第10話 心が歩き出す朝


そうして、カフェへと向かう智の足どりは軽やかだった。

まだ心の奥に迷いや、胸に残るものがある。

昨日出会ったふたり──チトとエース。

あの優しい眼差しは、言葉にしなくても

心をそっと包み込んでくれるようだった。


店の前に立つと、ドアの向こうから漂うコーヒーの香りと、

小さな風鈴の音が智を迎える。


智はそっとドアを押した。

やわらかな鈴の音がひとつ、涼やかに響いた。


「おかえりなさい、智くん」

チトの声が、空気を優しく揺らした。


その声に、智は自然と笑みを浮かべる。

そこにあるのは、変わらない日常のぬくもり──

けれど確かに、昨日とは違う何かが胸に芽生えていた。

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