とあ~る企画の短編集 兎のあの人が…見ている!(震え声)
ミスターチェン(カクヨムの姿)
「きつねと粉末と天文学的確率の少年」お題 狐! 半径〇〇メートル以内! 天文学的数字!
それは、春の陽気が町を包む昼下がりだった。
地図にない町“ダシノ坂”の一角で、うどんに一味唐辛子をふりかけながら空を見上げるひとりの少年がいた。
その名も──椀田つゆぞう(わんだ・つゆぞう)。
白いタンクトップにジャージズボン、丸い頬と二重あご。
彼の姿は、ただそこにいるだけでだしの香りを漂わせるような、そんな風格すらあった。
つゆぞう「今日の昼は……関東風のだし……いや、関西風のダシも捨てがたい……うぅぅ、胃袋がふたつあれば……幸せなのに…」
彼はうどんを愛していた…しかも関東も関西も、どちらも平等に
だが──この日本でそんな存在は、“天文学的確率”でしか存在しないのだった。
なぜなら、今この列島では──だし戦争が真っ只中だったからである。
関東某所、秘密基地【UMK(うめぇもんカンパニー)】地下80メートル。
鋼鉄のドアが重たく開き、漆黒の軍服に身を包んだ男が姿を現す。
関東だし軍・総司令──東洋マルオ。
その眼鏡の奥の瞳は、怒りとしょうゆ色に燃えていた。
マルオ「……あの関西のダシ…あれはもはや透明な水……水なのだ…!」
部下「閣下! ご命令を…アレを起動いたしますか?」
マルオ「…………出せ」
ゴゴゴゴゴ……。
地下カプセルが開くと同時に、朱色の狐面をまとった巨大ロボットが姿を現す。
その名も──《アカキツネMk-III》。
全長20メートル。厚揚げ内蔵。甘辛つゆタンク標準装備。
口からは熱々の関東つゆを噴射。その着地一発で地面は黒く染まった。
部下「半径108メートル以内、完全関東風に変質完了です!」
マルオ「これが……しょうゆ帝国の力だ……!」
──同時刻、関西。秘湯“だしの滝”の奥深く。
関西粉末だし研究所【OSK(おいしいスープ研究会)】。
関西のだし界を統べる者、長老浪速ダシノスケは、閉じていた目をゆっくりと開いた。
ダシノスケ「来よったな……味音痴国家め……」
研究員「博士……出しますか、“彼”を……?」
ダシノスケ「うむ。出番や──白き関西のきつね!」
天井が開き、光が射し込む中、静かに舞い降りてくる白銀の狐型ロボット。
それが──《シロキツネ・ダシ魂Ver.》。
昆布と鰹の黄金配合比率を基にした粉末スプリンクラー搭載。
一振りであらゆる汁物を関西風に変える、究極の“粉末兵器”である。
研究員「半径112メートル以内、全汁物が関西化!!」
ダシノスケ「ええ塩梅や……これぞホンマモンのダシや……」
戦場は、静岡県某所──通称“だしライン”。
富士山のふもとにて、関東と関西、だしとダシが激突する。
アカキツネMk-III「ジュワァァァ!!(※揚げスプラッシュ)」
シロキツネ・ダシ魂「スー……ッ!(※粉末浸透波)」
空はつゆに染まり、風は削り節を巻き上げて踊る。
赤茶けた甘辛だしが大地を浸し、そこへ黄金の粉末が吹き荒れるたび、
世界はまるで巨大な“味変装置”と化していた。
地面はぷるぷるとしたうどんで覆われ、
畑はかつお節畑に、
川は“濃口”と“薄口”が入り乱れるつゆのせせらぎに変わっていく。
報道ヘリ「──現在、戦場の半径200メートル以内、完全に“うどん一色”となっております!!」
関東兵「濃いぞぉぉ!!」
関西兵「上品やろがぁぁ!!」
一同「うどんが伸びる前に決着をつけろぉぉ!!」
兵士たちの叫びが空気を震わせるなか、
両陣営のロボット狐は、今にも決着の一撃を放とうとしていた。
──そのときだった。
\ドス! ドス! ドス!/
濃霧のようなだしの中を、重たく、しかし確かな足取りで進む影がひとつ。
黄金の湯気が渦巻く戦場を割って、
白いタンクトップがゆっくりと姿を現す。
ジャージズボン姿に、背負ったどんぶり。
頬には涙、手には割り箸。
ふくよかな腹に“しみわたるような何か”を抱えているその少年こそ──
“うどんとだしを愛しすぎた男”、椀田つゆぞう(わんだ・つゆぞう)であった。
つゆぞう「……うっ……うう……」
その肩は震え、目元は真っ赤に染まっている。
マルオ「何だ貴様は!? ここは戦場だぞ!」
ダシノスケ「……ほぉ~……ええダシが出てそうな見た目やなぁ……(ゴクリ)」
つゆぞうは、その場に両膝をついた。
だしに濡れた地面に、涙が落ちる。
つゆぞう「……もうやめましょおおおよおおお!!」
その声は、空を割った。
響き渡る、少年の叫び。
甘辛と昆布の香りを吹き飛ばすほどの、魂の訴え。
つゆぞう「だしがもったいなぁぁぁぁぁい!!」
つゆぞう「このつゆで……この粉で……いったい何杯のうどんが作れたと思ってるんですかぁぁぁ!!」
空気が凍りついた。
戦場に、だしの香りではない、静寂が訪れる。
揚げも粉も、風も止まった。
アカキツネMk-III「……ジュワ……(揚げスプラッシュ解除)」
