第17話 頭と心のダメージ
グルグルと渦を巻く暗闇の中を、俺はユラユラと浮遊し続けていた。
上下の感覚もなく、ただ――
ドサッ!
「痛いなぁ、もう!」
突然、重力が復活し、俺は地面に落とされて、腰を押さえながら、言った。
「キャー! びっくりした……! 大丈夫?」
イローナの声が響いた。
驚いているが、俺のことを心配してくれている。
「うん、ありがとう。そっちも大丈夫そうで良かったよ」
俺たちがいるのは、木製の牢屋の中。
周囲は岩肌むき出しの洞窟だ。
「どうしよう、どうやって外に出る?」
「簡単だよ。ゴリ押し!」
「ゴリ押し……?」
イローナが首を傾げる。
俺はオル爺のスキルを創造して、両手を前に出した。
「【かまいたち】」
真空の刃が何本も飛んで、木製の牢屋は、一瞬で粉々に砕けた。
「詠唱はどうしたの?」
「破棄したよ」
イローナが驚きの顔をしていたが、そのまま手を繋いで通路を進んでいく。
すると――
フードをかぶった教団員の一人が、よだれをダラダラと垂らしながら現れた。
その目は焦点が合っておらず、完全にブッ壊れている。
「涎掛け……いる? それとも熱中症かな?」
「なぜだ? なぜだ? なぜだぁあああああ!!」
頭を掻きむしり、唾を撒き散らして叫び出す教団員。
(そんなに搔きむしると頭が禿げちゃうよ!)
次の瞬間!
フードがビリビリに破れ、頭が見えた。
その頭の髪は、既に一本も生えていないみたいだ。
(手遅れ……だったか)
「この人……怖いよ……」
イローナが後ろに下がると、教団員がヨロヨロとイローナに近づいてきたので、とっさにスキルを使う。
「【アイストラップ】!」
足元を凍らせると、ズルッとこけた。
その瞬間に――
「【アイスランス】!」
氷の槍を放つ!
すると、心臓に刺さった。
しかし、教団員はユラユラと立ち上がると、氷の槍を抜き取る。
ぽっかりと開いた胸から血が流れていた。
(……頭だけじゃなくて、心も壊れてるのか……)
「なぜ、なんだ?……なぜ私だけ部下にバカにされるのだ?……なぜ社長は、私を認めてくれないんだ……?」
なんだ? いきなり仕事の話か?
「なぜ……私は娘に気持ち悪いと言われるのだ?……妻も早くに死んだ……一体なぜ……?」
(仕事とプライベートのダメージがデカ過ぎだろ!)
「一体……なぜ私は……こんなことをしているんだ……?」
おかしいと思った俺は、目を見てみると目の焦点が合っていてジッと、こちらを見ていた。
その目からは、涙があふれている。
だが、口からは、たくさんの血が出ていた。
「ゴプッ! ただ……相手の事を思ってやってきたのにわからない……意味が、ゴボッ……」
ドサッ!
そのまま教団員は、倒れて動かなくなった。
この世界にもパワハラとか、セクハラってあるのかな?
最近だと、フキハラなんてものまであるらしい。
マジで生きづらいよな。
俺は、その亡骸にそっと合掌して、先に進む。
外への出口に着くと、まだ4、5人の教団員がいた。
仕方ない、こうなったら範囲攻撃だ!
創造でオル爺の津波を参考にして、作成する。
「【大津波】!」
オル爺の強化版スキルで、大きな津波が発生した。
教団員を一気に飲み込んで、押し流し、ほとんどが即死。
しかし――
目の白い人だけが、倒れながらも照明弾を打ち上げた。
「レドンド……後は……頼んだ……!」
「【アイスランス】!」
俺が止めたときには、もう空に赤い蛍光色の煙が上がっていた。
そして、それをウヨンツラから見ていた赤い目の男は呟く。
「ワイトンが失敗したか……仕方ない。俺の命、使うか」
レドンドと呼ばれたその男は、召喚魔法を詠唱する。
「ZAPISTE――サモン――ナマズノカミ!」
低湿地帯に、巨大な黒い影が現れた。
「グオオオオオオオオオオオッッ!!」
怪物は咆哮をあげると、召喚主であるレドンドをバキバキグシャグシャと咀嚼する。
―――――――――――――
あとがき
イローナ「どうしよう、物語が、なんかおかしくなってきてない……?」
クレイシア「大丈夫だよ。 ごり押し!」
オル爺「フンッ! 物語がおかしい? 甘い!
真の物語とは、書いてるうちに時空が歪み、
気がついたら神が死んでるんだ!」(瞳孔ガン開きで言ってる!)
――そんな感じで、作者も物語も迷走中ですが、止まる気はありません!
それが、ZAPISTE精神! ヅァーピシツーテ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます