第18話 暴黒雷と希望の光
ナマズノカミは、ウヨンツラの水辺で狂ったように暴れていた。
バシャアアアッ! ドゴォンッ!
跳ね上がる水柱、なぎ倒される木々。
大地が悲鳴を上げ、空気が震える。
騎士団たち、セリナとルリト、オル爺そして伯爵は、戦闘態勢に入った。
騎士団の魔法部隊は、詠唱を始める。
「「ザピステ――コビア――【ファイアボール】!【サンダーボール】!」」
無数の炎球と雷球が飛び交う。
しかし、ナマズノカミの鱗には一切の効果なし。
「全然、効いてねぇじゃねぇか……!」
騎士団の一人がそう言った。
そこにオル爺が前に出て、杖を高く掲げる。
「見ていろ! わしの力!! マグヌス・ヅァーピシツーテ……スッテラ・ミラーーッ!!」
だが、その詠唱の最中――
「一匹!」と言いながら、ルリトが前に出る。
その虹色の瞳は、銀色に変わっていた。
「ザピステ――アイシ――【ブリザード】!」
怒涛の吹雪がナマズノカミを包みこむ。
一時的に凍結したが、数秒後には元通りになってしまった。
「だから、見ていろと言ったのだ……! テラ・メエリタ……アルス・マグナ……アマデウス・ゼノ――!」
だが、諦めないルリトは、すぐに次の魔法を使う。
「ザピステ――ウォーター……【ウォータードラゴン】!」
「【ヴァイオレットサンダー】!!」
ルリトの水龍と、オル爺の雷が同時に発生すると!
二つの魔法が偶然合わさり、青紫色の雷を纏った巨大な水の龍になるとそのまま、ナマズノカミに突っ込む!
ズガアアアアアアアン!!!
大爆発と共に、水と雷の渦が広がる。
しかし――
ナマズノカミは、なぜか元気になっていた。
バリバリバリッ!
全身に黒紫色の電気を纏い、『黒電ナマズノカミ』と化したのだ。
「……なんだ、これは……!」
黒電ナマズノカミを見た者は、恐怖で全身の震えが収まらなくなっていた。
「クソッ! こうなれば詠唱破棄だッ!」
全身がブルブルに震えたままのオル爺が杖を構え、全力で魔法を使う。
「【サンダーランスMAX――ッ!!】」
瞬間、コビア市全体は雷の閃光に包まれた。
だが――黒電ナマズノカミは、びくともしない。
むしろ、余計に強化されていた。
その一歩だけで空気が揺れ、地面が割れ、民家の壁が崩れる。
伯爵が歯を噛みしめ、叫ぶ。
「ウナギ様だ! 今こそ、我らの守護神を……!」
全市民へ向け、伯爵が魔法で呼びかけると、みんなが祈り始めた。
すると――
空が割れ、雲の間から日の光が差し込む。
その中から――ウナギの稚魚がゆっくりと姿を現した。
その姿は、大きく人間の大人のサイズはあるが……ナマズノカミと比べるととても小さい。
だが、そこに一人の農家がザピスワームを供物として投げ入れた。
ウナギ様がそれを食べた瞬間、金色の光が眩しく光ると――
その体は、瞬く間に巨大化する。
黄金に輝き、まるでドラゴンの様にも見えるウナギ様。
ウナギ様は、一直線に黒電ナマズノカミに向かって突っ込んだ!
ガブリッ!
噛みつかれて驚いたナマズノカミは、身体から大放電を始めた。
バリバリバリッ!!
電撃を受けても離れないウナギ様と、それを振りほどこうとするナマズノカミ――
まさに力と力のせめぎ合い!
その頃――
俺とイローナは、ようやくみんなの所に合流した。
「お父様ッ!」
「イローナ……! 無事だったのか……!」と、伯爵が抱き寄せる。
「クレイシアに助けてもらいましたっ!」
そう言って、親子はしっかりと抱き合っていた。
(えっと……ちょっと待って? 今これ、どういう状況?)
遥か前方では金色のウナギドラゴンと黒いデンキナマズがお互いに噛みついていた。
(なんか、もうカオスになってるんだけど……でも、あの二匹カッコいいな!)
―――――――――――――
頭に……黄金ウナギ様が降臨しましたッ!!
はいっ! ということで、次回作が思いつきました!
やるかはわかりませんが、とりあえずタイトルだけ置いておきます!
『プランクトン転生~進化を重ねて、人間になったらTSしてた件~』
ZAPISTE! ヅァーピシツーテ!
ZAPISTE教・初代開祖(グランドマスター・クレイティア)より
(※ちなみに、ウナギの赤ちゃんはプランクトンのように生きているって知ってました? これはもう、運命だったのです……!)
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