シロキツネ・だし魂「……スー……(粉末供給ストップ)」
両ロボットが、首をうなだれるように沈黙する。
マルオ「……我らは……うどんを、だしにして戦争をしていた……?」
ダシノスケ「……粉……撒きすぎたなぁ……」
つゆぞうは、両手で顔を覆いながら、
静かに──ゆっくりと、ひと口すする。
つゆぞう「……だしは……飲むためにあるんだよぉ……(ズルッ)」
その音は、濃口でも薄口でもない、
涙とだしが溶け合った、“最高の一杯”の音だった。
ふわり──
立ちのぼる香りに、戦場に漂っていた殺気と怒号を、
まるで春の風のように、静かに包み込んでいく。
濃口も、薄口もない。
関東も、関西もない。
あるのは、ただ──
だしの香りと、腹の虫の音だけだった。
兵士達「……なんか……腹、減ってきたな……」
誰かが、ごくりとつばを飲む音がした。
誰かが、立ち上がり、手を合わせた。
マルオ「フッ…(腹の音)…」
ダシノスケ「……せやな…腹減ったわぁ…」
その瞬間──戦争は、終わった。
関西と関東は「混合だし条約」を締結し、
新たなる象徴──ハーフ&ハーフうどんが誕生した。
アカキツネとシロキツネは、仲良くご当地ゆるキャラとして再就職を果たし、
戦場には平和と、ほのかなだしの香りが戻っていた。
そして今──
この奇跡の“融合うどん”の、記念すべき“第1杯目”を口にする栄誉を与えられたのが、
だしを愛し、戦争を止めた伝説の男・椀田つゆぞうであった。
マルオ「さぁ、食べてくれ! つゆぞう!!」
ダシノスケ「お前の味覚が、このだしの未来を決めるんや……!」
つゆぞう「……いただきます!」
ズルッ、ズルズルズルッ……。
黄金と黒のつゆが混ざりあい、豊かな香りが鼻を抜ける。
兵士たちが息をのむ中──
関東兵「……どうだ……!?」
関西兵「どうなんや!? どっちのだしが勝ってる!? いや、共に勝っとるんやろ!?」
つゆぞう「…………うーん…………」
その表情は、険しく……微妙だった。
つゆぞう「やっぱ……一つの味の方がうまいな!!」
一同「ぶち壊しィィィィィィィ!!!!」
\バァァァァァァァァァン!!!!/
空が裂け、雷鳴のごとく麺が踊る!
突如、アカキツネMk-IIIの目が紅く輝き、
背中の揚げ味噌弾頭がカチカチとロック解除される!
アカキツネ「ジュワアアアアアアッ!!!」
同時に、シロキツネだし魂のスプリンクラーが再起動し、
粉が狂ったように大気にばら撒かれ始めた!
シロキツネ「スゥゥゥゥッ!!!」
マルオ「再戦だああああ!!」
マルオは叫びながらジャケットを脱ぎ捨て、軍帽を空に投げた。
ダシノスケ「こいつだけは許さへんッ!!」
ダシノスケは粉末の袋を両手で割り、舞い上がる白煙に拳を握る!
つゆぞう「えぇぇぇ!? なんでぇぇぇ!? 正直に言っただけなのにぃぃ!!」
揚げと粉が空を舞い、スープが地を這い、器が降り注ぐ。
赤と白の狐型ロボが再び激突する中、戦場のBGMはまるでTVの料理番組のように壮大だった。
──そして、だしの戦火はふたたび上がった。
だしに終わりはない。
だしは、争いの源でもあり、そして──絆の象徴でもある。
だしが、決め手じゃ!!
ー完ー
あとがき♡(あとがきまでが小説って…いうじゃん?)
うどんくんもおいしいなぁ(小並感)
ほんとに。だしって、優しくてぇ…しみる!!(〆の一杯感)
やっぱり…うどんのだしは…最高やな!(再認識感)
\ドガァァァァァァァァン!!!(壁が破壊される音)/
つゆぞう「やべええええええええ!!作者あああああ助けてええええ!!(号泣)」
チェン「えっ!? 今ス〇ゼロ片手だし!? パンイチ(エゲレス風恰好)だし!? てかなんで壁破ってリアル乱入してきてんの!?(錯乱)」
アカキツネ「ジュワァァァ!!(※つゆそうへ揚げスプラッシュを放つ準備をしているご様子♡ついでに作者も♡)」
シロキツネ「スー……ッ!(※粉末浸透波を放つ準備をしているご様子♡ついでに作者も♡)」
マルオ「つゆぞう!! 貴様!! よくも!!このうどんの面汚しめ!!」
ダシノスケ「おまえの一言で台無しや!!この落とし前…つけさせてもらうで!!」
つゆぞう「ちがうの!作者が!作者が言えって言ったのぉぉぉ!!!(責任転換)」
チェン「ちょw…おまいらw…やめて!粉と揚げをこっちに向けないでぇぇぇ!!(全力土下座モーション)」
\ズドォォォォォォン!!!!/
\ジュワワワワァァァァァン!!!!/
\スーーーーーーーーーッ!!!!/
チェン&つゆぞう「んああああああああああああ(咆哮)」
──現在、私は原稿用紙の中?で逃げ回っています。
ス〇ゼロ片手に、どんぶりの中をただよい?ながら。
あれ……なんか……しょっぱいな……これは……
涙? だし? それとも……
──味の戦争は、まだ終わらない。
だしが、決め手じゃ。(遺言)
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