、まだ分からないけど…そのうち明らかになるかもしれない」
そう言って彼女はテントの方へ向き直った。
「さあ、行きましょう」
彼女のあとを、ロレンツォは戸惑いながらもついて行った。
カーテンのすれ違う音が背後で静かに響き、二人の姿を隠した。
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(続く)
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